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「正直負ける気がしなかった」。欧州でも無敗の青森山田2冠メンバーたちは今後大学、プロでライバルに

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MF嵯峨理久(右から2人目)が「負ける気がしなかった」と評した青森山田高イレブン。今後はそれぞれがライバルとして目標に挑戦する

[1.20 練習試合 青森山田高 4-0 ストラカンFF セント・ジョージズ・パーク]

 プレミアリーグと全国高校選手権を制して迎えたイングランド遠征。2冠達成後の優勝報告などに追われて練習は不十分で、慣れない海外の環境にも苦しんだ。大きな達成感の後、気持ちが切れていてもおかしくない状況だったが、青森山田高はここでも負けなかった。

 主将のMF住永翔(3年)は世界相手に力を示した仲間たちについて「いいチームと出会ったなというか。3年になっても腐らず、ここまで一生懸命にやってこれた。1年目からやらかし多い代というか、まとまれば強いけれど、個人個人でやりすぎたところもあった。でも、一年間で積み上げてきた能力と人の話を聞く能力というのは身についていると思うので、その成果がこうやって外国人相手でも日本人でもやれると示せたと思う」と語り、住永と同じく昨年からの主軸MF嵯峨理久(3年)は「(廣末)陸とか(高橋)壱晟とか(郷家)友太、(小山内)慎一郎とかいなかったですけれども、こういう3年生だけで選手が代わっても、自分たちのサッカーができましたし、最後に3年間戦ってきた仲間たちと勝てて終わったので良かった」と主軸数人が不在でも負けずに終わったイングランドでの2試合に胸を張った。

 左SB三国スティビアエブス(3年)が「翔には感謝しかないですね」と評した住永主将を中心にコーチ陣も、ライバル校の指導者たちも認めた元気の良さ。この日は3年生にとって青森山田での“ラストゲーム”ということもあって気持ちが前のめりになり過ぎたか、「誰よりも体幹やってきたじゃん!」という賞賛、鼓舞する声や接触プレーで倒れている選手へ「痛くねぇだろ、立てよ!」という厳しい檄する声だけでなく、相手のラフプレーに対する苦言も含めて一つひとつのプレーのたびにピッチの至る所から大声が飛んでいた。

 三国は「山田あるあるで楽しみ過ぎちゃって色々な言葉が出ちゃう」と苦笑い。その一方で、上田大貴コーチに試合前に指示された通り、100パーセント全力でプレーすることは最後まで変わらなかった。住永とMF住川鳳章(3年)を中心とした連動性高いパス交換でスペースを作り出し、そこを突いた選手にまたパスを通して相手選手に天を仰がせるようなシーンも。守備では点差が開いても最終ライン中心にゼロにこだわって無失点で終えた。

 文字通りの快勝で年代別代表選手などを輩出しているという強敵を撃破。嵯峨は「今、終わったから言えることなんですけれども、正直負ける気がしなかったです。チャンピオンシップから選手権に入って大会期間中は不安とか、優勝しなければいけないというプレッシャーとかあったかもしれないですけれども、終わってみたら負ける気しなかったなと思いました。心強い仲間もいましたし、自分もやってやろうという気持ちでやっていましたし、このチームは負けないと。今回も終わってみて改めて思いました」と明かしていた。

 「負ける気がしなかった」チームまでになった青森山田。今後はそれぞれが別々の進路で新たな目標へ挑戦する。関西大へ進学する右SB小山新(3年)は「山田で磨いてきた守備の部分だったり、キックの部分をどんどん出して大学っていう一つ上のステージになるんですけれども、その中でもいち早くスタメン取れるように頑張っていきたいなと思っています」と語り、仙台大へ進む嵯峨は「やるからにはプロサッカー選手というのは目標なので、たくさんのライバルと争うことになりますけれども、頑張っていきたいです。(明治大へ進む住永)翔だったり(順天堂大へ進学する三国)エブスは関東へ行きますし、(廣末)陸や(高橋)壱晟はプロへ行きますし、そういうライバルが結果を出すと自分もいい刺激になると思うので、自分も結果を出してみんなにいい刺激を与えるために戦っていきたいです」。目標とするプロになるためには青森山田の仲間たちも上回っていかなければならない。住永主将が評した「いいチーム」はこれからはライバルとして互いを刺激しあい、新たな競争を勝ち抜いて、次の目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)

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