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「おかえり、貫太」、愛媛退団から慶大復学のMF近藤貫太が“復帰戦”でアシスト記録

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慶應義塾大での“リーグ復帰戦”、アシストしたMF近藤貫太(3年=愛媛)

[9.12 関東大学リーグ1部第12節 慶應義塾大2-3日本体育大 保土ヶ谷]

 おかえり、貫太。そんな弾幕がゴール裏には掛けられていた。昨年12月に愛媛FCを契約満了になったMF近藤貫太(3年=愛媛)。今春に慶應義塾大へ復学後は、“1年生”としてリスタートし、雑用などをこなすとともに、Cチームでプレーしていた。しかし、リーグ中断期間にあたる今夏にトップチームへ復帰。12日に行われた日本体育大戦で“再デビュー”した。

 Cチームでプレーしていた近藤がトップチームへ“昇格”したのは、7月6日に行われた早慶定期戦後。須田芳正監督から昇格にあたって直接の言葉はなかったものの、「何も言われないことがメッセージ」と捉え、ソッカー部のために出来ることをやろうと改めて誓ったという。

 そして7月22日に行われた天皇杯東京都予選にあたる、東京都サッカートーナメント・早稲田大戦で早速先発。早稲田大に2-3で敗れたものの、復帰後初のトップチームでの公式戦をフル出場で戦い抜いた。

 9月12日に後期リーグが開幕。迎えた日本体育大戦では、2列目右サイドで先発起用される。2013年夏以来、約3年ぶりの大学リーグ戦。それでも気負うことなく、「戦う場所がこっち(トップチーム)に変わっただけで、自分のやるべきことは“慶應のために戦うこと”なので変わらない。特別な思いはなかったです」と淡々と臨んだ。

 すると出場から10分でアシストを記録。右サイドから持ち込み、FW渡辺夏彦(3年=國學院久我山高)とのワンツーで抜け出すと、相手GKとの1対1から逆サイドへ折り返す。PA左でフリーのMF松木駿之介(2年=青森山田高)が冷静に右足シュートを決めた。松木の元へ多くのチームメイトが駆け寄る中、渡辺は一目散に近藤の元へ。起点となった2人で喜んでいた。

 渡辺との相性の良さを感じさせる崩しから生まれた先制点。近藤が「夏彦に当てたら、前にボールが出てくると信じていて。それは夏に積み上げてきたものでしたし、試合を重ねる中で信頼関係も少しずつ出来てきていて、それが得点につながったいい試合の入りだった」と言えば。

 渡辺は「夏に初めて貫ちゃん(近藤)とやってから、“これはフィーリング合うな”と思った。夏もコンビネーションから崩せたシーンもあって。今日もあの場面はたまたまではなく、それが顕著に出たシーンだったかなと思います」と胸を張る。

 その後もセットプレーでチャンスを演出。1-1に追いつかれた前半終了間際のアディショナルタイム2分には正確なキックで2点目をお膳立て。近藤の蹴りこんだ右CK、FW池田豊史貴(3年=浅野高)のヘディングシュートはポストの前に詰めていた相手DFに弾かれるが、MF宮地元貴(4年=東京Vユース)がこぼれを押し込んだ。

 近藤の活躍もあり、2-1と勝ち越した慶應義塾大だったが、後半に2失点。試合の入りは良かったものの、終わってみれば、2-3での敗戦となった。試合後、復帰戦を終えたMFは「試合自体は負けてしまったのですごく悔しい気持ちでいっぱいです」と唇を噛んだ。

「一つの区切りとして、(今日の試合が自分にとっての)スタートであることには間違いないです。後期リーグのスタートの試合をこういう形で落としたということはもったいないというのは、客観的に見て厳しい現実でもあります。ですが、またすぐに試合は来るのでやるべきことをやっていきたい」

 かつて慶應義塾大では11番を背負っていたが、今季の後期リーグで与えられたのは23番。奇しくも愛媛のラスト2シーズンで背負った22番に1を足した数字をつける。

 プロとしての日々に別れを告げ、再開した学生生活。一つ区切りがついたものの、近藤は今も歩みを止めることはない。慶應義塾大で23番を背負うMFが紡いでいく物語。組織のために戦う先にどんな未来が待っているのか。

(取材・文 片岡涼)

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