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[MOM2008]東海大仰星MF松山樹生(3年)_負傷を乗り越え、「ゲームに出したいと思わせる選手」が決勝アシスト!

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決勝点をアシストした松山

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 鹿島学園0-1東海大仰星 ニッパツ]

 負傷を乗り越え、戻ってきたMFが劇的な決勝ゴールをアシストした。東海大仰星高(大阪)は鹿島学園高(茨城)に1-0で勝利し、3回戦へ進出した。終了間際の後半40分に生まれた得点は、途中出場したMF松山樹生(3年)がGKを引き付けたパスからMF見野龍太郎(3年)が決めたものだった。

 試合後のインタビューで得点した見野が「あれは松山のゴールです」と言えば、松山は「あいつが走ってきてくれたからこそ生まれたゴールなので。あいつのもの」と謙遜する。それぞれが共通して振り返ったのは「信頼関係があってのゴール」だった。

 0-0の後半16分に松山は投入。「わくわくしました。ちょっと緊張したんですけど、自分がやってやろう」とピッチへ入った。指揮官から送られた「前で身体を張って、自分の能力を活かして、クロスにしっかりと中へ入って点を決めてこい」という言葉を体現するべく、果敢に仕掛けた。立て続けに二度好機を得たが決めきることはできない。

 それでも終了間際の40分に“三度目の正直”とばかりにチャンスはやってくる。MF新保隼人(3年)のパスから左サイドへ抜け出たのは松山。冷静に相手GKを引き付けての横パスを見野が決めた。これが決勝点となり、東海大仰星が1-0の勝利で3回戦へ駒を進めた。

 決勝アシストを果たした松山は「あの場面の前にシュートを打っても外していて、あそこもシュートを打とうと思ったんですけど、チームが勝つことを考えたら落ち着いてできました」と言う。得点欲しさに自らシュートを打つことも過ぎったが、あくまでチームの勝利を優先すると結果につながった。

 松山にとって、この冬は苦しい時間だった。東海大仰星の中務雅之監督が「夏場に頑張っていた」と言うほど、Aチームでの出場を目指して高校3年生のラストシーズンに励んでいた。そんな努力は報われ、今大会予選5回戦で初めて先発起用される。しかし開始5分で右足を痛めると、右足第二中足骨を亀裂骨折。負傷時は「アドレナリンが出ていたせいか」、あまり痛みを感じずにプレーを続けていたが、結果は亀裂骨折という酷いものだったのだ。「えっ……という感じ」と振り返るように、負傷が判明した瞬間に頭は真っ白になった。

 それでも指揮官からは「お前を使ったあの試合は良かった。怪我をしたのは仕方ないからしっかり治せ」と励まされ、はやる気持ちを抑えてリハビリに専念。仲間たちが全国切符を勝ち取ってくれることを信じて、まずは怪我を治すことに集中した。そして、チームは全国切符を手に入れる中、松山は12月上旬にようやく復帰。冬の全国大会へ間に合わせた。

 この日、松山を途中出場で起用した指揮官は「ああいう(決勝点の)場面で冷静に判断してパスを選択した、そういう人間性があり、ゲームに出したいと思わされるような選手」と評価を口にする。仲間たちが導いてくれた全国舞台で決勝アシストを記録したMFは「少しは恩返しできたかな」と微笑んだ。

 関西圏の私立大進学を希望している松山は、一般受験を控えている身。今も移動時間や宿舎での空き時間は単語帳を見るなど、勉強に充てている。全国大会を戦い、勉強もするという日々は簡単なものではないが、目の前のことに真摯に取り組む毎日は必ず未来につながるはずだ。

 あす3日には富山一高との3回戦が行われる。負傷を乗り越えてきたMFは「3年生にとってはどのチームも最後の大会。しっかり明日に向けて切り替えていきたい」と慎重に言いつつも、「次はゴールを目指したい。明日の試合はしっかりと決めたいです」と少しばかりの欲をのぞかせた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 片岡涼)
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