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[MOM399]日本体育大MF高井和馬(4年)_「スーパーなものを持っている」、指揮官期待の10番が意外な?ヘディング弾

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[9.12 関東大学リーグ1部第12節 慶應義塾大2-3日本体育大 保土ヶ谷]

 言葉には力があるのかもしれない。何の気なしに口にしていた「ヘディングで取るわ!」という一言。これが現実のものとなった。日本体育大は二度のビハインドを跳ね返し、慶應義塾大に3-2の逆転勝利。決勝点はMF高井和馬(4年=千葉SCユース)の「小学生のとき以来」というヘディングシュートから生まれた。

 日本体育大で10番を背負う高井だが、今年6月27日に行われたアミノバイタル杯2回戦・専修大戦で左膝を負傷。半月板と前十字靭帯に傷を負った影響で、離脱が続いていた。全体練習に合流したのは総理大臣杯初戦の前日、8月5日。その後、夏の大学日本一決定戦でチームが勝ち進むなか、高井は「体力面はまだまだだった」こともあり、わずかな時間しかピッチに立つことはなかった。日本体育大は準決勝で順天堂大に0-2で敗れ、大会を終えた。

 そして迎えた後期リーグ戦。高井はここへ照準を合わせて調整してきた。この日は常に慶應義塾大に先行される展開だったが「負けていても自分たちのサッカーができれば、勝てるというのが自分たちのなかにはあった」と言う。

 0-1から1点を返し、また突き放されたが追いついた。そして2-2の後半38分、高井にチャンスはやってくる。ダイレクトでつなぎ、左サイドを上がってきたDF高野遼(4年=横浜FMユース)がクロスを入れる。後方へささやかに戻りながら、高井がヘディングシュート。ゴールネットを揺らした。

 殊勲のMFはベンチ前へ一目散に駆け寄ると、“頭で取ったぞ!”と言わんばかりに、しきりに額を指差してアピール。「あの場面はなぜか中にいて、左サイドからの攻撃でいいボールが来ました。ヘディングはあまり得意ではないですけど、上手く入ってくれたので良かったです」と笑顔を弾けさせた。

「ヘディングで取るのは小学生以来ですね。最近ふざけて“ヘディングで取るわ!”って言ってたら決まったので。特に(頭で取ることを)意識も練習もしてなかったんですけど……」と恥ずかしそうに笑ったMFは「とにかく嬉しかったです」と話した。

 故障から戻ってきた高井について、アシストしたDF高野は「自分は去年からあいつに活かされているので。あいつがためを作って、中に蹴り込んでいったり、自分がおとりになったりもできる。和馬が時間を作れるので、自分もあそこまで上がることができる。いてくれるのは大きいです」とその存在の大きさを口にする。

 また日本体育大の鈴木政一監督は「あの高井にしてはやった方でしょう」と厳しさを交えながら決勝弾を労い、「守備にまったく理解がないから。そこがもっと出来るようになれば。スーパーなものを持っているし、プロには一番近い選手になるとは思うんですけど、まだまだでしょう」と叱咤激励した。

 もちろん指揮官からの期待を感じている高井は「監督が来た当初から個人的にも(上を目指せると)言われていた。期待に応えたいです」と静かに誓う。進路は現時点では決まっていないが、ここからの活躍で可能性をさらに広げていく。

 公式戦でのフル出場は約3か月ぶり。チーム最多3本のシュートを打つなど積極的にプレーし続け、値千金の決勝弾を決めたMFは「疲れました」とホッとした表情をみせつつも、「でも楽しかったです」と顔をほころばせていた。

(取材・文 片岡涼)
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