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[選手権予選]都立勢・東大和南の進撃止まらず!東京実をPK戦で破り、東京B準決勝進出!!

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全国的には無名の公立校、東大和南高がPK戦を制して準決勝進出

[10.15 全国高校選手権東京都Bブロック予選準々決勝 東大和南高 3-3(PK4-3)東京実高 清瀬内山運動公園サッカー場]

 15日、第95回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選準々決勝が行われ、東大和南高と東京実高との一戦はPK戦の末、東大和南が4-3で勝利。東大和南は11月6日の準決勝で帝京高と戦う。

 陽が落ち、照明に照らされたピッチに“緑の戦士たち”の雄叫びが響き渡った。PK戦は後攻・東大和南の5人目、GK山本浩也(3年)が3-3から熱戦に決着をつける右足シュート。東京実3人目のキックを見事にストップしていた守護神のキックがゴールを破った瞬間、東大和南の勝利と「これは誰もが初めての……」(大原康裕監督)準決勝進出が決まった。

 前半、オウンゴールで先制を許した東大和南だったが、すぐさまFW平塚真史(3年)のスルーパスからFW宮尾慧吾(3年)が決めて同点に追いつく。その東大和南は下がってボールを引き出すMF広瀬将一(3年)やCB岸本真輝主将(3年)らがボールを縦、横、斜めへと動かし、スルーパスに両翼の選手が走り込んでチャンスをつくり出す。夏の総体予選準々決勝・駒澤大高戦でショートパスを繋ぐことに固執しすぎて敗れた反省から改善。「駒澤の時ほど下に固執してやられることはなかったのでそれは良かった」と岸本が振り返ったように、判断良くボールを動かすことができていた。

 だが後半は、大原監督が「相手のプレッシャーが落ちない。むしろ上がって来たので焦って回せなくなりました。普段は横、斜め、ダメならやり直しと、もっと落ち着いて指示を出して行けたんですけど、焦りですね」と指摘したように、焦って前に急いだサッカーになってしまう。前を向いた平塚らがスルーパスを狙うシーンも幾度かあったが、テンポの変わらない攻撃は相手に読まれてインターセプトされてしまった。

 東京実はCB渡辺巧輝(3年)がスライディングタックルでボールをはじき出し、ガッツポーズして見せるなど後方からチームを鼓舞。そしてエースFW萩原陸(3年)を起点とした攻撃からMF久留和己(3年)がクロスを上げきり、MF朝日凱大(3年)がコンビネーションからシュートへ持ち込むなど勝ち越し点を狙う。東大和南も岸本、飯島彪貴(3年)の実力派のCBコンビを中心にその攻撃を封鎖。逆に後半半ばにはボールの動きが好転し、平塚や宮尾、FW田中大地(3年)が前向きにスペースを突くなど相手ゴールを脅かしていく。そして迎えた後半35分、東大和南は右サイドを抜け出したFW住谷大輝(3年)のクロスが相手DFのハンドを誘ってPKを獲得。東京実の守備の中心として奮闘していた渡辺がこのプレーで2枚目の警告を受けて退場してしまう。

 東大和南はこのPKを岸本が右足で蹴り込んで勝ち越し。だが直後、東京実は交代出場のMF日名悠太(3年)がPKを獲得。これを萩原が右足で決めて10人の東京実が同点に追いついた。さらに東京実はアディショナルタイム、MF森翔太(3年)の技ありループがクロスバーをヒット。どよめきの声に包まれたゲームは2-2のまま延長戦へ突入した。

 その延長前半9分、東大和南は大原監督が「あの3点目は狙い通りで東大和南がやりたいことが出せて良かった」と頷くゴール。ショートパスを繋いで最後は平塚のラストパスで抜け出した宮尾が勝ち越しゴールを流し込む。10人の東京実にとっては痛すぎる1点。だが、森のセットプレーなどから相手ゴールへと迫る東京実は延長後半アディショナルタイムに“奇跡”を起こす。森の右FKをファーサイドの萩原が頭で叩き込んで3-3。2度目の“劇的同点弾”を決めた萩原中心に東京実の赤いユニフォームが歓喜を爆発させた。だが、PK戦で1人目と3人目が外した東京実に対し、東大和南は4人が成功。東大和南が東京都高校サッカーの“聖地”味の素フィールド西が丘で開催される準決勝へ駒を進めた。

 試合後、恒例のパフォーマンスで応援の控え部員、関係者たちと勝利の喜びを分かち合った東大和南イレブン。だが、チームの歴史を変えた喜びとは裏腹に、ベンチに戻ってきた選手たちの表情は冴えなかった。宮尾は「後半は相手に点取られてもおかしくない時間ばっかりで、ポゼッションで自分たちが優位に立ってというサッカーをやってきたけど思うようにできなかったですね」と反省し、主将の岸本は「自分たちのベストが出せればもっと(やれる)。でも、内容はまだまだベストじゃなかった。そう(ベスト)じゃないと次は勝てない」と引き締めていた。後半終了間際に東京実が退場者を出した後は11人対10人の戦い。岸本は「相手一人いなくなっても全然繋げなくて、精神的に優位に立てていなかったというか、相手にビビってしまっていた」。歴史を変えたイレブンだが、チームを包んでいたのは危機感の方。当時はまだ現在のスタイルが固まる前だったものの、準決勝で対戦する帝京には今春の練習試合で大敗した経験がある。この日よりも、勇気を持って戦い、自分たちのベストを表現できるようにならなければならない。
 
 とは言え、並大抵の力では激戦区・東京で総体予選8強、そして選手権予選で4強に食い込むことはできない。平塚を中心とした東大和南のパスゲームは威力十分。自分たちのサッカーを表現できれば決勝進出も可能だ。加えて、「東大和南のサッカーがお見せできる」(大原監督)チャンスで選手たちが燃えない訳がない。東京を代表する伝統校にチャレンジしてまた歴史を変えるか。宮尾は「誰かがミスしたら違う人がカバーして、集中して次も自信持ってみんなの分まで頑張りたい」と意気込み、「(準決勝進出は)応援の力が実ったところもあったのかなと思います」と語った岸本は「まだまだ負けたくないという気持ちです」。西が丘で再び支えてくれた人たちと喜び合う。そのために、東大和南は最高の準備をして西が丘決戦に臨む。

(取材・文 吉田太郎)
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