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[MOM407]専修大FW柳育崇(4年)_重要な初戦で3度ネット揺らしたサッカー界の“二刀流”選手

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オウンゴールを含め、3得点に絡んだ専修大FW柳育崇(4年=八千代高)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.7 全日本大学選手権1回戦 専修大3-2日本文理大 味フィ西]

 野球界では北海道日本ハムファイターズの大谷翔平が、投手と野手を両立する“二刀流”で活躍している。サッカー界でも野球ほど大きな違いはないが、守備を本職とするディフェンダーと、攻撃を主とするフォワードを両立しようとしている“二刀流”選手がいる。専修大FW柳育崇(4年=八千代高)だ。この日、フォワードで2得点を記録し、センターバックではオウンゴールを記録してしまったが、3度ゴールネットを揺らし、存在感を示した。

 この日、2つのポジションでプレーした柳は、高校1年生までフォワード一本でやっていた。だが、「高校1年生の夏の合宿でフォワードを首にされて、『後ろだったらいいぞ』と監督に言われて…」。それからずっと大学3年までセンターバックをこなしてきた。だが、フォワードでやりたい想いは消えていなかった。すると今年、転機が訪れた。Bチームに落ちてしまったのだ。

「大学4年でBチームに落ちて、いろいろ進路を考えているときに、サッカーをすごい真剣に考える時間が長く続いていた。その中で自分が本当にやりたいことは何だろうと考えたときに、フォワードなのかなと思った」。柳の中で沸々と燃え上がる想い。柳は、その想いのまま行動に移すことを決意した。「フォワードとしての感覚もまだ残っていて、体もだいぶ動くようになってきたので、そこはチャレンジしてもいいかなと思った」。スタッフに「結果で示す」ことを条件にフォワードとして起用してもらえるよう直訴した。

 すると、Bチームで“再開”したフォワードで結果を残し、トップチームに復帰を果たした。だが、センターバックで先発出場した9月11日の後期初戦・筑波大戦の前半42分に負傷交代。その後、6試合を棒に振った。それでも、復帰戦となった10月22日の第19節・流通経済大戦でフォワードで先発出場すると、開始早々の2分にゴールという結果を示した。その後、チームはなんとかプレーオフを勝ち抜き、インカレの出場権を得た。「悔し部分もあった。インカレで挽回しようかなと」。その気持ちを胸にこの日を迎えた。

 今季の関東大学リーグでチームトップの6得点を挙げた柳は、フォワードで先発出場。「トーナメント初戦でみんな堅さもあると思った。だからフォワードの自分がその堅さを取るためにも得点が大事だと思った」と語るように、前線でターゲットとなり、右SB飯田貴敬(4年=野洲高)のクロスに体を投げ出すなど、貪欲にゴールを狙った。すると、前半38分にMF中山克広(2年=麻布大附高)のパスをPA中央で受けると、冷静に右足で流し込み、先制点。さらに1-1の同13分に飯田のクロスを右足ボレーで合わせ、この日2点目で日本文理大を突き放した。

 FW岸晃司(1年=川崎U-18)が交代で入った後半22分に、柳はポジションをセンターバックに変える。すると、同33分に相手のクロスに飛び込んだ柳が、自陣ゴールネットを揺らしてしまい、オウンゴール。「ハットトリックしてしまった。軽率なプレーで失点してしまった。あの失点から流れも悪くなった」と試合後は明るく語ったが、その時はさすがに「やばい」と感じたという。それでも、専修大は後半41分に岸が勝ち越しゴールを決め、3-2で逃げ切った。

 チームメイトに助けられ、初戦突破できたことにホッとした表情をみせる柳。今大会の目標を聞かれると、「もちろん優勝です」と堂々の宣言。だが、インカレの舞台は個人としても、まだ決まっていない今後へのアピールの場でもある。「本当は(ポジションを)1つに絞れるだけの能力があれば一番いい。でも、それも自分の長所かなと思う。自分的にも進路が懸かっているので、一戦一戦を大事に戦っていきたい」。そう意気込む“二刀流”の柳が、攻守でチームを引っ張り、専修大を2011年大会以来の優勝へ導く。

(取材・文 清水祐一)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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