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勝負を分けた戦術変更の綾…山梨学院、逆転で尚志を下す!

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山梨学院高(山梨)が後半の逆転劇で3回戦進出

[1.2 全国高校選手権2回戦 山梨学院2-1尚志 駒沢]

 山梨学院高(山梨)が後半の逆転劇で尚志高(福島)を振り切り3回戦へ勝ち進んだ。1月3日の3回戦では駒澤大高(東京A)と駒沢陸上競技場で対戦する。

 U-17日本代表のFW加藤拓己(2年)をケガで欠き、身上の粘りをもって耐え忍ぶゲームプランを選択せざるを得ない山梨学院。1回戦では1度逆転を許すも再逆転でゲームをものにした尚志。両者の対戦は、尚志の攻撃をいかに山梨学院が粘り防ぐか、が焦点だったといえる。

「前半から押されることを覚悟していました。技術も体力も相手の方が上なのはわかっていた。うちは走れるという部分だけでなんとか後半20分まで粘って、残り20分で勝負したかった」

 前半は無得点だったぶん、攻められながらも山梨学院のプラン通りであったことは安部一雄監督の言葉からも分かる。だが、尚志の中村浩二監督も手ごたえは感じていた。

「前半途中からサッカー的にはつなぐ、相手をはがす自分たちのサッカーはできていました」。その手ごたえが結果に結びついたのが後半7分だった。右サイドからMF影山諒(3年)が中央に進出し、ラストパスを受けたMF加野赳瑠(2年)が合わせて先制点をものにする。

 粘りが信条だった山梨学院がついに空けた穴。だが、ベンチはすぐに次の手を打った。

「失点した時間帯が早かったので、奪ったボールをロングボールでなく繋ぐことで押し上げていく形にシフトチェンジしました。それがハマった」(安部監督)

 失点から7分後の後半14分、左サイドから出たボールをFW藤原拓海(3年)が繋ぐ。これを途中出場のFW宮崎純真(1年)が、1回戦後「もう少し積極的にいきたい」と公言していた通りシュートを決め追いついてみせた。

 じつはこの同点ゴールまでの間、尚志ベンチは迷っていた。仲村監督が悔いを口にする。

「1点を先制した後、斜めにドリブルを仕掛けられるようになってボランチのスペースが空いてしまった時に改善策をうてなかったのが敗因です。ボランチをもう1枚入れて攻撃陣を下げれば1-0で逃げ切れるプランになったはず。ですが、攻撃的なスタイルでずっとやってきて、それを貫いた。自分たちのサッカーができていただけに決断が遅くなってしまった」

 尚志も自分たちの信じるサッカーで攻め続けていた。1回戦同様DF常盤悠(3年)の正確なキックは相手に脅威を与え続けた。だが、つなぐスタイルに変更したことで息を吹き返した山梨学院の攻撃は、ただ耐え忍んでいた前半とは明らかに違う「圧力」を持っていた。

 後半26分。左サイドを突破したDF森田和樹(2年)から前線に上がっていたMF小林友也(3年)へパスが通る。DFに詰め寄られるも粘った小林がゴールへボールを流し込み逆転。「小林はチームで一番運動量がある。アンカー的に守備に置いていましたが、点を取る場面ではボールを奪ったら(前へ)出て行けと」(安部監督)いう形での決勝点。苦しいチーム状況で選手権2勝目をもぎ取った。

「前半にも決定機があり、後半にも決定機があった。それをきっちり決めるのがうちのスタイル。でもそこで決めきれず、相手の粘りにあってしまった」という仲村監督は自分を責める。「自分の責任です」。チームの完成度は高かった。もっと“らしさ”を見せて今大会で尚志旋風を巻き起こす――そんな気持ちも強かったはずだ。だが「攻撃スタイルを貫かず、1-0、もしくは1-1からPKで勝つチームじゃないとこの大会は勝ち抜けない」とまた一つ重い経験を積んだ。

 先制ゴールから戦術を動かした山梨学院と変えなかった尚志。結果は山梨学院に軍配が上がったが、どちらが正解とは言い難い。まさに紙一重の判断で勝者と敗者は分かれる。選手権の魅力であり、怖さを、改めて見せつけられた一戦だった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)

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