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「強豪校を倒したい」…東海大仰星MF大崎、幼き日の夢叶えるも準決勝で散る

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準決勝・青森山田戦では同点弾もアシストした東海大仰星MF大崎

[1.7 全国高校選手権準決勝 東海大仰星1-2青森山田 埼玉]

 強豪校に入るのではなく、強豪校を倒したい。幼い日に抱いた夢は一つ叶ったが、その先は続かなかった。東海大仰星のMF大崎航詩(3年)は準決勝で散った全国高校選手権を振り返り、「楽しかったし、この学校へ来て良かったと思いました」と言いつつも「本当に悔しい思いがあります」と唇を噛む。

 大崎は小学生のときにテレビで見た全国高校選手権に憧れた。「青森山田高などを見て、そこのチームに入るのではなく、こういうチームとやってみたい。大阪のどこかに入ろう」と誓ったという。全国の強豪校に入るのではなく、強豪校へ挑みたいと思った。

 時は流れ、大崎が大阪セントラルFCでプレーしていた中学2年時の2012年。東海大仰星高が全国高校選手権で初の8強入りを果たす。準々決勝で星稜高に1-1(PK4-5)で敗れたが、その戦いぶりは14歳だった少年の胸に強く刻まれた。「東海大仰星の選手を見ると、中学のときの所属がG大阪ユースなどではなく、街クラブの選手が多くいて、それでも星稜相手にPK戦までもつれ込んだり、履正社高と競り合っていた。そういうチームに入って、強豪校を倒したいと感じました」。小学生のときに抱いた想いは確信となり、東海大仰星への進学を決意した。

 希望通りに進学したが、高校選手権への出場は簡単ではなかった。大崎の1、2年生時は出場できず。最上級生となった今年は「史上最弱」と言われ、総体予選では府3位。それでもへこたれることなく、努力を重ねると、徐々に結果はついていく。近畿高校選手権で優勝し、大阪府1部リーグを制覇。参入戦も制してプリンスリーグ関西昇格を決めた。勢いそのままに4年ぶりとなる全国高校選手権への出場権を獲得。今大会では3回戦まで3戦1失点で戦い抜き、準々決勝では前回王者・東福岡高に1-0で撃破した。

 大崎は東海大仰星のボランチとして、夢だった選手権の舞台に立っただけでなく、東福岡高を撃破したことで「強豪校を倒す」という幼い頃からの目標も成し遂げた。そして迎えたこの日、夢の先となった準決勝・青森山田高戦。再び強豪校へ挑むチャンスはやってきた。

 0-1とされた後半26分には大崎のクロスから同点弾。左サイドから「青森山田のDFの状況を考えて、ファーサイドが空いてくるのはわかったので、そこに誰か分からなかったですけど、黄色のユニフォームが見えたので上げてみようと思って上げました」とクロスを上げると、ファーサイドのMF松井修二(3年)がボレーを決めた。しかしチームは前半終了間際に2失点目を喫すると、1-2の敗戦。

 後半終盤には大崎にも決定機がやってきたが決めることはできず。ボランチとして攻守に奮闘したMFは「僕たちにもチャンスもありましたが、最後は僕が決められなかったけれど、青森山田は高橋くん(高橋壱晟)が決めた。技術の差や冷静さが勝負を分けたかなと思います」と悔やむ。「あれを決めていたら同点で、泣いていたか笑っていたか分からない。この試合は僕の責任だと思います」。

 反省の弁を続けたMF。それでも悔しさの中には「やりきった」という清々しさもあった。試合後の東海大仰星のロッカールームでは「出し切った」と口にする選手が多くいた。大崎は「チーム立ち上げ当初は勝つことができなくて、そういったチームが最後に自分たちで話し合いながら、監督にも色々言われるなかで、チームとして一回りも二回りも成長して、全国ベスト4という結果を出せたのは自信になると思います」と胸を張る。

「試合後には『出し切った』と言っている声が聞こえてきて。出し切らないで負けるより、出し切って負けたほうが絶対に気持ちがいい。結果は負けですが、僕らみたいなそんなに一人ひとり上手くないチームが東福岡をなんとか倒して、ここまで来れたのは自信になりましたし、楽しかったです」

 後輩たちへ向けては「個人の能力だけでサッカーは勝敗が決まるのではない。最後まで身体を張ったり、最後の走らないとダメなところで走ることができる選手が多くいるチームが勝ち上がると思う。また一からのチーム作りになりますけど、最後にまたこの舞台に戻ってこれるように、しんどい部分もあると思いますがそこに屈することなく、ここまで戻ってきてほしい」とエールを送った。

 東海大仰星がみせた快進撃に心躍らせ、大崎のような道を選ぶ少年がどこかにいるかもしれない。強豪校に憧れる者と、強豪校を倒す姿に憧れる者。夢追う姿はどちらも勇ましく美しい。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 片岡涼)

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