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[NB×北照高]「考えろ」から「考える」に変えて全国総体初出場!ホンモノであることを証明する冬に

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夏冬連続の全国を狙う北照高

 「考えろ」から「考える」に変えた今年、夏の全国高校総体予選で激戦区・北海道を初めて突破。1947年の創部から70年にして全国大会初出場を果たした。プリンスリーグ北海道の下部に当たる道央リーグに所属する北照高がこの冬、優勝候補の旭川実高や札幌創成高を破って北海道2位に入った夏の躍進がホンモノであることを示すため、再びチームの歴史を変える。

 CB丹野脩斗主将(3年)は10月23日に初戦を戦う選手権予選へ向けて、「インターハイの時、決勝で(札幌)大谷さんに1-5で負けていますし、全国でもボロボロに負けてきている。でも、負けてきた中でも得たものはあると思う。全国の経験を持っているのは(札幌)大谷さんとボクたちだけなので、そのほかのチームができなかった経験を全道で発揮できればいいと楽しみな気持ちでいます」と力を込めた。

 北照は4年前からコーチを務めていた宇佐美定輝監督の就任1年目でいきなり、全国大会初出場。北海道を勝ち抜く武器となったのは、アグレッシブなドリブルスタイルのサッカーだ。FW武井洸流(3年)やMF佐倉井玲音(3年)という主軸選手をはじめ、ボールを持った選手が中央、サイドから次々とドリブルで仕掛けていく。宇佐美監督は「ドリブルで行けば、必ず相手は(ドリブルのコースを)閉じますよね。そうすれば、必ずどこかが空きます。そこに2枚目、3枚目の人間がススッと絡んで来ればパスコースがたくさんできる」。ドリブルする選手に複数の選手が絡むことで相手の守りを崩してゴールを奪い取る。また、失った瞬間に切り替え速く守備すること、球際の強度を強くして奪い返すことも徹底。トレーニングではフットサルボールよりも小型のボールをリフティングするなど、ボールを自由にコントロールできるための取り組みが行われ、紅白戦ではAチーム、A2チームにかかわらず、思い切りの良いサッカーを展開していた。

 丹野は「僕たちはドリブルからの2枚目、3枚目が追い越すスタイル。自分は守備なんですけど、自分が(対峙する)守備だったら嫌なスタイルだと思いますし、それがインターハイでできたのが(旭川)実業戦で、(強敵に)勝ったことでそれを証明できたと思います」。総体小樽地区予選からゴールを量産した北照は北海道予選準々決勝の旭川実との大一番でも自分たちのスタイルを貫徹。前評判を覆す白星を勝ち取ると、一気に全国大会出場権を勝ち取った。

 その攻撃スタイルに加えてチームにとって大きかったのが考える力を身に着けたことだ。宇佐美監督は言う。「子供たちのいいところ、ストロングポイントを出させてそれをピースにすれば面白いだろうなと。(監督に就任して取り組んだのは)この場面ではこうだよ、この場面ではこうするんだよじゃなくて、この場面になったらどうするの? という試みですね。それを『考えろ』から『考える』っていう風に変えたんですよ」。それまでは試合を振り返るミーティングでもトップダウンで指導者が意見を全部伝えてそれで終了していた。それを変えた宇佐美監督はチェックシートを準備し、選手たちに試合前にやるべきこと、やってはならないことを文字にさせて、試合後には良かったこと、また「ボールを失う回数が多い」「DFラインが不安定」など悪かったことを書かせるようにした。「自分たちの感じたことをしっかり頭のなかで整理して、喋れなくても書くことで次どうするのかと整理させた」(宇佐美監督)。

 加えてチームは週1回、クラブ活動に当てられている月曜日午後の授業時間に小論文を書く取り組みをスタート。課題文となる新聞記事を読んで400文字の中で序論、本論、結論付けて文章を書き終わった選手から教室を離れていく。最初は文章として成り立っていなかったというが、「小論文をする事でいろんな角度から物事を観る事ができる。相手の逆を取れる次の展開が予測できる様になりました。また、考える習慣を身に付ける事で優先順位ができる様になる。自分はどうしてこう考えたのか、サッカーでもこれを徹底したいとかどんどん出させて。今は9割方の子が書けるようになっています」(宇佐美監督)。考えて自分の意見を整理して言葉にする活動。丹野が「やっていくうちに文字で書くってことは頭で考えることで、頭で考えていたら試合中言葉にして来なかった人も自分たちで考えるようになって、言葉を発信することにも繋がりました」と好影響を口にし、GK齊藤歩夢(3年)も「最初は何だと思いました(微笑)。でも、書いて人に伝えることは大人になっても、大学になっても使えると思います」と語ったように、サッカーだけでなく将来へ向けても活かされそうだ。

 全国総体は初戦で香川西高(香川)に0-8で大敗。前半や0-2の後半開始直後に1点を返していれば、流れを変えることができたかもしれない。だが、逆に足が止まり、点差を広げられてしまった。できたこともあったが、できなかったことも多かった夏。そこから考えて、変えてきた部分がある。左SB山口海人(3年)が「(課題について確認し)Aの人からBの人とかチーム全体の底上げをやって来ることができたと思います。ボクらは速さに対応する能力がなかったと思いますし、自分たちのサッカーをする力もなくてあとパスコンとか基礎の所が足りなかった。(その課題について)個人個人が練習中から声を掛け合ってできたと思います」と語ったように、経験した全国から考え、磨いてきたことを選手権のピッチで表現する。

 選手権は無印で勝ち抜いた総体よりも間違いなく厳しい戦いになる。エースの武井は「全国出たってことで北照に対する目線も変わるし、プレッシャーも強くなると思うんですけど、全国出たからにはその看板とかもあるし、選手権で厚競(厚別競技場、準決勝以上を開催)行ったことないので、選手権で初めて小樽から厚競行ったチームになること。そこで歴史を作りたいですね」と語り、齊藤は「全国っていう舞台は凄く緊張したし、暑さも北海道と違って全部が初体験だった。でも全部経験したんで次選手権で全国行って、まずは1勝したい」と誓った。今年、歴史を変えてきたイレブンだが、まだまだ満足はしていない。まずは選手権北海道予選で北照史上初となる4強入り。そして全国で大敗した雪辱を全国で果たすためにも、優勝して全国舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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