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「忘れないと思うし、忘れたくない」 契約満了の横浜FM小林祐三が目に焼き付けた“光景”

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今季限りでの退団が発表されている横浜F・マリノスDF小林祐三

[11.3 J1第2ステージ第17節 浦和1-1横浜FM 埼玉]

 前日に契約満了が発表されていた。「チームメイト、ファン・サポーターの皆さんに報告した上で、最終節に臨みたかったので、このタイミングでの発表とさせて頂きました」とクラブを通じて、心境を明かしていた横浜F・マリノスDF小林祐三は、リーグ戦最終戦もスタメンに名を連ねて90分間チームのために走り抜いた。

「(エリク・モンバエルツ)監督が『彼(小林)のために』と試合前にチームメイトに言ってくれた。正直、自分のためにプレーしてほしいとあまり思わなかったけど(笑)、皆とサッカーをやれる90分が、自分にとって皆からの贈り物だと思っていた」

 序盤から浦和に押し込まれる展開となったが、体を張った守備で簡単には得点を許さず。「別に最後だからと言って、『アシストしてやろう』『点を取ってやろう』という色気はなかった」と攻撃参加は自重して、対面のMF関根貴大から自由を奪おうと奮闘。後半21分に先制を許しながらも同40分に追い付き、年間1位を決めた浦和を相手に1-1のドローで終えた。

「勝ちたかった」と唇を噛みながらも、「でも、俺が持っている選手の運的には、これが限界」と苦笑。しかし、「俺が来てから最低の順位だし、そういう意味では悔しいですね」とチームが年間10位に終わり、高みに導けなかったことに悔しさを滲ませた。

 横浜FMでのリーグ戦最終戦。この試合は、小林にとってJ1リーグ通算300試合出場と節目の試合となった。柏在籍時の06年と10年にはJ2でプレーしていたからこそ、「(J1で)90パーセント以上の試合に出場しないと達成できない数字だと思う」と語るように、ほとんどのシーズンで30試合前後の出場を積み重ねて300試合出場を達成。そして、日本代表歴のない自身にとって、意識してきた数字だったと明かす。

「俺がレイソルにいたとき、薩川(了洋)さんが『日本代表に入らなくて300試合出場を達成したのは俺だけだ』と話していたのを覚えていて、こういう生き方もあるなと思っていた。ただ、まさか自分も代表に入らずに300試合になるとは思っていなかった」。だが、あくまで300試合出場は「通過点」と強調。「300試合を目指してやってきたわけではない。ゴールではないし、止まりたくない」。

 試合後にはアウェーにも関わらず、詰め掛けてくれた大勢のサポーターの下へと向かった。そこで、サポーターから「メッセージを書いたユニフォームやフラッグ」が渡された。そして、「コールリーダーの方が気持ちを伝えてくれて、すごくうれしかった」とサポーターの思いを受け止める。

「自分が一人で立って、その前にはものすごいマリノスサポーターがいて、いろいろな人が『13』と書かれたいろいろな物を掲げてくれた。あの光景は、あの風景は忘れないと思うし、忘れたくない」。横浜FMのユニフォームを着て6年。ずっと背中を押し続けてくれたサポーターの姿を目に焼き付けていた。

(取材・文 折戸岳彦)
●[J1]第2ステージ第17節 スコア速報

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