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「やっぱり自分は自分」神戸内定の関西大GK前川、元代表の“父親超え”へ決意新たに

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2つの失点シーンの対応を悔やんだGK前川黛也(4年=広島皆実高)

[12.12 全日本大学選手権(インカレ)準々決勝 筑波大2-1関西大 浦安市運動公園陸上競技場]

 J1内定GKの学生最後の大会が終わった。来季のヴィッセル神戸加入が内定している関西大(関西4)のGK前川黛也(4年=広島皆実高)は、この日も好セーブを見せていたが、後半に2失点。試合後は反省の言葉が口をついた。

「最初は追い風だったので、自分たちの意図としてはその風を利用して押し込んでいこうというのがありました。ただ、その中で相手がしっかり対抗してきたこともあって、堅い感じになってしまったと思います」

 追い風の前半をこう着状態のままスコアレスで終えた関西大。迎えた後半、最後尾に構える前川は、“風向き”の変化を感じ取っていた。「相手がポゼッションしてきた中で、自分たちが食いつき気味なってきたのかなと」。悪い予感は的中する。「自分たちが食いついてできたスペースから、1対1の場面を2回連続で作られて、その2回目で失点してしまった」。前川は後半37分に中央を割られて筑波大(関東2)のMF三笘薫(1年=川崎F U-18)に決められた先制ゴールに対し、「食いつきの部分を修正できなかったところは自分の甘さだったかなと思います」と、未然に防げなかった自分を責めた。

 ただ、今大会の関西大は過去2試合とも先制を許しながら逆転勝利を収めてきている。想定外だったのは、次の1点も筑波大に生まれてしまったことだった。後半42分、MF戸嶋祥郎(3年=市立浦和高)から球足の長いスルーパスが出ると、受けたFW中野誠也(3年=磐田U-18)がカットインから左足を一閃。前川が懸命に手を伸ばすも、シュートには届かなかった。

「0-1の中で今までの試合を通して逆転で勝ってきているので、追加点を取られたのは敗因になっているし、あの状況でもっとディフェンスに対して(自分の指示で)ボールに行かせていたら、シュートに持っていかれることはなかった」

 前川が悔やんだ2つの失点シーンへの対応。関西大は後半アディショナルタイム3分にFW竹下玲王(3年=磐田U-18)が追撃の1点を挙げたが、1-2で終了のホイッスルを聞いた。

「1回生(第62回大会)の時はベンチにいたんですけど、こうやって試合に出るのは今回が初めてだったので、(負けて)悔しい思いはしたんですけど、一戦一戦すごく楽しかったですし、個人的にも色々な状況がありながらも自分の良さが出せたかなと思います」

 インカレをこう振り返る前川は「今まで特にユニバ(全日本大学選抜)では不安定なところがあったりして、でもこの大会でやっと自分の中での不安定さをクリアできました。このインカレでは安定して、なおかつピンチのところで防げたシーンも多くて、自分的にも成長したっていう実感をしています」と充実感をにじませながら話した。

 学生最後の大会を終え、これからは厳しいプロの世界が待ち受ける。前川は神戸への加入内定が発表された際、クラブ公式サイトを通じて「世界で活躍する選手になる」と大きな目標を語っていた。その第一歩として、まずはクラブでポジションを勝ち取る。「チームの方で試合に出ないと代表であったり、個人的な夢だった世界で活躍するっていうところに到底届かないと思うので、まずは神戸でしっかり韓国代表の選手(GKキム・スンギュ)と競って、試合に出られるようにやっていきたいです」。1年目から貪欲に定位置を奪いに行くつもりだ。

 広島などで活躍した元日本代表GK前川和也氏を父に持つ息子・黛也。プロ入り後は今にも増して、父の名が枕詞として用いられることが多くなるだろう。それでも前川は「比較されるのは仕方ないと思うんですけど、やっぱり自分は自分で前川黛也として活躍したいですし、1人の選手として見てもらいたいなと。比較されている中でも、一人前の選手として、前川黛也として見られるようにやっていきたいと思います」と力強く宣言した。

(取材・文 阿部哲也)
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