[MOM2013]山梨学院FW藤原拓海(3年)_チームのためにあいつのために自分のために――走る!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 山梨学院2-1尚志 駒沢]
この試合で決勝点を挙げた山梨学院高(山梨)のMF小林友也(3年)は言う。「一戦一戦、チームの絆、一体感は強まっている」。同じ感覚は安部一雄監督も抱いているようで「一試合勝っても集中力は続いている」と言う。
現在の山梨学院のチーム事情を語る上で、FW加藤拓己(2年)の不在は外せない。U-17日本代表FWは、それほどまでに大きなチームのストロングポイントだった。だが、そんな大黒柱がいない状態で選手権2勝。ピッチ上の選手のプレーからは冷静でいつつも、「なんとかしよう」という必死さが感じられる。
その急先鋒といっていいのがFW藤原拓海(3年)かもしれない。加藤が不在の上に、1回戦で躍動したFW宮崎純真(1年)も足を痛め、この試合でスタメンは叶わず。急遽「初めて」(安部監督)というDF池澤飛輝(3年)をトップに据えるほどFW事情は苦しい。そんな中、3年生FWが背中でチームを引っ張った。チームは劣勢を想定せざるをえない。当然、攻撃チャンスは減る。
だが、奪えそうにないボールでも追う。味方のフォローが追いついてなくても競る。その献身性は「チーム一」という50メートル5秒8の快速もあいまって余計目を引く。
1回戦ではシュート0本で後半23分に交代した。だが、この日はスタメンフル出場でシュート1本を記録し、後半14分の同点ゴールをアシストした。
「自分の前でゴールが入るのは辛いです(笑)。結果にはこだわりたい。1試合目よりスプリント回数も増えているし、段々ゴールに近づいている感覚があります」
自身はFWとして、ゴールを奪ってこそチームに貢献したことになる、と考えている。だが、この2勝に彼の踏ん張りが間接的にではあれ、影響している気がしてならない。
爆発的なスピードは小学生時代から備わっていた。だが、山梨学院に進学後、その武器を攻撃のみにしか使っていなかった。
「夏の前まで自分は守備をしませんでした。それで夏明けに出場機会を失って。その後改めることで監督の信頼をもう一度取り戻したんです」
自分はメンタルが弱いという。80分間走り切った体力についても「3年…トップチーム…いやチームの中でも一番ないんじゃないか」という。だが、「ラストなんで。迷惑はかけたくない」。
もう一人の「タクミ」、1年後輩の加藤拓己とはホテルで同部屋だ。「同学年のように仲がいいんですよ。同じ名前ですけど僕は彼を『ゴリ』って呼んでます。でも彼は僕のことを『タクミくん』って呼んでくれます(笑)。あんな顔してカマチョ…かまってほしがりなんですよ」。部屋で話すことは「女の子のこととか(笑)」とりとめのないことばかり。だが、そんな気が置けない2人だからこそ通じるものがある。
「ラストはこいつと2トップを…と思ってましたけどケガをして。ただ、準決勝まで行けば分からない。あいつのためにも、そしてチームのためにもがんばりたいですね」
そしてもちろん自分のためにも。「みんな、だいぶ自信がついてきています。自分も最大限のスピードを活かして得点してチームに貢献したい」
もし現在結束が強まっている山梨学院がさいたまスタジアムへ行くとしたら――藤原拓海のゴールが決定的なピースになるかもしれない。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 伊藤亮)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2016
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この試合で決勝点を挙げた山梨学院高(山梨)のMF小林友也(3年)は言う。「一戦一戦、チームの絆、一体感は強まっている」。同じ感覚は安部一雄監督も抱いているようで「一試合勝っても集中力は続いている」と言う。
現在の山梨学院のチーム事情を語る上で、FW加藤拓己(2年)の不在は外せない。U-17日本代表FWは、それほどまでに大きなチームのストロングポイントだった。だが、そんな大黒柱がいない状態で選手権2勝。ピッチ上の選手のプレーからは冷静でいつつも、「なんとかしよう」という必死さが感じられる。
その急先鋒といっていいのがFW藤原拓海(3年)かもしれない。加藤が不在の上に、1回戦で躍動したFW宮崎純真(1年)も足を痛め、この試合でスタメンは叶わず。急遽「初めて」(安部監督)というDF池澤飛輝(3年)をトップに据えるほどFW事情は苦しい。そんな中、3年生FWが背中でチームを引っ張った。チームは劣勢を想定せざるをえない。当然、攻撃チャンスは減る。
だが、奪えそうにないボールでも追う。味方のフォローが追いついてなくても競る。その献身性は「チーム一」という50メートル5秒8の快速もあいまって余計目を引く。
1回戦ではシュート0本で後半23分に交代した。だが、この日はスタメンフル出場でシュート1本を記録し、後半14分の同点ゴールをアシストした。
「自分の前でゴールが入るのは辛いです(笑)。結果にはこだわりたい。1試合目よりスプリント回数も増えているし、段々ゴールに近づいている感覚があります」
自身はFWとして、ゴールを奪ってこそチームに貢献したことになる、と考えている。だが、この2勝に彼の踏ん張りが間接的にではあれ、影響している気がしてならない。
爆発的なスピードは小学生時代から備わっていた。だが、山梨学院に進学後、その武器を攻撃のみにしか使っていなかった。
「夏の前まで自分は守備をしませんでした。それで夏明けに出場機会を失って。その後改めることで監督の信頼をもう一度取り戻したんです」
自分はメンタルが弱いという。80分間走り切った体力についても「3年…トップチーム…いやチームの中でも一番ないんじゃないか」という。だが、「ラストなんで。迷惑はかけたくない」。
もう一人の「タクミ」、1年後輩の加藤拓己とはホテルで同部屋だ。「同学年のように仲がいいんですよ。同じ名前ですけど僕は彼を『ゴリ』って呼んでます。でも彼は僕のことを『タクミくん』って呼んでくれます(笑)。あんな顔してカマチョ…かまってほしがりなんですよ」。部屋で話すことは「女の子のこととか(笑)」とりとめのないことばかり。だが、そんな気が置けない2人だからこそ通じるものがある。
「ラストはこいつと2トップを…と思ってましたけどケガをして。ただ、準決勝まで行けば分からない。あいつのためにも、そしてチームのためにもがんばりたいですね」
そしてもちろん自分のためにも。「みんな、だいぶ自信がついてきています。自分も最大限のスピードを活かして得点してチームに貢献したい」
もし現在結束が強まっている山梨学院がさいたまスタジアムへ行くとしたら――藤原拓海のゴールが決定的なピースになるかもしれない。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 伊藤亮)
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