beacon

[MOM1952]帝京長岡GK深谷圭佑(3年)_1年前のリベンジ達成!守護神を奮い立たせた3年生のサプライズ

このエントリーをはてなブックマークに追加

帝京長岡高を無失点Vへ導いたGK深谷圭佑

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.13 全国高校選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 4-0 新潟明訓高 デンカS]

 やはり同じように全国を決めた総体予選決勝以来の“ラインダンス”。スタンドを見上げた視界の先に、声援を送り続けてくれた3年生の笑顔が飛び込んでくる。「みんなが本当に喜んでいるというのがスタンドを見ていてもわかったので、あれはもう最高ですね」という深谷圭佑。チームを束ねてきたキャプテンは歓喜のダンスに身を委ねながら、前日のミーティングの光景を思い出していた。

 帝京長岡高にとっては3年ぶりとなる冬の全国出場が懸かる決勝前日。「3年間でこれがラストだったので、最後の冬は絶対全国に行こうと思っていました」という深谷の言葉を待つまでもなく、チームのモチベーションも十分。最後の1試合に臨む覚悟も決まり、最高のムードでミーティングが終わった。

 すると、古沢徹監督はおもむろにパソコンを取り出す。「『いきなり何をするのかな?』と思った」という深谷たちをよそに、指揮官はある動画を再生した。それはメンバー入りの叶わなかった3年生たちが作成した“モチベーションビデオ”。1人1人が自らの抱えていた気持ちを吐露しながら、メンバーにエールを送る内容だったという。「それを見る前にも『試合に出られない3年生の冬を終わらせないためにも頑張ろう』という気持ちはあったんですけど、そのモチベーションビデオを見て、『本当にコイツらとまだサッカーをやりたいな』という気持ちが全員に出て、全員で泣きました」と深谷。「これからもずっと思い出というか、宝物になっていくと思います」(深谷)という最高の“サプライズ”でチームの一体感はさらに強固なものになる。
 
 加えてGKの深谷には果たしたいリベンジがあった。ちょうど1年前。相手は同じ新潟明訓高。舞台も同じビッグスワンでの選手権予選決勝。2年生守護神として全国切符を巡る一戦にスタメン出場したが、後半早々にCKから連続失点を許し、逆転されてしまう。一旦は追い付いたものの、試合終了間際に強烈なシュートを叩き込まれ、チームは決勝で敗退。「自分がキーパーとしての役割を1つもと言っていいくらい果たせなかったですし、本当に申し訳ないというか、力不足だった自分が悔しいです」とその試合を振り返った深谷。そこから意識も大きく変わった。

「去年が終わってからは誰よりもみんなに声を掛けて、残って練習してという形で、とにかく練習を本当に一生懸命やっていましたね」と彼について古沢監督が言及すれば、「アイツは何かムカつきます(笑) 練習で『良いコースに行った』とか『コレは絶対入った』みたいなシュートを弾き出したりするので、そこはムカつきますね(笑)」と独特の表現でキャプテンを評価するのは10番を背負う楜澤健太。そのことを伝え聞いた深谷は、「嬉しいですね。これからは止めた後とかにガッツポーズとかしてもっとムカつかせたいです。そうしたらシュートもうまくなると思うので」と笑顔を見せる。総体予選で無失点優勝を飾ったチームは、今大会も準決勝まで無失点を継続。「去年よりシュートを止められている実感はあって、これまでよりも安定した守備は1年間通じてできていたのかなと思います」という守護神は、確かな手応えを持ってリベンジのピッチへ飛び出した。

 今や“定番”になりつつある帝京長岡と新潟明訓の新潟ファイナルは、序盤こそ新潟明訓が押し込んだものの、帝京長岡は前半24分に楜澤が先制ゴールを奪うと、2分後に陶山勇磨が追加点。さらに31分にも木村勇登がヘディングをゴールへ突き刺し、前半だけで望外の3点リードを手にしてみせる。ただ、後半に入ってロングスローを投げる稲見直也の投入で、ビハインドを追い掛ける新潟明訓の圧力が強まる中、後半7分にはその稲見のロングスローの流れから、クロスに合わせた小竹直輝のヘディングが帝京長岡ゴールを襲う。ここに立ちはだかったのが深谷。「ボールが来たら止めようということだけ考えていたので、反応というよりは反射的に体が動いた感じ」とワンハンドでボールを弾き出すと、その直後のCKもゴール前の混戦から打たれたシュートに、体全体を投げ出してファインセーブ。「去年の決勝はCKで2本やられたので、本当にCKはこの1年で安定した守備を見せられるように練習してきた」という成果をこの大舞台でしっかり披露する。

 圧巻は後半36分。4-0と点差が開いた終盤に帝京長岡はPKを与えてしまう。嫌な空気が流れ掛けた中で、「ずっとアイツを見てきたので、『止めてくれるんだろ』みたいな感じでした」という楜澤の予感は的中。自らの右に飛んだキックを、深谷は完璧なタイミングのセーブでストップする。「谷口(哲朗)先生がこれまでのプリンスの試合とかを見て、『あの選手はあそこに蹴る』ということを伝えて下さっていたので、『こっちに飛んでくるな』というのはわかった」という深谷は続けて、「『キター!』って感じでした。止めた後にみんな寄ってきてくれて、『これがキーパーの醍醐味なのかな』と思いました」とその瞬間を振り返る。終わってみれば総体予選に続き、この選手権予選も無失点での“完全優勝”。「去年の先輩にどうやって恩を返そうかと思った時に、今年しっかりとプレーして成長した姿を見せるということが一番の恩返しだと思っていて、今日は成長した姿を少しは見せられたと思うので、本当に去年の先輩たちに感謝したいです」というキャプテンは、愛知から駆け付けた家族の前で、最高のチームメイトと共に歓喜の“ラインダンス”へ身を委ねた。

 この日は同校が全国ベスト8に入った第91回大会のエースで、現在は新潟でプレーする小塚和季も応援に駆け付けた。そんな憧れの“先輩”を「カッコいいですね。オーラが違います!」と尊敬のまなざしで見つめていた深谷だが、当然目標が『小塚超え』であることは言うまでもない。「県大会を通過しただけでは自分たちの代も歴史に残らないので、小塚さんの代のベスト8という記録を塗り替えて全国優勝して、帝京長岡の歴史に自分たちの名をしっかりと刻みたいです」と言い切った深谷。明確に日本一を目指す新潟の実力派集団が、小塚も「あのGKの子は良かったですね」と認める守護神に率いられ、3年ぶりに全国の舞台へ帰ってくる。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2016
★日テレジータスで「高校選手権組合せ抽選会」生中継!「全地区予選決勝」も放送!出場校を総チェック!

TOP