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[選手権予選]上に行くのは「オレらがやろうと」。相洋が夏の王者・横浜創英撃破して準々決勝進出!:神奈川

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[10.22 全国高校選手権神奈川県予選3回戦 横浜創英高 2-3 相洋高 日大藤沢高G]

 第95回全国高校サッカー選手権神奈川県予選は22日、3回戦を行い、相洋高がFW菅井涼介(3年)の2ゴールとMF川本大夢(2年)のゴールによって総体予選優勝校の横浜創英高に3-2で勝利。相洋は30日の準々決勝で向上高と戦う。

 第1シードを撃破して8強入り。目指してきた打倒・横浜創英を果たした相洋の綱島陽介監督は選手たちへのメッセージとして「良くやったと。3年生のまとまりとか、3年生が引っ張ってくれたからこの勝利があると。応援してくれた、ベンチに入れなかった3年生が声をあげて応援してくれたおかげだよと。その気持ちとか、負けた創英の分も次も勝たないといけないよという話をしたい」と話していた。

 個性が強過ぎるが故に脆さもあったという相洋だが、指揮官が「悪く言えばまとまりがなかった。バラバラになっていたんですけど、わがままを我慢してチームとして戦うことができるようになった。感謝したい」と語ったように、この日は素晴らしいまとまりとパフォーマンスを見せた。綱島監督から「立ち上がりは全部(プレスを)かけなさい。全部圧倒しに行け」と送り出された相洋は、立ち上がりからのハイプレスで横浜創英を飲み込みに行く。すると6分、10番を背負う右SB渋谷拓海主将(3年)が斜めに入れたボールで相手の背後を取った快足FW菅井が先制ゴール。「先生に(横浜創英は)裏への対応がそこまで良くないと言われていた。そこを狙えと言われていた」という菅井のゴールで先制した相洋はさらに9分にもMF原大知(2年)の右CKから川本が頭で決めて開始9分で2点のリードを奪った。

 宮澤崇史監督が「(失点の)時間帯が早かったので慌てずにしっかりやれと」指示を出した横浜創英は、自分たちの取り組んできたショートパスを繋いでDFの背中を取るサッカーで前進。MF木澤海智(2年)の右足シュートがクロスバーを叩くシーンもあったが、渋谷が「前からプレスして全員で守備するということ。守備はそこから入ってショートカウンター」と狙いを持って試合を進める相洋に押し返されてしまう。そして相洋は抜群のスピードで相手の背後を突く注目FW菅井がDFを振り切って左足シュートを放ったほか、運動量を兼ね備えた左利きの司令塔・関野元弥(3年)やMF石橋直也(3年)、MF市川航太(3年)がスペースをドリブルで突いて横浜創英のリズムを狂わせる。

 それでも横浜創英は前半終了間際にケガで先発を外れていた中盤の要・MF中山陸(3年)を投入。すると直後の39分、左SB福田峻太(3年)の左FKをニアへ飛び込んだ木澤が頭で決めて1点差とする。さらに後半8分にはFW伊藤綾麻(3年)がゴールを破って同点に追いついた。“創英モデル”のパスワークで今年、インパクトを残してきた横浜創英の猛攻。だが、関野が「リーグ戦でも同点の試合が続いて、先制しても同点に追いつかれて終わることが多かった。だから、きょうは追いつかれても前に出て点取りにいこうと」説明したように、守りに入るのではなく、3点目を狙いに行った相洋にゴールが生まれる。

 11分、中盤でボールを奪った関野が「奪って、(狙ったのは)空間ですね。ちょっと高めでパスを出した」とスルーパス。これで抜け出した菅井が1対1となったGKを「シュートコースを切られたので」右側からかわして勝ち越し点を流し込んだ。横浜創英は再び追う展開に。だが、精神的なダメージも影響したか、リトリートした相洋に中央を締められた横浜創英はなかなか攻めきることができない。一方の相洋は奪ったボールをすかさず縦やサイドへ蹴り込んで、持ち上がった関野の左足シュートやサイドでタメをつくる菅井をポイントにチャンスを作り出した。

 徐々にロングボールの増えた横浜創英は相洋の福山陸生(3年)と石田恵悟(2年)の両CBに何度も跳ね返され、サイドからの攻撃もSB沼宮内来風(3年)やSB渋谷がプレスバックを欠かさない中盤の選手たちと挟み込んで来る相洋DF陣に突破をさせてもらえない。「ゴールに急ぎたいという気持ちがこの子たち出てしまって、雑になったところや前に急ぎ過ぎたところもあった。僕がコントロールできなかった」と宮澤監督が悔やんだ横浜創英に対し、相洋はボールをキープする時間を増やして上手く時間を削っていく。迎えた38分、横浜創英は中山陸のスルーパスで伊藤が抜け出したが、距離を詰めたGK田代将太郎(3年)の前にシュートを打ちきれず。再三あったセットプレーも身体を張った守備を見せる田代ら相洋守備陣に跳ね返されてしまった。

 そして試合終了の笛。相洋はベンチから選手たちが飛び出して夏の王者撃破を喜んだ。この試合に懸けてきていた相洋。前日、メンバーの3年生11名は遠足を公欠し、前日まで修学旅行だった2年生たちはこの日のために旅行期間中に朝5時から朝練を行ってきたという。そして横浜創英のビデオを何度も見て分析。ピッチで相手の良さを消しながら、自分たちの持ち味であるボールを動かす部分も発揮して勝利した。渋谷は「みんな創英が(上に)行くと思ったと思うんですけど、オレらがやろうと。同点に追いつかれてしまったんですけど守りに入らなかったことが良かった」と笑顔。春の練習試合で静岡の名門・藤枝東高に3-0で勝利し、神奈川県1部リーグでは優勝した湘南ベルマーレユースと2戦2分。自分たちの実力に自信も持っていたエンジの軍団がその力を表現して、優勝する権利があることを証明して見せた。「なかなか応える事ができなかった」(渋谷)という仲間たちの応援にV候補撃破で応えた相洋が、横浜創英に代わって主役の座に躍り出る。

(取材・文 吉田太郎)
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