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仲間への感謝の念が4-0のスコアに。青森山田はチーム支えた伊藤マネがピッチに立ち、復帰のFW黒田がシュート連発

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後半39分、青森山田高は交代出場のFW伊藤翼(右)がMF住永翔とタッチ

[1.20 練習試合 青森山田高 4-0 ストラカンFF セント・ジョージズ・パーク]

 イングランド遠征中、トレーニングには参加していなかった“最後の男”が後半にウォーミングアップを行っていた。チームメートとボールを蹴り合い、ダッシュも。隣のピッチでは仲間たちが1-0で折り返した前半からリードを4点に広げていた。すると後半39分、青森山田高はDF三国スティビアエブス(3年)に代えて、ケガの影響で下級生時からマネージャーを務めてきた伊藤翼(3年)を前線へ送り出した。

 長くトレーニングをしていなかったために十分な働きはできない。だが、青森山田の一員として短時間でも全力で走り、球際では身体をぶつけて相手のミスを誘おうとした。また、最前線では同じくケガの影響で今回のイングランド遠征まで半年間実戦から離れていたFW黒田凱(3年)が後半20分からプレー。2-0の投入直後からチームメートたちはケガを乗り越えてきたストライカーに点を取らせようとボールを集めていた。その思いに応えるように黒田は相手の背後を狙い続け、シュートを連発。決めることはできなかったが、2日前の約1、2分間だった復帰戦から出場時間を大きく伸ばして25分間走り切った。

 三国は「普段翼はマネージャーでサッカーとかしないんで、自分たちのサポートしてもらっていて、(今日)自分と同じピッチに立つことはできなかったんですけど、外から見ていて一生懸命にやっていたので。この3年生で最後試合できて良かった」と語り、MF嵯峨理久(3年)は「翼は1年の時に復帰もしたんですけどなかなかやれなくてマネージャーに回ったりだとか、凱も(パフォーマンスが)良い時期に怪我してしまって選手権とかでマネージャーやったりして苦しい部分もあったんですけど、最後しっかり2人を出してあげられて良かった。自分たちが恩返ししたいという気持ちがありましたね」。上田大貴コーチは試合前から出場時間の少ない選手たちのプレー時間を増やすことを明言していたが、選手たちの中には彼らがピッチに立ち、スコアをあまり気にすることなくプレーさせたいという気持ちがあったようだ。感謝の思いが4-0というスコアに繋がり、“選手”18人全員が笑顔でゲームを終えることに繋がった。

 試合前、各選手が最終戦への意気込みを語る中、将来指導者を目指す伊藤は自身が出場すると思っていなかったこともあってか、「(コーチの)上田さんとか良く見つつ、試合も見つつ、勉強したいなと思います」と語っていた。それが突然ウォーミングアップ指令を受け、本当にピッチに立って青森山田での“ラストゲーム”を経験した伊藤は「びっくりしましたけれども、楽しかったです」と語り、コーチ陣と仲間たちに感謝。上田大貴コーチも「本当にナイスゲームで終われたのが良かった」と目を細めていたが、2冠王者・青森山田は青森にいるチームメートたちなど、縁の下から支えてくれた人たちへの思いも表現する最終戦での快勝劇だった。

(取材・文 吉田太郎)

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