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[選手県予選]4度目の決勝挑戦で初V!海星が2年生FW三輪3発などで津工に撃ち勝ち、三重新王者に!

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初優勝を果たした海星高イレブン

[11.12 全国高校選手権三重県決勝 津工高 2-4 海星高 三重交通Gスポーツの杜鈴鹿]

 第95回全国高校サッカー選手権三重県予選決勝が12日に三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で行われ、全国4強入りした07年度以来となる優勝を狙う津工高と4度目の決勝挑戦で初優勝を目指した海星高が激突。海星がFW三輪翔真(2年)の3得点の活躍などによって4-2で勝ち、初の全国大会出場を決めた。

 今大会準決勝で津工が名門・四日市中央工高を撃破。これにより、決勝は上野工高と四日市四郷高が戦った95年度以来、21年ぶりとなる「四中工不在」の決勝となった。その決勝を4-2で制した海星が、4回目の決勝挑戦で初めて迎えた歓喜の瞬間。かつて、四日市中央工のコーチを務めていた経歴も持つ海星・青柳隆監督は「もうちょっと感動するかなと思っていたんですけど。内容が危なかったんで、喜んでいる場合ではなかった。厳しかった」と苦笑していたが、それでも、「(海星に来て)22年目です。夢のようですね」と重い扉を開いた喜びを口にした指揮官は、選手たちの手で胴上げされると、充実した笑顔を見せていた。

 昨年の決勝の反省が見事に活かされた。海星は立ち上がりからエンジン全開で津工を飲み込みにかかる。GK、最終ラインからショートパスをつなぎ、ドリブルで相手の守りを剥がそうとする津工の攻撃を中盤での厳しいチェックによって何度もインターセプト。「10番(東出)に(ボールが)集まるというのは分かっていたので、自分が10番の選手をしっかり抑えて、サイドの選手に蹴り込ませないようにすれば大丈夫だろうと思っていました」と振り返るMF上陰統己主将(3年)が津工の注目司令塔・FW東出壮太(3年)を常に“射程圏内”に収め、彼に縦パスが入ってくると個人、複数の選手で厳しく寄せてボールを強奪する。また海星は警戒していたMF橋本祥英(3年)やMF居附勇利(3年)というテクニシャンにも自由を与えない。特に立ち上がりは完全に海星の守りがハマり、ショートカウンターを連発。MF桜井天海(2年)の右足ミドルやスルーパスで抜け出したMF伊藤蓮(3年)の決定的なシュートに結びつけた。

 序盤、中盤で相手のプレスに引っかかってしまうシーンが続いた津工がなかなか前進することができなかったが、相手のプレスに慣れたか、徐々に相手の守りをずらし、その背中を取るシーンを増やしていく。攻撃にリズムの出てきた津工はアイディアあるパスとボールキープでスタンドを沸かせていた東出や、前向きにボールを受けるMF魚見勇人(2年)を中心としたパスワークや橋本、居附の突破、右SB野田大貴(2年)の攻撃参加からチャンス。そして25分には橋本の折り返しを受けた居附の左足シュートが枠を捉えたが、GK中村勇之介(3年)のファインセーブに阻まれてしまった。津工は東出が「最初の立ち上がりの入り方で海星のペースに全部持って行かれた形だった。途中立て直せたかなと思ったけれど相手の勢いがあった」と振り返ったように、相手の勢いを止めて得点するまでには至らず。先制したのは海星の方だった。30分、敵陣で津工のミスパスをインターセプトした上陰が一気にPAへドリブルで持ち込むと、DF2人を引きつけて左の三輪へパスを通す。GKと1対1となった三輪が先制点を流し込んだ。

 直後、津工は橋本が左サイドを抜け出し、居附がゴールネットを揺らしたが、橋本が抜け出した時点でオフサイドの判定。そのショックが見える津工にできた隙を海星の上陰と三輪が見逃さない。35分、自陣での左スローインから上陰が絶妙な縦パスを通すと、完全に抜け出した三輪がGKとの1対1を制して2-0とした。海星は昨年、四日市中央工との決勝前半だけで4失点。だが、この日1年前と違う姿を見せた。三輪は「(昨年は前半で連続失点したので)ガンガン行こうと思っていました。立ち上がり良くて先制点取れたのは良かった」と語り、上陰は「去年は前半だけで4失点してしまっていたので守備からやって点取っていけたのが良かった」。受け身になった昨年決勝の敗戦の反省を活かして、立ち上がりからアグレッシブにペースを握りに行った海星が2点のアドバンテージを得た。

 津工は後半開始からFW脇野志音(3年)を前線に入れて反撃するものの、ドリブル、ショートパスを読まれて海星にインターセプトされ、またボールを奪った勢いで一気に前進してくる星野皓輝(3年)と山田晋平(2年)の両SBやスピードを活かしてオープンスペースへ抜け出してくるFW水谷恭平(3年)、桜井に押し戻されてしまう。青柳監督が「(ボールを持ったら前に)もう、行けと。そうじゃないとサッカーは面白くない。ボクも攻撃好きなんで」という海星は勢いを持ってアタッカー陣やボランチ、SBまでグイグイと前に出て追加点を狙うと後半10分、左サイドからボールを運んだ水谷のパスから三輪が右足ミドルを突き刺して3-0。これで勝負の軸は大きく傾いたように映ったが、津工は諦めない。13分、魚見のスルーパスからDFに競り勝った脇野が豪快な左足シュートを突き刺して1点を返すと、生き生きとボールを扱う選手たちがその個人技とショートパスで海星DFをいなし続ける。26分には左サイドを攻略。東出がゴールライン際を鮮やかに突破して脇野が決めると、勝敗の行方は完全に分からなくなった。

 ともに足を攣らせる選手が出る中での終盤、海星は前への気持ちが強まっていた津工の背後を突いて4点目を奪う。左サイドから仕掛けた三輪のクロスをファーサイドで水谷、桜井とつなぎ、最後は上陰が強烈な右足シュートを叩き込んで4-2。この1点で相手の反撃の勢いを止めた海星が1年前の準優勝の悔しさを晴らして頂点に立った。今大会、5試合で17得点を叩き出しているという三輪や水谷ら破壊力備えた攻撃陣と、元FWのCB長谷川雄大(3年)やCB深川瑠夏(3年)ら球際強い守りで選手権全国大会に初挑戦する海星。最優秀選手に選出された上陰は「四中工がいつも強い、強いと言われて、三重の高校はどこも悔しいと思うんで、三重県は四中工だけじゃないということを全国に確認させたい」と力を込めた。意欲的な挑戦者が初めてとなる冬の全国で三重・海星の名を轟かせる。

(取材・文 吉田太郎)
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