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[選手権予選]2年前0-6で敗れた盛岡商に同じ準決勝でリベンジ!専大北上が延長戦制して初V王手!:岩手

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延長後半6分、齊藤の決勝点を喜ぶ専大北上高イレブン

[10.26 全国高校選手権岩手県予選準決勝 盛岡商高 2-3(延長)専大北上高 いわぎんスタジアムA]

 第95回全国高校サッカー選手権岩手県予選準決勝が26日に行われ、全国大会初出場を狙う専大北上高が延長戦の末に名門・盛岡商高に3-2で勝利。専大北上は11月6日の決勝で遠野高と戦う。

 初優勝を狙う専大北上が4年ぶりとなる決勝進出を決めた。それも日本一の経験を持つ伝統校であり、2年前の選手権予選準決勝で0-6の大敗を喫している盛岡商に2度リードを奪われながらねじ伏せての逆転勝ち。小原昭弘監督は「ゲーム前に言ったんですけど(80分間、100分間)トータルで試合しようよと。先に取ることもあるし、取られることもあるし一喜一憂せずにやろうと話していました」。

 リードを奪われても落ち着いて戦ったイレブン。加えて主将のMF小野寺拓海(3年)が「1年生の時には選手権のベスト4で当たって、0-6で負けてしまった。自分、本当に何もできなくて終わってしまったので、その時の何もできなかった悔しさがありますし、去年の高総体でも盛商とベスト4で当たって0-4で負けてしまっていたので、3回目なので絶対に負けられないと思っていた。徹底して相手にチャンスをつくらせないかをやってきた」と振り返り、そしてエースFW蟻田幸希(3年)が「一昨年はSBだったんですけど、何もできなかったというか、無力感しかなかったですし、去年も自分の力不足というか、体力不足。どっちも無力感が大きかったので冬場から走り込みを増やしてきました」と語ったように選手たちは雪辱への思い、取り組んできたことをトータル100分間の戦いで表現した。そして劇的な勝利。イレブンは試合後、スタンドで勇気づけてくれた応援団と喜びを爆発させていた。

 序盤から盛岡商が攻め込むが先に決定機を迎えたのは専大北上の方。11分、抜群のスピードでDFの背後へ抜け出した蟻田がGKと1対1となる。だがシュートは盛岡商の1年生GK阿部春陽がストップ。絶好のチャンスを逃した専大北上に対し、盛岡商は直後の14分に先制する。左CKからCB腹子直哉(3年)がヘディングシュート。こぼれ球をFW伊藤隆人(3年)が押し込んでリードを奪った。

 だが、相手に押し込まれながらも専大北上はカウンターから押し返す。攻め急ぐことなく、ボールをひとつ繋いでからしっかりとスペースを狙った攻撃。そして26分、左SB小山優人(3年)の縦パスで再び抜け出した蟻田がGKの位置をしっかりと確認してから「最初(11分の場面は)、立ち上がりという中で置きに行ってしまったので、それじゃダメだと。今度は思い切り打とう、とりあえずコースに強く打とうと思いました。イメージ通りでした」と今度は強い右足シュートをコースへ沈めて同点に追いついた。

 盛岡商はこの後、ボランチの谷地朝日主将(3年)をCBへ移して蟻田のスピードに対応。それでも専大北上は我慢強い守りから蟻田と10番FW齊藤大河(3年)がチャンスを作り出していく。それでも次の1点を奪ったのは伝統校・盛岡商の方。後半17分、MF添田裕也(2年)の左CKをCB泉山凌馬(3年)が豪快にゴールヘ突き刺して2-1とした。だが、専大北上は27分、蟻田が獲得した中央左寄りのFKから小野寺が右足を振り抜く。クロスバー下側を叩いた一撃はそのままゴールラインを越えて同点ゴールとなった。

 盛岡商はMF吉田陸(3年)とMF日下奈樹(3年)のゲームメーク、添田のドリブルなどから三度勝ち越しを狙ったが、専大北上は29分に盛岡商FW村井勇仁(1年)の決定的なヘッドを1年生GK藤原波瑠がスーパーセーブ。CB佐藤隆之介(3年)やCB五内川歩(1年)、小野寺中心の守りで必死に食い下がる。この後互いに決定機を作りながらも奪えなかった3点目。2-2で突入した延長戦では、後半半ばに足を攣らしていたMF畠山侑希(2年)が走り続けて逆に決定機に絡み、キレが落ちない齊藤ら専大北上の勢いが盛岡商を上回っていく。

 チャンスで決めきれなかった盛岡商は延長後半5分に泉山の放った右足FKも右ポストを直撃する不運。一方、徹底して相手の背後を狙って決定機を作り出した専大北上は6分に蟻田の抜け出しから齊藤が決定機を迎えるが、これはGK阿部に止められてしまう。小原監督も「相手がスピードある選手を嫌がっていたのでDFの裏に蹴れよと。(このシーンでは)何で外すんだと思いましたけれど」と苦笑したが、それでも直後の右CKから齊藤が決勝点を奪う。蟻田がCKを蹴り込むと、ニアサイドの齊藤が「ニアという練習どおりの形だったので当てるだけでした」と右足ダイレクトシュート。ゆっくりと転がったボールはそのままゴール左隅へ吸い込まれた。「何が何だかわからなくて。決まったら(スタンドへ)行くしか無いと、喜ぶしか無いと思ったので走っていきました」という齊藤を筆頭に緑のユニフォームが専大北上応援スタンドへ押し寄せ、決勝点の喜びを爆発。この試合初めてのリードを奪った専大北上がそのまま3-2で勝利して決勝進出を果たした。

 次は初優勝を懸けて岩手2強のもう一角、遠野と戦う。齊藤は「専北で優勝というのはまだないので、自分たちが最初の優勝を取ろうと思っています」と語り、蟻田は「個々の能力は高くないですけどキャプテン(小野寺)をはじめとする意識の高さがある。それがきょうの結果に繋がった。絶対に優勝します」。頂点を見据えて、意識高く取り組んできたという専大北上が岩手の歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
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