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[MOM421]筑波大FW中野誠也(3年)_ハットトリックも「欲を言えば、もっと取れた」、ゴールへの渇望

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インカレ初戦でハットトリックを達成した中野

[12.10 全日本大学選手権2回戦 筑波大5-0中京大 夢の島]

 ゴールに飢えている。筑波大(関東2)のエースFW中野誠也(3年=磐田U-18)は中京大戦でハットトリックの活躍をみせ、5-0の快勝に大きく貢献。しかし、試合後は満足した様子はなく。「3点取れたのは良かった。でも欲を言えば、もう1点、もっと取りたいという気持ちがあったので。そこは次につなげていきたいと思います」と貪欲に語った。

 今季の総理大臣杯やリーグ戦での悔しさがゴールへの渇望を生んでいる。今夏の総理大臣杯で筑波大は2回戦敗退。先制したものの立命館大に1-2の逆転負け。両チーム最多の6本のシュートを放ち、幾度も決定機を迎えていた中野だが決めきれず。チームの敗退に責任を感じていた。

 また2位フィニッシュのリーグ戦も不完全燃焼だったことが、しこりとなっていた。前期で7得点を挙げて迎えた後期リーグ戦は、開幕3戦連続で不発。続く第15、16節で連続ゴールしたものの、そこから3試合は再び沈黙。ラスト3試合で4得点を挙げたが、得点王にはあと1点が及ばなかった。

 最終節の明治大戦で得たPKを決めていれば、日本体育大MF高井和馬(4年=千葉SCユース)と並んで得点王となっていたが、痛恨のPK失敗。それが尾を引く形で計13得点に留まり、得点ランキング2位だった。FWとしての悔しさは日に日に自身のなかに積もっていった。

 そして迎えた冬の大学日本一決定戦・インカレ初戦。「あまり緊張しないタイプ」と話すFWだが、この日は違った。「インカレに出たことないですし、大臣杯では本当に自分が結構外して悔しい思いをしたので、それを全国の舞台で晴らすという想いがあって、ちょっと緊張してしまいました」と言う。

 それでも試合が始まると、緊張を感じさせない軽快な動きで相手を圧倒。開始8分には早くもネットを揺らす。左サイドからドリブルで仕掛けたMF野口航(3年=大津高)のクロスに合わせ、ファーサイドへ飛び込んでヘディングシュート。「ニアよりもファーかなというお互いの勘」で先制点を奪った。

 さらに前半40分には個人技で追加点。DF小笠原佳祐(2年=東福岡高)の長めのパスをコントロールした中野はボールを前へ進めると、PA手前で右足を一閃。「練習でもやっていた形」で自身2点目を決めた。

 2-0で迎えた後半10分にはカウンターからアシストも記録。右サイドから仕掛けた中野の折り返しをファーサイドへ上がっていたDF会津雄生(2年=柏U-18)が押し込み、3-0に突き放した。

 後半16分にはハットトリックを達成。MF戸嶋祥郎(3年=市立浦和高)が左サイドで冷静にボールキープ。GKの目前へ鋭いパスを送り、詰めていた中野が左足で流し込んだ。殊勲のFWは「戸嶋が本当に粘ってくれて。あれもお互いの意志が通じて押し込むだけなので、彼に感謝したいなと想います」と謙虚に語る。チームはその後に1点を追加し、5-0の快勝で準々決勝へ駒を進めた。

 頭で先制点を奪い、両足で得点を重ねてのハットトリックを達成。どこからでも点を取れることを全国舞台でも示した。筑波大の11番は「自分は“これで勝負”というのではなく、色々な形で取れると思っているので。そこに関してはさらに自信になったというか、そういうのはあるかなと思います」と胸を張る。

 結果を残した3年生FWについて、小井土正亮監督は「いつも取ってくれれば。リーグ戦ももうちょっと(優勝した)明治大に食らいついていけたと思うんですけど」と冗談を交えつつ、「彼も(インカレへ向けて)期するものがあるらしくて、練習から“やりますよ”という空気はあった。一番ホっとしているのは彼だと思います」と思いやった。

「“たられば”ですけど、最終節でPKを決めていたら、得点王とかチームは勝っていたとか、個人でも色々な想いをしてきて、そういう想いを本人が今日はみせてくれたなと。1点目の喜び方をみれば期するものがあったんだなと感じます」

 次戦の相手である関西大(関西4)には、ジュビロ磐田U-18で中野と2トップを組んでいたFW竹下玲王(3年=磐田U-18)がいる。ハットトリックする中野をスタンドから見ていた竹下は「やっぱり高校時代から、ああいうところは変わってないなと。さすがですけど、自分も負けてられないので。次はあいつより点を取って勝てるようにしたい」と力を込める。

 一方の中野は、筑波大のストライカーとして「彼には負けられないと思っています。ただ本当に中野vs竹下ではなく、筑波大vs関西大なので。そこで何が何でも筑波が勝つというプライドを持ってやっていきたいです」と誓った。

 かつてのチームメイトとピッチでの再会が実現する。リーグ戦や夏の悔しさを糧にたくましさ増すストライカー。全国制覇へ向けて、まずは3発発進。どこまでもどこまでも貪欲に、全ては筑波大のために中野はゴールを奪い続ける。

(取材・文 片岡涼)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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