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「桜者」、周囲の評価覆して再び舞う!佐野日大が後半AT決勝弾で初のベスト4進出!!

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後半アディショナルタイム、長崎達也の決勝点を喜ぶ佐野日大高イレブン

[1.5 全国高校選手権準々決勝 佐野日大高2-1駒澤大高 フクアリ]

 第95回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、ともに初の4強入りを狙う佐野日大高(栃木)と駒澤大高(東京A)が激突。後半アディショナルタイムにFW長崎達也(3年)が決めた決勝点によって佐野日大が2-1で勝った。佐野日大は1月7日の準決勝(埼玉)で前橋育英高(群馬)戦う。

 劇的ゴールでチームの歴史を塗り替えるベスト4進出。佐野日大の海老沼秀樹監督は「1プレー1プレーを一生懸命やって、ひとつのボールをひたむきに追った結果。頑張っていればチャンスはあるとずっと言い続けてきた」。指揮官が普段から口にするように、ひたむきに戦い続けた11人とベンチ、そして応援席が一体となった時に訪れた流れ。その流れに乗った佐野日大が劇的な逆転勝利を果たした。

 98年度以来18年ぶりの準々決勝進出を果たした佐野日大と2年連続で8強入りした駒大高との関東勢対決。ともに都道府県予選から堅守を特長として勝ち上がってきた両チームの戦いは、序盤から駒大高が圧倒的に押し込んだ。

 セットプレーだけでなく、時に流れの中からでも1トップのFW野澤陸(3年)を残して全員がPAへ戻るような場面のあった佐野日大に対し、駒大高は左SB村上哲(3年)と右SB高橋勇夢主将(3年)の両DFのクロスや縦パスなどから相手守備網をこじ開けにかかる。
 
 先発平均身長で7cm以上上回る駒大高のパワフルな攻撃に対し、佐野日大は海老沼監督が「球際で負けるな。駒大さんは強いから当たっても大丈夫だからどんどん競れ」という指示通りに競り合いで怯まずに身体をぶつけて相手に自由を与えない。

 上手く守備から試合に入っていた佐野日大が先に決定機を作る。8分、左クロスが中央の選手たちの頭上を越えてファーサイドへ到達。これをコントロールしたMF佐野拓海(3年)の右足シュートがクロスバーを叩いた。

 佐野日大はDF柴崎和三(3年)やDF福田一成主将(3年)が声を掛け合いながら集中力を切らさずに守り続ける。そして「監督の指示で前向きでボール奪ったら相手が間延びしているので、行けると思ったら追い越していこうと」というMF飯淵玲偉(3年)とMF小林拓海(3年)が相手ボールを引っ掛けると一気に前進。シュートやクロスまで持ち込もうとする。

 駒大高は守備陣のミスもあって不要なCKを与えるシーンがあった。佐野日大は左DF梅澤崚(3年)のプレースキックなどからゴールを目指すが、駒大高はCB佐藤瑶大(3年)が抜群の高さを発揮。コンビを組む1年生CB齋藤我空もスライディングタックルで相手の突破を阻むなど得点を許さない。

 逆に駒大高は前半39分には左サイドを突いたMF長井虎之介(3年)の折り返しをFW影山克明(3年)が決定的な左足シュート。後半2分には長井の左CKがゴールエリアへと抜けて齋藤が合わせる。だがこれは左ポストを叩き、こぼれ球を佐野日大DF梅澤にかき出された。対して、粘る佐野日大はカウンターが効果を発揮。後半12分に飯淵を起点とした攻撃から、最後は投入されたばかりのFW大熊啓太(3年)が粘って野澤が右足を振り抜く。15分にもカウンターから大熊が体を張って繋いだボールで抜け出した長崎が右足シュートへ持ち込んだ。
 
 駒大高は直後に初戦決勝点のMF米田泰盛(3年)を投入。すると21分、左サイドから攻めた駒大はMF栗原信一郎(3年)がファーサイドの米田へパスを通す。外側へ持ち出した米田が振り向きざまに右足を振り抜くと、ボールはゴール左隅を破って先制点となった。

 だが、佐野日大はすぐに同点に追いつく。26分、自陣右サイドからGK中村一貴が蹴り込んだFKを野澤、飯淵が頭で繋ぐと、最後は抜け出した梅澤が左足シュートを決めて1-1とした。駒大高は予選から通じて初失点。「(相手の得意なセットプレーから得点して)ダメージを与えられたと思います」と梅澤が振り返った佐野日大に対し、駒大はまた突き放すために攻撃にパワーを加える。だが、1-1として流れに乗る佐野日大は相手の攻撃を跳ね返し、逆にカウンターから勝ち越しのチャンスも作り出した。

 そして迎えた後半アディショナルタイム、佐野日大は磨いてきたものが堅守だけではないことを示すような決勝点。敵陣でボールを奪うと、右中間で前を向いた長崎がPAの大熊とワンツーを完結する。そして右足を振り抜くと佐野日大をベスト4へ導くゴールが決まった。指揮官が「奪って5秒以内、3本以内のパスで決めようとか。相手の守備の整う前に攻めようとか、いい続けて出せたのは評価してあげたい」と評した決勝点。堅守に加えて練習してきた攻撃面も発揮した佐野日大が準決勝へ駒を進めた。

 昨夏から守備重視の戦い方へ移行し、選手たちは守備的な戦いで我慢を強いられる時期もあった。だが、勝つために自分たちを信じて徹底し、戦い続けて掴んだベスト4だ。飯淵は「栃木県の掲示板とか5バック引いてただ守るだけと言われていて。でも、監督から内容より、勝ったチームは強い。世間に叩かれていても自分たちのサッカーを曲げるなという指示があった」。この日も押し込まれる時間が長かったが、自分たちのやるべきことを信じて戦い続けた佐野日大が周囲の評価を覆すようなベスト4進出。福田は「ベスト4で終わるんじゃなくて、まだ上に行ける可能性があるのでまた引き締めてやっていきたい」。桜色をスクールカラーとする「桜者」たちの戦い。この日歴史を塗り替えた佐野日大がさらなる上、「王者」を目指して、準決勝で前橋育英との隣県対決に臨む。

(取材・文 吉田太郎)
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