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[プレミアリーグEAST]指揮官唸らせた「格好いい」逆転劇!横浜FMユースが首位・青森山田撃破!!

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後半45分、横浜F・マリノスユースはMF山田康太が右足で決勝点

[10.1 高円宮杯プレミアリーグEAST第15節 横浜FMユース 4-3 青森山田高 横浜市三ツ沢公園陸上競技場]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2016 プレミアリーグEASTは1日、第15節1日目の3試合を行い、横浜市三ツ沢公園陸上競技場で開催された4位・横浜F・マリノスユース(神奈川)と首位・青森山田高(青森)との一戦はMF山田康太(2年)の決勝点によって4-3で横浜FMが逆転勝ちした。この勝利によって3位に浮上した横浜FMは青森山田との勝ち点差を3に。昇格即優勝のチャンスを大きくしている。

「コイツら、格好いいなと思います」。横浜FMの松橋力蔵監督は素直に逆転劇を演じきった選手たちを讃えていた。試合前のミーティングで指揮官が口にしたのは「価値観」という言葉。「君のきょうの試合の価値観ってどうなの、と。みんながこの一戦がどういう意味、どういう価値があるのか見つめ直していこうというところからスタートした」(松橋監督)という横浜FMのイレブンの価値観は、この一戦は優勝という目標のために絶対に勝たなければならない試合だということで一致した。逆転され、追いつきながらも突き放される苦しい試合。それでも、残り6分にMF岩城大助(2年)のゴールで追いついた横浜FMはそこで満足することなく、CB板倉洸(3年)やCB坂本寛之(3年)がリスクを負って攻め上がるなど最後まで攻め続けて山田の決勝点に繋げた。松橋監督も「『後半、ビハインドくらいの気持ちで行こうよ』『90分が終わった時に絶対に俺たちが勝っていると信じてやれ』っていうことをやってくれました。本当に格好良かったし、本当に燃えているなという、『燃えている集団』でした」と目を細めていた。

 前半は横浜FMが主導権を握る展開となった。守備の柱・CB小山内慎一郎(2年)が出場停止の青森山田はCB経験の少ない工藤聖人(3年)を抜擢。前半半ばまではポゼッションされながらも穴を開けずに守っていたが、30分に左SB阿部隼人(3年)に決定的なクロスを入れられると、その2分後、前線で身体を張ってボールをキープしたFW渡辺力樹(3年)を潰すことができず。横浜FMはここから左サイドへ展開すると、深くえぐった阿部のクロスを最後はMF薄葉迅人(3年)が右足で押し込んで先制点を挙げた。

 青森山田は左SB三国スティビアエブス(3年)がそのフィジカル能力の高さを活かした突破やMF嵯峨理久(3年)とのコンビネーションで左サイドを破るシーンもあったが、0-1で前半終了。だが、後半開始から怪我明けのFW鳴海彰人(3年)をピッチへ送り出すと開始わずか40秒、PAで鳴海が競り勝ち、最後は右サイドでフリーとなったMF佐々木友(2年)が右足で同点ゴールを決めた。横浜FMはMF吉尾海夏(3年)がクロスバー直撃の左足FKを放つなど勝ち越しを狙ったが、次の1点を奪ったのは相手のGKまでプレッシャーをかけるような迫力十分のプレスとサイド攻撃から流れを掴んでいた青森山田の方。13分にU-19日本代表MF高橋壱晟(3年、ジェフユナイテッド千葉内定)が迎えた決定機は決めきることができなかったものの、直後の14分、鳴海の右クロスをファーサイドのMF郷家友太(2年)が上手く合わせて2-1とした。

 広範囲にカバーするMF住永翔(3年)を中心に、ゴール前での集中力も高かった青森山田に対し、一つひとつのプレーの質が落ちてしまっていた横浜FMは苦しい時間帯に。23分、青森山田守備陣に連係ミスが出てオウンゴールで同点に追いついたが、33分に嵯峨の素晴らしい右クロスから郷家に頭で決められて2-3とされてしまう。横浜FMにとっては痛恨の失点。一方、得点する度に控え選手、コーチ陣がピッチサイドまで出て喜び合う青森山田が白星へ近づいた。

 だが、横浜FMは折れなかった。「失点した時にいかに鼓舞できるかが大事。自分が下向いたら何も始まらないと思った。プレーで引っ張って行こうと思いました。この試合を落としたらもう優勝というのはなかったので、カウンターの時とか自分そのまま上がったりして何とか1点を取ろうとしていました」というゲームキャプテン・坂本が最終ラインから思い切った攻撃参加。さらにCBのパートナーである板倉も意を決したかのような攻撃参加で青森山田にプレッシャーをかける。中盤の底の位置で山田が誰よりボールに触れて攻撃をコントロールすると、MF佐多秀哉(3年)らが繰り返しスペースを突くなどフリーの選手を生み出していく。そして中盤で前向きとなった岩城や吉尾、渡辺の仕掛け。横浜FMは39分、右サイドでDFと入れ替わった渡辺のラストパスを岩城が右足で合わせて同点に追いついた。

 この試合の価値を十分に理解していた横浜FMはここで一息つくことなく攻め続ける。一方、3点目を失った瞬間に落胆の色を見せていた青森山田はギアを上げることができなかった。45分、横浜FMはCB板倉がひとりでPAまで持ち上がる。青森山田は人数をかけて潰しに行ったが、横浜FMはサポートしていた山田が抜け出し、GKとの1対1から右足シュートを決めて決勝点を奪った。

 後期4勝1分だった青森山田は約2か月半振りの黒星。U-19日本代表GK廣末陸(3年、FC東京内定)は「4失点目は間違いなく自分たちの気持ちから出てしまった失点でした。ずる賢く(勝ち点を)取りに行くことができなかった。後ろから見ていると、失点した時の気持ちの落ち具合とか、ぼそっと言う声とかで分かってくるんですけど、(何人かは取り返しに行くよりも)勝てたはずなのに、という気持ちの方が大きくなってしまっていた」と指摘。また、黒田剛監督は選手層の薄さ、そして試合の締め方の悪さを課題に挙げた。ベンチや登録外の選手にも上手い選手はいるが、レギュラー組と同じ運動量を持った守備を発揮したり、熱量を持って戦える選手はまだまだ少ない。そして全国高校総体準決勝で流通経済大柏高に追いつきながらもアディショナルタイムに突き放された反省を繰り返してしまった。昨年度は選手権などで試合終盤での強さを発揮していただけに、黒田監督は「5人残っているし、学習しなければいけない」と首を振っていた。優勝に近い位置にはいるが、優勝するためにはひとつずつ修正しなければならない。

 一方、勝った横浜FMは失点の仕方など課題をしっかりと見つめ直すことも重要。だが、チームにとっては今後のシーズンへ向けて勢いに乗るゲームにもなった。坂本は「前半戦は失点した後にチームが落ちていくことを感じていた。でも、後半戦は点入れられた後も決めきることができている。それが勝ちに繋がっている。ここから一戦一戦落とせないシビアな戦いが続くと思う。細かい所っていうのを詰めていかないと優勝は難しいと思う。『神は細部に宿る』って力さん(松橋監督)にもよく言われるんですけど、細かいところを詰めていって最終的に結果が出ればいい」と語り、吉尾は「プレミアリーグとJユースカップ、この2つ絶対に取るという気持ちでやってきているんで、この2つ取って力さん胴上げできるように頑張りたいです」。重要な一戦で見せた「格好いい」逆転劇。プレミアリーグ後半戦を5勝1敗と猛追してきている横浜FMが上位へのプレッシャーをさらに強める。

(取材・文 吉田太郎)
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