beacon

「嬉しい驚き」も!先発11人全て3年生以下の順天堂大が繋いで、攻めて、関東勢対決制す!

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半40分、順天堂大は1年生FW浮田健誠(18番)が決勝ゴール

[12.10 全日本大学選手権(インカレ)2回戦 順天堂大 2-1 慶應義塾大 味フィ西]

 大学サッカー日本一を争う第65回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は10日、2回戦を行い、関東勢対決となった順天堂大(関東4)対慶應義塾大(関東6)戦は1年生FW浮田健誠(柏U-18)の決勝点によって総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント(8月)準Vの順大が2-1で勝った。順大は12月12日の準々決勝で阪南大(関西1)と戦う。

 今年、関東大学1部リーグでの対戦は慶大の2戦2勝。だが、冬の決戦は先発11人全て3年生以下の順大が逆転勝ちした。均衡した序盤を過ぎると、順大が個々のテクニックと連係によって慶大のプレスを剥がす回数を増やしていく。総理大臣杯で4戦連発を記録した注目ルーキーFW旗手怜央(1年=静岡学園高)がバイタルエリアでボールを収める順大は10分、浮田とのワンツーによって右サイドを打開した右SB柳澤亘(2年=八千代松陰高)が切り返しでさらにDFを外して決定的なクロス。34分には、前半半ば頃から違いを生み出す存在となっていたボランチ・名古新太郎(2年=静岡学園高)が鋭いターンからドリブルで持ち込んで強烈な左足シュートを打ち込んだ。

 慶大はこの一撃をGK上田朝都(1年=横浜FMユース)のファインセーブで逃れたものの、前半は押し込まれる時間帯が続いた。奪ったボールを意図的に繋いでいたほか、順大の不用意なパスを高い位置で引っ掛けていたが、風下ということもあって我慢の展開。千葉内定の右SB溝渕雄志(4年=流通経済大柏高)がインターセプトから一気に前線へ駆け上がろうとするシーンや、絶妙なトラップから前を向いたFW渡辺夏彦(3年=國學院久我山高)がドリブルで切れ込むシーンもあったが、ゴールに近づく前に潰されて攻めきることができていなかった。

 それでも慶大は37分、39分と敵陣で獲得したFKからMF加瀬澤力(4年=清水東高)が好キックをCB豊川功治(4年=千葉U-18)やCB宮地元貴(4年=桐蔭学園高、名古屋内定)の頭へ通して順大ゴールを脅かす。そして45分にセットプレーから先制点を奪った。カウンター攻撃によって左CKを獲得した慶大は、加瀬澤が右足で中央へ入れる。GKが弾いたボールにファーサイドで反応した溝渕が抑えの利いた右足シュートをゴールへ突き刺してリードを奪った。

 慶大の須田芳正監督は「随所随所、いいパスワークで我々がボール持った時間帯もあったし、全体的にそうだったけれど、特に前半はウチらのペースだったと思います」と振り返る。豊川の鋭い潰しや相手のドリブル突破に対する対応の上手さ、宮地の存在感あるプレーも光っていた。一方、ビハインドを負って前半を折り返した順大だが、ゲーム主将のCB坂圭祐(3年=四日市中央工高)が「リーグ戦でも慶應には2敗しているんで、ある意味想定内っていうか。(ビハインドの状況には)そうなりたくないですけど、『仕方ないかな』くらいだった」と振り返ったように、慌てることなく後半をスタート。そして、その開始直後に同点に追いつく。4分、旗手が敵陣中央で獲得したFKを名古がPA右寄りの位置へ蹴り込むと、柳澤がヘディングシュート。逆サイドのポストを叩いたボールを慶大守備陣が必死にかき出したが、ゴールラインを越えていたという判定によって1-1の同点となった。

 追いつかれた慶大がショートカウンターから渡辺のスルーパスやクロスまで持ち込んだのに対し、順大もMF室伏航(3年=市立船橋高)と名古のゲームメークからゴール前の局面をショートコンビネーションで打開してシュートを打ち込む。25分には慶大がカウンターから右サイドへ運び、最後は溝渕の折り返しを渡辺が右足で叩く。対する順大も直後、右サイドで粘った柳澤の落としを旗手が強烈な右足シュート。互いにチャンスを作り合ったゲームは終始、ボールを繋いで攻め続けていた順大が後半40分に決めた決勝点によって決着がついた。

 順大は攻撃参加していた柳澤が右サイドでボールを受けると、切り返しでDFを外してからラストパス。これをゴールエリアへ飛び込んだ浮田が1タッチでゴールへ流し込んだ。試合最終盤、慶大もサイド攻撃でチャンスを作り返し、46分には左クロスのこぼれから溝渕のクリーンヒットした右足ミドルが順大ゴールを襲ったものの、枠上へ外れてスコアは動かず。試合を通して巧さを見せていた順大が準々決勝へ駒を進めた。

 坂は「4年生がいなかった中で3年生や2年生、1年生と一人ひとりが自覚持って取り組んでいる。ハーフタイムの後、円陣組んだ後も『4年生のために』という言葉が出ていましたし、繋がっているんじゃないかなと思います」。この日、4年生の先発はゼロだったが、勝ち上がることで彼らの出場チャンスも増えてくるだけに、下級生たちは少しでもそれを実現する意気込み。坂は「最後、ポッポ君(FW佐野)が決めてくれれば良かった。『締めろよ!』って」と後半アディショナルタイムにGKと1対1のチャンスがありながらGKに止められた交代出場FW佐野翼(4年=清水商高)のプレーを笑顔で振り返っていた。

 総理大臣杯準優勝後は3年生の教育実習などもあって関東リーグ戦で苦しい戦いも経験。それでも乗り越えてインカレ切符を勝ち取ったチームはこの日、パスを繋いで、主導権を握って攻め続けて見せた。坂が「(総理大臣杯はカウンター中心だったが)後ろの方から見てて、『(攻撃面で)こんなに行けるんや』と。最後の方とか、得点の前とかも横からのクロスで惜しい場面もつくっていたので、嬉しい驚きでもありましたね」という内容の良いサッカーを展開した。そして決勝点の浮田が「4年生が試合に出ていなくても全力でサポートしてくれますし、メンタル的にも支えてくれていて一緒に戦っているという感じですね」と語るように一体感ある順大。関西王者の阪南大との準々決勝も突破して、夏実現できなかった日本一へまた一歩前進する。

(取材・文 吉田太郎)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

TOP