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「選手が誤解することも…」ハリルの求心力をつなぎ止めた長谷部の功績

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サウジアラビアのラフプレーに対し怒りをあらわにするMF長谷部誠

[11.15 W杯アジア最終予選 日本2-1サウジアラビア 埼玉]

 チーム内にくすぶる火種は敏感に感じ取っていた。日本代表MF長谷部誠(フランクフルト)はバヒド・ハリルホジッチ監督について「監督は物事を全部、正直に話す」と、その人物像を評する。

 歯に衣着せぬ発言は、何度もメディアをにぎわせてきた。9月1日のUAE戦(1-2)では代表デビューとなったMF大島僚太が失点に絡み、「もう少し期待していた」「私のチョイスが悪かった」と辛辣にコメント。選手交代が遅かった10月11日のオーストラリア戦(1-1)後には「齋藤(学)や浅野(拓磨)のような経験がない選手ではプレッシャーに負けてしまうのではないかという不安があった」と吐露し、10月中旬のGK合宿では、守護神のGK西川周作が身長183cmであるにも関わらず、「現代フットボールでは190cmないと、良いGKとは言えない」と繰り返した。

 良くも悪くもストレートな物言いはメディアの前だけでなく、選手に対しても同様のようだ。「監督は誤解されやすい発言もあって、選手にもかなり直接言ってくるので、選手自身、誤解することもある」。そう認める長谷部は「これだけグイグイ引っ張っていくリーダーというのは、サッカー界に限らず今の日本に必要なのかなとも思う。志向の違う人と仕事をすることで成長するのかなと」と、理解に努めてきた。

 今合宿ではFW本田圭佑とハリルホジッチ監督の“確執”が取り沙汰された。11日のオマーン戦(4-0)後、「本田は試合のリズムが足りないということが確認できた」と、サウジアラビア戦での先発落ちを示唆した指揮官に対し、本田が「その意味を説明する必要がある。それが納得できるなら受け入れる。監督にはそういう義務がある」と反発。明らかな不協和音が生まれていた。

 合宿中、練習前のピッチで指揮官と長谷部が話し込む姿が何度も見られた。キャプテンを介してチームにメッセージを伝えたかったのか、長谷部が監督と選手の間の橋渡し役になっていた。「僕はどういう監督ともうまくできちゃうから」と笑う32歳は「みんなのベクトルが少し監督に行っているのかなと思った。みなさん(報道陣)もそうだと思うけど」と、選手の意識が監督に向かっていることの危うさを感じていた。

「監督は選手にストレートに話すので、誤解されることも言う。若い選手には『考えの違う人と付き合うことで成長する』と、そういう話もした。チームが成長するには信頼関係が大事だから」。指揮官の求心力をつなぎ止め、チームを一つにまとめようと苦心する日々だった。すべてが解決されたわけではない。しかし、その存在の大きさをあらためて感じさせる11月シリーズとなった。

(取材・文 西山紘平)

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