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[MOM2020]正智深谷MF小山開喜(3年)_“最悪な状況”から抜け出す劇的PK決勝弾!

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重圧のかかる重要なPKを決めたMF小山開喜(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 関東一高1-2正智深谷高 浦和駒場]

 試合の勝敗を決するPKだった。1回戦の立正大淞南(島根)戦でも同点の場面でPKのキッカーを務めたが、今回は前半26分に退場者を出した上に、後半39分に同点に追いついた直後と、否が応でも緊張する場面。それでも正智深谷高(埼玉)のMF小山開喜(3年)主将は「全然緊張しませんでした」と強心臓ぶりを見せつけた。

 正智深谷は立ち上がりから関東一高(東京B)に主導権を握られ、前半10分にハンドからPKを献上。これをきっちり決められ、早々に先制点を許した。さらにアクシデント発生が襲う。MF谷口瑛也(2年)のプレーが危険だったとして、一発レッドで退場となってしまう。それでも、チームは崩れなかった。「1点ビハインドで1人いなくなって、サッカーとしては最悪な状況だったんですけど、みんながより一層団結して、10人でも絶対逆転するぞという思いはあった」。

 1点ビハインドで迎えたハーフタイムに、違う部屋で1人泣いていた谷口に「逆転してやるから待ってろ」と告げ、後半に臨んだ。1人少ない中、小山を中心に連動した攻撃を仕掛けた正智深谷は、このまま試合終了かと思われた後半39分に、小山の右CKから最後はDF金子悠野(3年)が押し込み、同点に追いつく。さらに後半アディショナルタイム2分に、FW上原翔汰(3年)のシュートが相手のハンドを誘発し、PKを獲得した。

 キッカーはもちろん小山。だが、県予選決勝、本大会1回戦でもPKを蹴っていたため、前日に小島時知監督と「明日もPKがあったらどっちに蹴ろうか」と話していたという。「県決勝と1回戦でどっちも左に蹴っているので、相手はそれも見ていると思うので、『逆に蹴れば入るんじゃないか』と(監督と)話していました」。

 ボールをペナルティーマーク上に置き、助走を取ると、主審のホイッスルが鳴リ響く。静まり返える浦和駒場スタジアム。小山が落ち着いた助走から右足で言われた通りゴール右に流し込むと、どっと大きな歓声が起きた。「ほんと、あれは快感です」。試合は2-1で正智深谷が劇的勝利。3回戦進出を決めた。

「小山が外すイメージはまったくなかったので、早くそれを現実にしてくれと見ていました。あいつがきっちり決めてくれて、さすがキャプテンだと思った」

 指揮官が全幅の信頼を寄せる正智深谷の主将は、選手権初勝利から2試合連続の逆転勝利も満足はしていない。「選手権でまだ先制点が取れていないので、前半からガツガツ行って先制点を取れるようにしたい。もっともっとみんなを喜ばせたいので、一致団結して、出ているやつが頑張ってゴールして勝てるように頑張っていきたいです」。すべてがビハインドの中、勝利を掴み取り、より一層チームは『一致団結』した。この勢いを止めることなく、正智深谷“旋風”を巻き起こしてみせる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 清水祐一)
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