beacon

「点を取りにいく中での最後の手」として、北九州の鹿屋体育大DF福森健太がJデビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加
[10.8 J2第35節 東京V1-1北九州 味スタ]

 鹿屋体育大に所属するDF福森健太(4年=FC東京U-18)がJデビューを果たした。FC東京U-18で育ち、九州の地で戦うDFは、奇しくも“古巣”である味の素スタジアムで一歩目を踏み出した。

 前半1分に先制も、同28分に失点。1-1で試合は進んだ。福森に出番がやってきたのは後半35分。MF小手川宏基に代わる形で本職のSBではなく、2列目右サイドへ入った。

 「個人での突破」を期待して送り出したと明かした柱谷幸一監督は「DF星原健太がまだがんがん上がっていけるので、ただ終盤であとの戻りが厳しいだろうと思った。福森を越えて星原が上がっていって、クロスを上げたあとは、福森が早くSBのポジションに戻ってあげれば」と説明。「点を取りにいくなかでの最後の手」としての切り札だったと語る。

 今年7月に特別指定選手として承認されたDFは、9月からは鹿屋体育大を離れて北九州の練習参加を続けていた。紅白戦では主力組でプレーすることもあったため、Jデビューが近づいていることを薄っすらと感じながら、トレーニングする日々。「可能性はあるなと感じながらやっていました。それがいつ来るかはわからなかったので、いつ呼ばれてもいいように過ごしていました」。

 そして東京V戦の後半35分、最後の交代枠を使う形で出番はやってくる。「最初は自分とはわからなくて、僕なんだ……!」と思ったという大学生。ともにアップをしていたDF寺岡真弘から「力を抜いてやれ!リラックス、リラックス」と幾度も声を掛けられたこともあり、平常心でピッチへ入れた。

「1-1の状況で、監督も勝ち点3を取りにいくと言っていたので、アシストやゴールに結びつくプレーをしたいと思っていました。積極的に結果につながるプレーを意識して、ピッチへ入りました」

 出場直後の後半36分、すぐにボールを触れたことですんなりとゲームに入れた。相手3枚を引き付けながら、中盤からのくさびを受けた福森は、右サイドを攻め上がった星原へスルーパス。相手DFをかわした星原の折り返しから、MF風間宏希のシュートは相手DFに弾かれたが、早速決定機を演出した。その後も右サイドから果敢に仕掛け、臆することなくプレー。約10分間だったが、デビュー戦を戦い抜いた。

 ゆかりある味スタでのデビュー戦。22歳のDFは「よく来ていた場所ではありました。それよりも今日は両親が来ていたので。両親の前でデビューできて、プレーする姿をみせることができたのは、ひとつ親孝行できたかな」とやさしく微笑む。

 闘志を前面に押し出してのプレー、臆することなく果敢に仕掛けていく姿は、チームへ推進力と勇気を与えた。最下位に沈み、残留争いを戦う北九州にとって、福森のような“カード”は強みとなるはずだ。及第点以上の動きをみせたDFへは、さらなる期待が寄せられる。

「出たときには常に自分の良さを出そうと毎日練習から過ごしているので。使ってもらったときは、自分の良さを存分に出して、結果につながるプレーをしたい」と誓った福森は「(自分は)アグレッシブに前線を上がっていって、クロスだったり、シュートだったり攻撃の部分で特徴を出せる選手だと思うので。攻撃に厚みを出せる部分でギラヴァンツ北九州に貢献できればいいなと思っています」と話した。

 まずはJデビューを果たした22歳。二歩目を踏み出したときは、必ずや結果につながるプレーをしたいと静かに誓う。北九州のJ2残留の切り札へ。そうなるだけの力は持っている。

(取材・文 片岡涼)

TOP