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[国体少年男子]5mの対面パスから止める、蹴るを追求してきた王者・神奈川、華麗なゴールで青森県に逆転勝ち!

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後半20分、神奈川県はMF岩澤が決勝ゴール。(写真協力 高校サッカー年鑑)

[10.4 国体少年男子準々決勝 青森県 2-3 神奈川県 遠野運動公園陸上競技場]

 4日、第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」サッカー競技少年男子の部準々決勝が行われ、大会2連覇中の神奈川県と強豪・青森山田高の16人で構成された青森県が激突。青森が2度リードしたものの、それをひっくり返した神奈川が3-2で逆転勝ちし、準決勝進出を決めた。

 青森特有のパワーとスピードを発揮され、セカンドボールを回収された前半は2度のリードを許してしまった。それでも神奈川は2年間取り組んできたことを表現して逆転勝ち。永山晃監督(浅野高)は「確実に前進していこうと。雑に浮かしたボールをペナに放り込むということはしないですし、貫いた結果、ウチの方がゴールに近づいた回数が多かった。そこを変えずにやったことが良かった」。トレセンの活動は週1度程だが、その限られた時間のトレーニングで5mの対面パスから止める、蹴ることを徹底的に追求。MF岩澤桐人(横浜FMユース、1年)は「練習のはじめは2人組で5m、5mのパスを『そこまでやるか』というくらいやってきているので、そこは自信になっています」と説明していたが、正確にボールを扱うこと、周りを見ること、考えるスピードを“どこよりも”徹底して磨いてきたチームは、この日の強豪対決でもショートパスを繋いで狭い局面で前を向く、背後を取る部分を発揮して鮮やかにゴールを奪って見せた。

 先制したのは青森だった。前半9分、MF澤田貴史(青森山田高1年)のインターセプトから、ゴールへの執念をピッチで表現するストライカー、FW小松慧(青森山田高1年)が抜け出して右足でゴールを破る。だが、神奈川は1分後に追いつく。右サイドでMF榊原彗悟(横浜FMユース、1年)のパスから相手SBの背後を取ったMF柴田徹(湘南ユース、1年)がクロス。これをDFの前に入り込んだFW栗原秀輔(横浜FMユース、1年)が右足ダイレクトで合わせて1-1とした。

 だが、青森の迫力ある攻守が神奈川を苦しめる。青森は18分、MFバスケス・バイロン(青森山田高1年)の展開から右サイドをMF片山京誠(青森山田高1年)とSB鍵山慶司主将(青森山田高2年)の連係でDFを外してクロス。これをエースFW檀崎竜孔(青森山田高1年)が頭でゴールヘ突き刺して2-1とした。神奈川は特に前半、失ったボールを高い位置で奪い返せなかったこともあって押し込まれ、我慢する時間帯が増加。フィジカルコンタクトの部分で差を見せるバイロンや檀崎を中心に攻めてくる相手の攻撃に苦しめられた。

 それでも遠藤光(三菱養和SCユース、1年)と鈴木駿之助(横浜FMユース、1年)の両CB中心にヘディングで跳ね返し、GK松本龍典(桐蔭学園高2年)も守備範囲広く守っていた神奈川は次の1点を許さず。相手のハイプレスの中でも焦れずにボールを繋いで前進し、決定機をつくり出す。27分には榊原のスルーパスからU-17日本代表FW椿直起(横浜FMユース、1年)が決定的な左足シュート。これは青森GK飯田雅浩(青森山田高1年)に足でストップされてしまったが、後半、ドリブルに凄みのあった椿がカットインでDF2人、3人と外して右足シュートを打ち込むなど歓喜を予感させるシーンをつくり出す。青森も右SB鍵山が対人で強さを発揮し、CB二階堂正哉(青森山田高1年)がカバーリングの広さで危険を消していたが、後半15分、神奈川が素晴らしい崩しからのファインゴールで同点に追いついた。

 神奈川は右サイドからMF桝谷岳良主将(川崎F U-18、2年)、榊原、栗原がスピーディーなパスワーク。横への動きとポスト役の栗原の深みも加えたボールの動きに青森DF陣は対応することができず、最後は栗原の落としを受けた榊原が左足を振り抜いて同点ゴールを決めた。登録150cmの小さなアタッカー・榊原は飛び上がって渾身のガッツポーズ。永山監督が「一朝一夕でできることではない」と説明する神奈川スタイルを貫いた結果、見事に生まれた一撃だった。

 そして20分、神奈川は再び会場を沸かせる。FW{川野太壱(横浜FCユース、1年)からのパスを受けた榊原が右サイドで巧みにボールをキープしてタッチライン沿いを走るSB藤森隆汰(横浜FCユース、1年)へパス。ラインギリギリから藤森が入れたクロスをニアサイドでコントロールした岩澤が前へ持ち出してDFを完全に振り切ってから右足を振り抜く。これがニア上のコースを破って勝ち越し点となった。右手を突き上げてベンチ方向へ走り出した岩澤をサブ組の選手たちが両手を広げて迎え入れ、歓喜の抱擁。苦しい展開の中で決めたゴールを全員で喜ぶ姿が印象的だった。

 青森も懸命の反撃を見せるが、前がかりになってわずかにできたスペースを椿にドリブルで破られて逆にピンチを迎えるなど押し切ることができない。終了間際にはCB橋本峻弥(青森山田高1年)が放り込んだロングクロスに鍵山が飛び込み、直後には檀崎がDFを外して決定的なシュート。だが、左SB島崎元(川崎F U-18、1年)が身体を投げ出してカバーした神奈川は難を逃れた。そして試合終了の笛。青森には敗戦して多くの選手が涙を流すほど、国体に懸けてきた思いがあった。その思いを制して勝ち上がった神奈川は準決勝で大阪府と対戦する。
 
 神奈川が3連覇を達成すれば91年から94年に4連覇している静岡県以来となる快挙。神奈川は昨年から選手たちが大きく入れ替わる中で1から、チャレンジャー精神を持って取り組んできた。それでも永山監督が「優勝目指して、優勝を通過点にして全員プロになろうというところでスタートしている」チームの目標は優勝だけ。昨年の優勝を経験している桝谷は「神奈川のプライドというものがあるので、しっかり3連覇しないといけないと感じている。自分たちのサッカー信じてやってたら自分たちは優勝できるレベルにあると思うんで、そこは曲げないでやっていきたいです」と語り、岩澤は「プレッシャーもあるんですけど力に変えて3連覇しようと。神奈川のサッカーを貫いて優勝できたら最高です」と力を込めた。自分たちのサッカーを貫き、強敵たちを上回って頂点へ。王者は神奈川らしく、美しく、そして絶対に勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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