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トップ下で2発演出の清武が「力になった」と感謝する“ライバル”からの言葉

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先制点をアシストしたMF清武弘嗣はFKから劇的な決勝点も演出した

[10.6 W杯アジア最終予選 日本2-1イラク 埼玉]

 第一声は安堵の言葉だった。先制点をアシストし、劇的な決勝点につながるFKを蹴ったMF清武弘嗣(セビージャ)は「引き分けだったら本当にやばかった。まずは勝って本当によかった」と、ホーム初勝利に胸をなでおろした。

 1-1で迎えた後半アディショナルタイム5分、PA左の位置でFKを獲得すると、清武が願いを込めて右足で蹴り込んだ。DFがクリアしたセカンドボールをMF山口蛍が右足ダイレクトボレー。土壇場の劇弾に歓喜の輪が広がった。

「FKを蹴って、こぼれて……。一瞬のことで、とにかくうれしすぎて抱きつきに行った」。MF香川真司に代わってトップ下で先発。この日、香川に出番はなく、FW岡崎慎司は後半30分、FW本田圭佑も後半36分にベンチへ下がっていた。

 長年、日本代表の攻撃を牽引してきた3人が不在のピッチで感じることもあった。「試されていると思う。3人が引っ張ってきたチームで、だれもいなくなった中で取れた1点。チームを底上げする意味でも大事な1点だった」と、その意義を語った。

 先制点も清武の好プレーから生まれた。自陣でFW原口元気がボールをカットし、こぼれ球を拾った清武がドリブルで駆け上がる。右サイドのFW本田圭佑にパスを通すと、全速力でその背後を追い越していき、リターンパスを受けた。

 グラウンダーの折り返しを原口が右足ヒールで流し込む。高速カウンターからの先制アシスト。「出して追い越す動きは、アジアでは付いてこれない。それは分かっていたし、(原口)元気が決めてくれてよかった」。直後の接触プレーで腹部を蹴られ、いったんピッチを離れたが、すぐにプレーに戻った。「蹴られた。絶対にあれはPKだと思う」。それでも無心でピッチを駆けた。

 ライバルであり親友である背番号10の言葉も背中を押した。「(香川)真司くんから試合前に『リラックスしてやったほうがいい』と言われた」。トップ下のポジションを争う香川からのアドバイス。「監督の求めるものをやらないといけないという気持ちもあるし、自分のイメージもあるし……」。ハリルジャパンのトップ下として試行錯誤する清武に香川は「リラックスして落ち着いてやれ」と声をかけた。

「そう言われて、うまく気持ちを切り替えられた。力になるし、試合前からチームがいい雰囲気だった。チームが一丸となっていたので、今日の勝利があったと思う」。ベンチも含めた一体感。崖っ縁で団結したチームが総力戦で勝ち点3をもぎ取った。

(取材・文 西山紘平)

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