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青森山田が「失点しない」特長を世界でも発揮して0-0ドロー!ナイキアカデミー指揮官も「ベリーグッド」の評価

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青森山田高CB橋本恭輔(右)が相手アタッカーの突破を阻む

[1.18 練習試合 青森山田高0-0ナイキアカデミー セント・ジョージズ・パーク]

16年度の高円宮杯プレミアリーグと全国高校選手権で2冠を達成した青森山田高(青森)が18日午後、イングランド代表の本拠地であるセント・ジョージズ・パークでナイキアカデミーとトレーニングマッチを行い、0-0で引き分けた。
 
「ベリーグッド」。青森山田の評価について尋ねられたナイキアカデミーのジョン・グッドマンヘッドコーチは第一声でそう賛辞を送った。「(良かった部分は)組織力。チームでやるという連係が上手くいくチーム。そして負けん気が強いなと。こっちの身体が大きいというところがそんなにアドバンテージにならなかった」

 身体の大きさ、厚さは年上の選手たちの多いナイキアカデミーの方が上。だが、青森山田は「個人的には身体の強さでは負けたくないというのがあったので、負けないように意識していました」というDFリーダーCB橋本恭輔(3年)中心に球際の部分で健闘し、また相手のプレスを掻い潜ってサイド攻撃から決定機もつくり出した。今月9日の選手権優勝後に優勝報告会やテレビ出演などで十分に身体を動かせていないこと、また長距離移動の影響もあったか、終盤の走力で差を生み出すまでは至らず。それでもオーストラリア代表MFトム・ロジックやガーナ代表FWデビッド・アッカムらを輩出している“プロ予備軍”相手に互角以上の試合を見せた。

 プレミアリーグ優勝チームとして今回のイングランド遠征を行っている青森山田は4-5-1システム。GKが坪歩夢(2年)で4バックは右SB小山新(3年)、CB橋本、CB工藤聖人(3年)、左SB三国スティビアエブス(3年)。中盤はMF住永翔主将(3年)をアンカーにシャドーの位置が住川鳳章(3年)と佐々木快(3年)、右MF嵯峨理久(3年)、左MF小堀雄大(3年)、1トップは全国高校総体と全国高校選手権得点王のFW鳴海彰人(3年)が努めた。選手権優勝の先発メンバーではともにプロ入りしたGK廣末陸(3年、FC東京)とMF高橋壱晟(3年、千葉)、そしてMF郷家友太(2年)、CB小山内慎一郎(2年)が不在。それでも同大会優秀選手の住永、橋本、三国、鳴海らがこの日の先発に名を連ねてチームを引っ張った。

 ナイキアカデミーは立ち上がりからハイプレスを敢行。だが、青森山田は相手指揮官から「球回しが良かった」と評されたGK坪やDFラインの選手たちが素早く、正確にボールを繋いでそのプレスを剥がしていく。また小山からオープンスペースを狙う鳴海へいい形でパスの入るなど、前に出てくる相手の背後を狙った配球も使い分けて攻めた青森山田は12分に鳴海が無回転ミドル。徐々に住永や住川が前を向くシーンを増やした青森山田はサイド攻撃からナイキアカデミーゴールを脅かす。21分には三国が左サイドを単独突破してクロスを放り込み、30分には素晴らしいターンで前を向いた鳴海が右サイドを駆け上がった小山へ展開し、そのクロスのこぼれを小堀が左足で狙った。

 守備面では鳴海や佐々木、嵯峨のプレスから相手のミスを誘発。青森山田にもミスが出てカウンターを食らうシーンが幾度かあったが、そこは橋本や小山、三国が対人の強さを発揮し、選手権では控えだった工藤が出足鋭いインターセプトで攻撃に繋げた。またGK坪の落ち着いたキャッチングも光る青森山田は後半7分に小山のサイドチェンジからオープンスペースを突いた小堀の折り返しを受けた三国が決定的な右足シュート。三国の突破や住永の展開、住川の個人技などで局面を打開した青森山田は決定的なクロスが相手のCBにクリアされてしまうシーンが続き、ミスもあってなかなか決定打を放つことはできなかったものの、それでも怯まずに戦い続けて相手に流れを与えない。

 青森山田は21分に小堀をMF永島卓徒(3年)へスイッチ。31分にGK坪が1対1を止めた青森山田は直後に坪と佐々木に代えて、GK飯田雅浩(1年)と左SB中山純希(3年)を投入。三国を1列前へ押し出した。だが、互いに運動量が低下してオープンな展開となった終盤、青森山田はゴール前で数的不利となる回数が増えてしまう。それでも相手のミスと飯田のファインセーブなどで難を逃れた青森山田は逆に43分、小山の右クロスがPAの鳴海に通る。青森山田ベンチが一瞬沸いたものの、決定的なシュートは枠上へ。その後、FW黒田凱(3年)、CB新村隆司(3年)、右SB新井健太郎(3年)を投入した青森山田は得点こそ奪うことができなかったものの、無失点で切り抜けて0-0で引き分けた。

 守備面での奮闘光った橋本は「DFなので、無失点には毎試合こだわっているので無失点で行けたのは良かったと思います」と納得の表情。個人としての“欧州挑戦”については「やっているうちに楽しくなって。通用しないところもあったので自分の立ち位置も分かりました。対人だったり、身体の強さは自信持ってやっていたので、そこはもっと極めて、競り合いやビルドアップをもっとやれるようにしたいと思います」と振り返った。慣れない粘土質のピッチで90分間、“格上”との真剣勝負を経験。卒業後、大学を経由してプロを目指す選手たちにとって間違いなくプラスになるはずだ。

 今回のイングランド遠征で青森山田はGK以外は3年生のみで臨んでいる。住川は「3年生が引退後にこうやってできるのがありがたいことなんで、欲を言えば勝ちたかったんですけれども、最後の最後までゼロで抑えることができたのは良かった」。特にプレミアリーグの終盤戦やチャンピオンシップ、選手権決勝で見せた「失点をしない」戦い。チームがこだわってきたゴールを隠す、相手をPAに入れない部分などを“欧州プロ予備軍”相手でも見事にやり切った。

 2日後に地元のクラブチームと行うトレーニングマッチで今回の遠征は終了。上田大貴コーチは「日本の代表として、青森山田の代表として勝利して終わろう」と選手たちに呼びかけた。このチームで対外試合を戦うのはこれが最後。橋本は「3年間やってきて、どこのチームも選手権が最後なんですけれど、このチャンスを与えてくれたのは感謝しなければ行けないと思いますし、最後なんで悔い残らないように勝ちにこだわっていきたい」と最終戦での必勝を誓っていた。16年度の2冠王者、青森山田は世界相手に勝つ経験をして日本へ帰国する。

(取材・文 吉田太郎)

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