beacon

[Jユースカップ]紙一重の勝負で見せた強さ、前回王者・浦和ユースが鳥栖U-18に逆転勝ち!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半35分、浦和レッズユースはU-19日本代表の2年生CB橋岡大樹(40番)が決勝ゴール

[10.23 Jユースカップ2回戦 浦和ユース 3-2 鳥栖U-18 RL]

 2016Jユースカップ 第24回Jリーグユース選手権大会は23日、2回戦2日目を行い、昨年優勝の浦和レッズユースサガン鳥栖U-18と対戦。先制後に一度逆転された浦和だったが、MF井澤春輝(2年)のこの日2点目となるゴールと、U-19日本代表CB橋岡大樹(2年)のゴールによって3-2で逆転勝ちした。浦和は10月30日の3回戦でG大阪ユースと対戦する。
 
 鳥栖の金明輝監督は「最後身体張ったり。あそこで守る、守らんはレッズの子たちの方が一枚も二枚も上ですね」と無念の表情を見せていた。紙一重の勝負となった熱戦は今年のプリンスリーグ関東で現在14戦連続不敗、9勝中6勝が1点差勝利という浦和が勝負強さを見せつけて逆転勝ち。浦和の大槻毅監督は試合が進むにつれてチーム内で改善したり、交代選手の力などで高めていった試合について「前半よりも前半の最後、前半の最後よりも後半、そして終盤(で良くしよう)というのが、見え隠れしたのは良かった」と頬を緩めていた。

 立ち上がりからともにU-19日本代表の鳥栖FW田川亨介(3年、トップチーム昇格内定)と浦和CB橋岡が壮絶なマッチアップ。浦和が後方から攻撃を組み立て、FW川上エドオジョン智慧(3年)やMFシマブクカズヨシ(2年)の仕掛けなどサイドからチャンスを作ろうとすれば、鳥栖はロングボールのセカンドボールを拾い、相手の背後を突く攻撃を見せる。5分には田川が鋭く抜け出し、16分には存在感光ったMF石川啓人主将(3年、トップチーム昇格内定)のミドルシュートがゴール右上隅を捉える。
 
 互いのハードワーク、守備意識の高さに加えて浦和GK山田晃士(3年)の好守や空中戦の強さ際立つ橋岡、鳥栖のU-17日本代表CB藤松航矢(2年)のヘッド、カバーリングなど個も発揮されていた戦いは先に浦和ベンチが動く。29分、FW時里元樹(3年)に代えてU-17日本代表FW井澤春輝(2年)を投入。「(井澤)春輝がスタメンでもおかしくないし、時里が悪かった訳でもない。僕が戦略的にそうやっただけ」と大槻監督は説明していたが、今やAチームのメンバー誰が出ても遜色なくやれるのは浦和の強み。33分にはMF松高遼(3年)を起点に橋岡がサイドへ展開すると、右SB関慎之介(3年)が切り返して上げたクロスを投入されたばかりの井澤が頭で合わせて先制点を奪った。

 34分にもMF渡辺陽主将(3年)の中央突破から川上が右足シュートを放った浦和に対し、鳥栖も直後に小柄なドリブラー、FW大坪蘭(2年)をピッチへ送り出して反撃。そして42分、意外な形で同点ゴールが生まれる。ゴールラインを割ればCKというボールをすれすれでキャッチした浦和GK山田がパントキックへ移るが、鋭くプレスに行った鳥栖MF石川がチャージ。太ももに当たったボールがそのままゴールヘ吸い込まれて1-1となった。

 ボール、勝利への執念によって幸運なゴールを引き寄せた鳥栖はさらに後半3分、大坪が獲得した右CKを石川が蹴り込むと、中央へ飛び込んだCB倉員宏人(2年)が頭で勝ち越しゴール。逆転に成功した鳥栖はその後も前への姿勢を失わず、ロングボールを活用しながらグイグイと前に出ていく。そしてショートカウンターから抜け出した田川の左足シュートや大坪のドリブルシュートなどで3点目を狙った。一方の浦和も前線で井澤がポイントとなり、サイドからのクロスが鳥栖DF陣を苦しめる。そして18分、右サイド深い位置からの落としを受けたSB関がゴールエリアへクロスを入れると、MF大西翔也(2年)がGKと競り、最後はこぼれ球を井澤が押し込んで同点に追いついた。
 
 浦和は直後にも松高の右クロスを井澤が折り返して決定機を迎え、25分には左SB鈴木海都(3年)の左FKをCB遠藤凌(3年)が頭で合わせる。鳥栖も石川の右足ボレーがクロスバーをかすめるなど観衆を沸かせるシーンをつくり合って迎えた30分、ホームの浦和が先に3点目を奪った。右CKのクリアボールを拾った川上がクロスを入れると、中央の橋岡がDFの頭上から強烈ヘッドを叩き込んで3-2。殊勲の橋岡は「(山田)晃士くんがいつもピンチの時に助けてくれていたので、フィールドのみんなで晃士くんを助けてあげないといけないと話していた。絶対に決めてやるという気持ちだったので、ああいう形で決められたのが本当に嬉しかった」。守護神・山田はミスの後に良く立て直していたが、チームメートたちの「絶対に勝たせる」という思いも実っての逆転劇だった。

 鳥栖は諦めずに反撃する。39分にはセカンドボールを拾ったSB高橋拓海(2年)の攻撃参加から石川が左足ダイレクトでシュートを狙ったが、わずかにポスト右。浦和もギアを上げて仕掛ける渡辺の突破が決定機を生み出すなど、最後まで見応え十分だった熱戦は渡辺が「今、プリンス関東で1位ですし、(前回)チャンピオンとしてきょうみたいに相手が勢いもってくる中で打ち返す強さはあると思っています」という浦和が3-2で制した。現在、佐賀県1部リーグに所属する鳥栖はプリンスリーグ関東首位の浦和を十分に苦しめたが惜敗。金監督は「公式戦でやるからこそ、今僕たちの現在地が分かったし、やれることは十分にあったところと、やれないところが十分にあったところと今後の糧にしないといけない」と語った。

 一方、浦和は鳥栖のハードワーク、勝利への姿勢を上回って勝利。大槻監督は「ちょっと上手い選手とかいっぱいいる。自分で自分を磨ける選手になってほしい。きょうはそういうところをもっと出そうというのが出た。途中から出る選手も何とか状況を良くしてやろうというのが出ていた」と各選手の奮闘を認めていた。井澤が「ギリギリの試合とかを(勝利へ)持ってこれるチーム。一人ひとりの意識が凄い。練習の雰囲気づくりから凄い。戦わないと出れないです」と説明する浦和。勝負強さの源となっている部分をもっと磨いて、「まだまだやれる」(大槻監督)イレブンが連覇を狙う。渡辺は「今年プリンスリーグの黒星は1しか無いんですけど、何も成し遂げていないチーム。クラブユース(決勝T1回戦敗退)も全くいい試合ができていないですし、(プリンスリーグの)参入戦もありますし、ここで取れなければ昨年のチームに負けてしまう」。抜群の勝負強さで負けないチームとなっている浦和だが、“まだ何も成し遂げていない”こともエネルギーに貪欲に勝利へ挑戦。次は3回戦でプレミアリーグ勢・G大阪ユースとの大一番を戦う。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
2016Jユースカップ特集ページ

TOP