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長谷部誠、32歳にしてキャリアハイ…好調を維持するチームの顔になったワケ

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チームの好調をけん引するMF長谷部誠

 残留争いから欧州CL出場権争いへ。躍進を続けるフランクフルトにおいてMF長谷部誠の果たす役割はかつてないほど重要なものになっている。昨季はシーズン終了までなされなかった契約延長が、今季はウィンターブレイク突入前に行われたという事実がそれを何よりも物語っている。

 現地誌『キッカー』の平均採点では、50%以上を超える出場時間を保っている選手の中で長谷部を上回っているのはチームで2人しかいない。MF全体でも15位という高い評価を受けている。その活躍ぶりには、長谷部が32歳にしてキャリア最高のシーズンを迎えていると主張する現地メディアもいるほどだ。

 これまでの2年間も長谷部はフランクフルトで重要な選手だった。2シーズンでリーグ戦65試合に出場し、うち64試合が先発だったことからもそれは容易に伺える。とはいえそのユーティリティの高さゆえに昨季はフェー監督に右SBで起用されることが多く、都合のよい選手という位置づけになっていた。

 しかし、昨季終盤にコバチ監督が就任したことで状況は変わる。長谷部の戦術理解度の高さを評価したクロアチア人監督は、日本代表キャプテンを最も重要な選手の1人と見なしたのだ。

 序盤戦の長谷部はボランチとして起用されていた。リーグ開幕一週間前に行われたドイツ杯1回戦では途中出場となったものの、シャルケとの開幕戦ではアンカーを務め、その後2試合もダブルボランチの一角として先発フル出場。インゴルシュタット戦では疲労も考慮して出番がなかったが、続くヘルタ・ベルリン戦でも監督から声が掛かることはなかった。フライブルク戦ではアンカーとして先発復帰を果たすが、5バックを採用したバイエルン戦では後半途中からの出場となった。

 当時、コバチ監督は対戦相手に応じてシステムを変更していた。しかし、10月下旬に行われたドイツ杯2回戦インゴルシュタット戦で最適解を見つける。長谷部は3バックの中央に抜擢されたのだ。相手FWがボールをもらいに下がれば付いていき、背後に危険なスペースがあればカバーする、リベロ長谷部というコバチ監督の采配はハマった。チームはそこから公式戦3試合連続無失点を達成し、守備が安定したことでさらに順位を上げていった。

 長谷部のリベロ抜擢は小さくないサプライズであったが、実は昨季終盤にも長谷部は同じような役割を担っていた。ポジションとしてはアンカーだったが、DFラインの前で守備を安定させ、最終ラインに入って一番危険なスペースを消すということも少なくなかった。

「このポジションに慣れないように」と繰り返す長谷部だが、抜群の危機察知能力や広い視野でチームを統率する力、さらにビルドアップと長谷部の特徴がいかんなく発揮されているのは間違いない。

 第15節のボルフスブルク戦では出場停止の選手に代わって右WBとして出場し、PKを獲得してみせた。しかし、チームは15位に沈む相手に9試合ぶりの敗戦。守備陣の中央に「安全装置」としての役割を果たしてきた長谷部がいなかったことの影響も十分にあっただろう。

「個人的にはこのチームでCLとかELに出たいという気持ちもあって、そういうビジョンもあってここに残っている部分もある」と言う長谷部。しかし、欧州CLプレーオフ圏内となる4位でウィンターブレイクに入っても「今の勝ち点と順位は良いものであると思いますけど、忘れていけないのはつい半年までは降格の危機にあり、残留争いをしていたということ。この半年が良かったからってまたいつそうなるか分からない危機感もあります」と浮かれた様子はない。

 ただ、チームとして欧州を目指せるだけのポテンシャルがあることは証明できている。後半戦は研究され苦しむ試合も増えるだろうか、コバチ監督が編み出す戦術を長谷部がどれだけ体現できるかがひとつ大きなカギを握ることになるだろう。


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