beacon

「シャンパン2杯飲める価値」山口蛍のチーム救う劇弾にハリルも賛辞

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半アディショナルタイムの劇的ゴールに歓喜の輪が広がった

[10.6 W杯アジア最終予選 日本2-1イラク 埼玉]

 地鳴りのような大歓声にスタンドが揺れた。5万7768人の大観衆で埋め尽くされた埼玉スタジアムが最後の最後に歓喜に包まれた。1-1のまま引き分けが濃厚かと思われた後半アディショナルタイム5分、MF清武弘嗣の左FKから相手選手がクリアしたセカンドボールをMF山口蛍(C大阪)が右足ダイレクトボレーで蹴り込んだ。

 満面の笑みを浮かべ、ガッツポーズでベンチに向かって走っていく山口にチームメイトが次々と駆け寄り、控え選手も含めた歓喜の輪が広がった。「最後、(山口)蛍がスーパーなゴールを決めてくれた。それに尽きる」。清武がそう力説すれば、FW本田圭佑も「課題は多かったけど、それを笑って反省できるシチュエーションに蛍がしてくれた」と感謝した。

 ベンチ前ではバヒド・ハリルホジッチ監督も両腕を突き上げていた。引き分けに終わっていれば、自身の進退問題にも発展しかねなかった。「今日は山口と長谷部に冗談で『点を取ったらシャンパンをおごるよ』と言っていた」。試合後の会見でそう明かした指揮官は、山口のチームを救う一撃に「シャンパンを2杯飲めるほどの価値がある」と手放しで称えた。

 今年1月にハノーファーに移籍しながら、チームの2部降格もあり、わずか半年でC大阪に復帰。海外での挑戦を続けてほしかったハリルホジッチ監督はメディアの前で「うれしくない」と不満を隠さなかった。それでも9月に代表復帰を果たすと、先発した9月6日のタイ戦(2-0)で存在感を発揮。「タイ戦で山口はスーパーな試合をしてくれた」と、あらためて指揮官の信頼を勝ち取った。

 何かと比較されがちな海外組と国内組。唯一のJ2戦士としての意地もあった。「国内組でもできるというところを見せないといけない。出た試合では毎試合、何かを見せていかないと、そう言われ続ける。そういう気持ちが今日はたまたまゴールにつながった」と胸を張る。

 26歳の誕生日に大仕事をやってのけた。代表初ゴールを決めた昨年8月5日の東アジア杯・韓国戦以来、約1年2か月ぶりとなる国際Aマッチ2ゴール目。「これからのサッカー人生、何歳までやるか分からないけど、できるだけ長くやっていきたいと思っているし、その第一歩として、26歳の最初はいいスタートを切れたのかなと思う」。これ以上ないバースデーゴール、そして勝利だった。

「次、引き分けたら、今日苦しんで勝ったのが無駄になる。次も切り替えてやりたい」。チームは明日7日に日本を出発。グループ最大のライバルであるオーストラリアと敵地で対戦する。早くも次戦へ目を向けるヒーローは、誕生日でチームメイトから何かお祝いされたかと聞かれると、「まだ何もない。帰ってからですかね」と柔和な笑みをこぼした。

(取材・文 西山紘平)

●ロシアW杯アジア最終予選特集
●ロシアW杯各大陸予選一覧

TOP