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「東京五輪への推薦状」第28回:ブレイク間近。広島の10番・山根永遠がプロ入りと代表入りをダブルで狙う

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ゴール量産中のサンフレッチェ広島ユースFW山根永遠

 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 開催中のJユースカップにおいて2位とダブルスコアの差を付けて得点ランキングトップを走るストライカーがいる。サンフレッチェ広島ユースの10番、山根永遠だ。「ずっと呼ばれたいとは思っているんですけど」と言うように、これまで日本代表のメンバーリストにその名前が載ったことはない。ただ、最近の充実ぶりを観ると、そろそろ声が掛かってもおかしくないだろう。

 広島ユースを率いる沢田謙太郎監督は、そんな山根について「もともと身体能力はある。スピードがあって、テクニックもあり、体の強さもある。(ルーズボールへの)反応の良さもあるし、ヘディングも強い」と、そのポテンシャルを高く評価してきた。一方で、ここぞのゴールチャンスを逃してしまうようなストライカーとしての勝負弱さがどこかにあったのも事実で、決め切れない選手という印象もぬぐえなかった。それがどうやらちょっと変わってきている。

 たとえば、準決勝の松本山雅U-18戦の1点目(チームの3点目)の場面。沢田監督は瞬間的に「『外れるかな』と思った」と言う。FW満田誠から出てきた強めのパスを、狙った位置にコントロールしながらシュートモーションに入る。流れるような動きに違和感はなく、スムーズに放ったシュートは綺麗にゴールネットを揺らした。本人も「落ち着いて打てた」と語る一連のモーションは、ストライカーとして一皮むけたことを強く感じさせるものだった。

 元より「自分が点を取って勝てたら最高です」と語るストライカー気質の持ち主。これまでは点を取りたいという思いが先走ってミスになることも多かったが、そのバランスが取れてきたのだろう。Jユースカップではここまで8得点と爆発しているほか、高円宮杯プレミアリーグWESTでも中断前まで3試合連続得点と乗りに乗っている。進路は未定だったことから、Jユースカップは「就職活動として、プロになる選手として」(沢田監督)という部分を意識させて臨んだ舞台だが、しっかり結果を残してみせた。

 早生まれのため来年から新たに発足する新生U-18日本代表の資格もあることから、その視界には日の丸も入ってきている。「代表は意識しています。呼ばれたいと思ってもなかなか呼ばれなかったけど、こういうところで(代表スタッフの)目に止まってくれれば」と強く願う。そのために意識しているのは「たくさんチャンスをを作ってその中で点を取って、しっかりハードワークする」こと。それは広島ユースの3年間で積み上げてきたものの延長線上にある。

 まずは11月19日のJユースカップ決勝戦。難敵・FC東京U-18を相手に、プロ入りする選手として、また日の丸を付ける選手として相応しい力があることを見せ付けることを誓う。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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