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[MOM2019]一条DF稲葉大典(3年)_主将の無念背負い…的確なカバーリング光る堅守

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最終ラインを統率したDF稲葉大典(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 山形中央高0-1一条高 西が丘]

 朴訥な男が声を張り上げた。キャプテンマークを巻き、一条高の最終ラインを統率したDF稲葉大典(3年)は後方からチームメイトを鼓舞した。前に出たがるタイプではない。「普段はあんまり喋らない。苦手です」と自負するが、試合中は観客の応援にかき消されぬよう、腹から声を出した。

「点は前が取ってくれると分かっていたので、後ろは守るだけだった」。80分間粘り強く守り抜き、無失点勝利の立役者になった。光ったのは「スピードが速いのでカバーリングが強み」と胸を張る“武器”。終盤は猛攻にさらされたが、裏への抜け出しを読み、身体を投げ出したブロックやDFラインの好連係で山形中央の攻撃をことごとく跳ね返した。

「おとなしい子なんですよ。本来、リーダータイプじゃない。今日はキャプテンがいないのでみんなが勇気付くようなプレー、ここ一番で止めるプレーを見せてくれた」。前田久監督は成長著しいDFに目を細め、「相手に気持ちよく抜け出させるシーンをつくらせなかった。ディフェンス面の粘りは評価したい」と守備陣の出来を称賛した。

 仲間の無念を背負った。CBでコンビを組むはずだったキャプテンのDF鈴木貫生(3年)がインフルエンザで欠場。前夜に39度の発熱で救急病院に運ばれ、宿舎で静養中。「あいつのために頑張ろうっていうのはありました」。試合前、鈴木からは「頼んだぞ」と激励のラインが届き、そのエールを力に変えた。

 一条は史上初となる3回戦進出を決め、3日に佐野日大高(栃木)と激突する。「勝ち進んでいったら(鈴木が)戻ってくる可能性があるので、そこまで勝てるようにチームみんなで頑張りたい」。歴史を塗り替えた1勝にも浮かれることはなく、「あしたもあるので今日の勝ち(を喜ぶの)はこの辺にしたい」とすでに気持ちを切り替えていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 佐藤亜希子)

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