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新進気鋭の16歳が描く未来…横浜FMユースMF椿直起「“武器”を出さなければ生き残れない」

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1年生ながらも出場機会をつかむ横浜F・マリノスユースMF椿直起

 今季、横河武蔵野FCジュニアユース(現東京武蔵野FC U-15)から横浜FMユースに加入したMF椿直起。5月1日のプレミアリーグEAST第4節清水戦で早々と公式戦デビューを飾ると、第7節FC東京U-18戦で初ゴールを記録するなどセンセーショナルな活躍を披露している。7月にはU-17日本代表初選出を果たし、8月にはトップチームに2種登録された。まだ、高校1年生――。ドリブルにこだわりを示す無限の可能性を秘めた16歳の物語は今、大きく動き出している。

ファーストプレーで
つかんだ自信


――今季、横河武蔵野FCジュニアユース(現東京武蔵野FC U-15)から横浜FMユースに加入しました。『ここで絶対に成功する』という覚悟もあったと思います。
「去年の12月にマリノスユースの練習にきたときはレベルが高くて、もっと頑張らないとダメだなと思っていました。ただ、『ダメだ』と思ったからこそ練習に対する意識や私生活を改めたし、今は寮生活をしているのですが、家を離れてサッカーをやるからには悔いのないようにしたかった。最初はプレミアリーグEASTに出場することを目標にしていましたが、当然1年を通してトップチームに絡み、1年生から活躍したいという思いはありましたね」

――初めての寮生活には苦労もあったと思います。
「寮生活は一人部屋で、自分のことは自分で全部やらなければいけません。食事は出てきますが、掃除や洗濯などはずっと親にやってもらっていたので、そういう面に慣れるのに苦労しました。プライベートの変化に慣れるまでは気持ちが乱れることもあって、その気持ちの乱れがサッカーにも影響していたと思う。でも、この生活に慣れてきて、サッカーに集中することができています」

――プレミアリーグEAST第4節清水ユース戦では先発出場でデビューを果たしました。レベルの高い戦いを体感して感じていることは?
「守備や動き出しの部分など、自分の課題がいろいろと見つかっています。中学ではそういう部分をさぼっていても大丈夫なところがありましたが、高校だと全部やらないとダメです。ただ、自分の特長であるスピードとドリブルは通用している部分もあると感じています」

――デビュー戦となった清水戦でも手応えを感じるプレーはありましたか。
「すごい緊張していて、アップのときも何をやっているのか分からないくらいでした(笑)。でも、ファーストプレーのドリブルが結構ハマったんです。あそこで躊躇してパスを出していたら、自分にとってどういう試合になったか分かりませんが、とりあえず自分の特長を出せて一回抜けたことで、『これをやれば絶対に抜ける』という自信につながりました」

――ドリブルという武器を磨くために取り組んでいることは?
「試合前とかには結構イメージトレーニングをしています。タイプはちょっと違うかもしれませんが、独特なリズムや緩急で相手を抜き去るネイマール選手にすごい憧れているので動画を見てイメージを膨らませています。イメージし過ぎて失敗することもありますが(笑)、いい時はイメージどおりに相手を抜けることもある。試合になって同じような場面、1対1になったら仕掛けようと決めていて、パスを要求されても仕掛けるというか、ドリブルで行けるならドリブルを考えるようにしていますね」

――1年生だと周囲からパスを要求されたら、パスを選択してしまいそうですが。
「もちろん味方にパスを出した方がいい場面ではパスを選択しますが、武器は出して行かないと生き残れないので、ドリブルやスピードは自分のストロングポイントと自覚して、躊躇せずに出していかなければいけないと思っています。正直、僕は緊張するタイプなんですが、遠慮し過ぎて持ち味を出せないよりも、先輩にも要求して自分のプレーを出せるように意識しています」

――プレミア第7節FC東京U-18戦では1ゴール1アシストの活躍を見せました。ゴールという結果は自信にもつながったと思います。
「決定力やシュートは課題なんですよね。ゴール前まで行って決められず、『あの場面でゴールを決めていれば、もっと違う世界が見えていたのにな』ということが中学のときは何度もありました。やっぱり、ゴールを決められるということを証明できれば、周りの見る目も変わるはずです。フィニッシュの部分はまだまだ伸ばさなければいけない部分ですが、プレミアリーグで結果を残せたのは大きかったですね」

世界を相手に感じた壁も
ショックはなくうれしかった


――7月には国際ユースサッカーin新潟大会に出場するU-17日本代表に初選出され、続く8月のチェコ遠征メンバー入りも果たしました。
「代表に選ばれたのも初めてだったし、海外遠征も初めてでした。チームメイトのレベルが本当に高かったので、すごくプレーしやすかったし、『これが代表なんだな』という実感があった。それと海外の選手と対戦できたことが、とてもいい刺激になりましたね。日本ではスピードで抜けている部分が、全然通用しなかったんです。今までは緩急をつけて外に外せば抜ける感覚があったのですが、スライディングが伸びて来て簡単に止められてしまったのが印象に残っています。『これじゃダメなんだな』と感じましたが、それがショックにはならずに刺激になったので、逆にうれしかったですね」

――現実的に代表入りを意識し始めたのはいつからでしょう?
「中学のときから代表に入ることは常に目標にしてきましたが、より現実的に捉えるようになったは、代表に選ばれている選手と試合をしたときです。正直、手の届かない存在とは感じなかったし、代表に絶対に入れないと思わなかった。だから、今回代表に選ばれたときに、このままずっと生き残ってやるぞという気持ちになりました」

――19年に行われるU-20の世界大会には、椿選手の年代が中心になって大会に臨むことになります。来年からはアジア予選が始まることになりますが。
「僕は現在のU-16日本代表には一度も呼ばれたことがないんですよね。代表に呼ばれている選手が皆うまいというのは分かっていますが、その中に食い込んでいくにはもっと努力しないといけません。ただ、まずはチームでリーグ戦にもっと出場できるように努力し、試合に出るだけでなく活躍して目に留まる選手になっていきたい」

――同年代にはバルセロナでプレーしていたMF久保建英選手(FC東京U-18)がいますが、意識はしますか。
「単純にサッカーがうまいですよね。ボールタッチがうまいし、中学3年生でも試合中に高校3年生にすごい要求をしていたのでメンタル的にも強いんだろうなと感じました。でも年齢的には僕の方が一個上だし、自分的にもプライドがあるので、負けたくないと思っています。今は久保選手の方がうまいし、注目されていますが、越えて行きたい。これからですよ」

――順調な歩みを見せていると思いますが、壁を感じたことはありますか。
「先ほど言ったように世界を相手にして壁を感じたし、今までどおり、ストロングポイントをより一層出していきたいと思っていますが、国内でもそれだけでは通用しなくなってきています。オフ・ザ・ボールの動きや守備など、課題に感じている部分にもしっかり取り組み、全体的にレベルアップさせていかないといけません。プレミアのレベルは本当に高いので、そういう部分を意識して詰めていけば必ず成長できると思うし、その中で持ち味を出せていければいいですね」

――ドリブルにはこだわっていくと。
「小学生のときからスピードは周りよりも速い方で、ボールタッチは雑でもスピードだけである程度は通用していました。でも今は縦を切られると止められてしまうこともあるので、相手ディンフェンダーを迷せるように縦にも中にも行けるようにしたい。まだまだ粗削りな部分ばかりですが、やっぱり自分の持ち味だと思うので、そこは磨いていきたいですね」

――横浜FMユースでプレーをして半年以上が経ちましたが、成長を感じていますか。
「去年の12月に練習に参加したころはボール回しでもボールが取れなかったし、ポゼッションがうまいなと思っているだけで、今の自分では全然ダメだと思っていました。今も課題に感じることは多いですが、当時に比べれば練習にもついていけるようになり、最初の頃は緊張していましたが、今は結構伸び伸びやれているので、メンタルの部分もここに来て成長していると思います。マリノスユースには代表に選ばれている選手も多く、練習でもマッチアップするので、良い刺激を受けているし、常に高いレベルで練習することで自分の成長につながっていると感じます」

――椿選手のプレーを支えるスパイク『ACE』の履き心地はいかがでしょうか。
「フィット感があって、スパイクの幅も自分の足に合っているので、すごく履きやすいです。履き続けることで、自分の足によりフィットしていく感覚もあります。僕の持ち味はスピードで、横の動きも多いですが、横の動きをしたときにスパイクが横ズレしないのでプレーに集中できます」

――『ACE』の新モデルとなる『Stellar Pack』の見た目の印象はどうですか?
「白を基調にしたシンプルなカラーリングですが、すごく気に入っています。黒の3本線とゴールドの模様も格好いいですよね。新しいスパイクを履くことで、また新たな気持ちを持ってサッカーに臨めると思います」

――プリンスリーグも後半戦に入り、10月にはJユース杯が開幕します。
「僕は無名だったので、前半戦は初めて僕のことを見る選手が多かったし、相手チームから警戒されていなかったと思います。ただ、試合に出ることで僕の特長も分かってきていると思うし、相手チームも対応してくるはずです。けど、対応された中でも、止められない選手になりたいと思っています。チームではプレミアの上位を目指し、Jユース杯ではもちろん優勝したいし、チームに貢献したい。代表にも選ばれ続けるようにこれからも頑張ります」

(取材・文 折戸岳彦)
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