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[MOM2023]佐野日大GK中村一貴(3年)_ビッグセーブ連発!劇勝呼び込んだ“栃木のブラボ”

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勝利の立役者になったGK中村一貴(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 米子北高0-1佐野日大高 西が丘]

 当たっていた。ピッチ上で最も輝いたのは佐野日大高(栃木)のGK中村一貴(3年)だった。集中力を切らさず、80分間を通してビッグセーブを連発。米子北高の猛攻からゴールを死守し、劇的勝利の立役者となった。

 前半15分だ。PA内左からFW崎山誉斗(3年)に蹴り込まれた至近距離のシュートに好反応。決定的な一撃を右手で弾き出し、窮地を救った。「正直全く覚えてない。反射的に体が動いた」という抜群の反射神経から生まれたプレー。「前半は11番(伊藤龍生)を抑えてセカンドボールを確実に拾おうという意識だった。後半もゼロで抑えれば必ずチャンスはくると思った。狙い通りですね」。“神セーブ”が流れを引き寄せ、押し込まれた前半を無失点に抑えた。

 猛攻にさらされた試合終了間際にもファインセーブを連発。後半31分には滞空時間の長いジャンプでハイボールを処理し、両手を伸ばして弾き出した。落ち着いたシュートキャッチを連発すれば、思い切りの良い飛び出しからのセーブも披露。34分には猛進してきた相手選手と接触。左目まぶたを腫らしながら、最後までゴールマウスを守り抜いた。

「身長が低い分、ジャンプ力とか反射神経が強みなので、ハイボールにはどんどん出ていこうと思って、前半から出ていった。キャッチをしたり、弾いたりする判断も今日はできていたのかなと思う」

 身長は176cm。サイズを補うために、筋トレでジャンプ力を強化。GKコーチが練習に顔を出すのは月に数回のみ。恵まれた練習環境ではないかもしれないが、自分たちで練習メニューを考え、試合の反省を生かしたトレーニングを取り入れている。

「たくましく成長してくれた。自分でトレーニングをしたり、後輩のGKを指導したりしてくれる」。海老沼秀樹監督は殊勲のGKの日頃からの姿勢に目を細め、「失敗しても前向きで、勇気を持って前に出られる」と選手としての魅力を語った。

 今夏、チームには崩壊の危機もあった。「守備から入るサッカー」を掲げる指揮官と「攻撃から入りたい」選手たちで意見が合わず、雰囲気が悪くなりかけていたのだという。今季は新人戦、関東大会予選と優勝を逃し、夏の総体予選も準決勝で矢板中央高に完敗(0-3)。話し合いを重ね、選手権予選からは「監督の言う、守備から入るサッカーをみんなが意識した」。ひとつになったチームが“全員守備”を徹底し、全国高校総体8強の米子北を撃破した。

 2試合連続の完封勝利。「県大会では自分が活躍する場面はなかった。全国の舞台で海老沼先生に恩返しできたらいいなと考えていた」と大舞台での活躍に胸を張る。目標とする選手はGKクラウディオ・ブラボ(マンチェスター・シティ)だ。「自分がゼロで抑えられたら負けることはない。後ろはゼロで抑えて前は点を取れるように、全員が守備から入って攻撃をして勝っていけたら」。3戦連続完封勝利へ、“栃木のブラボ”がゴールマウスに立ちはだかる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 佐藤亜希子)
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