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柴崎岳への興味は本当か?ラス・パルマス番記者が紐解く日本人選手獲得の“優先順位”

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ラス・パルマスへの移籍が噂されるMF柴崎岳

 1月のマーケットで最も注目を集めている日本人選手と言えば柴崎岳だろう。頻繁にスペイン行きの可能性が報じられているが、実情はどうなのだろうか? 現地でラス・パルマスの番記者を務めるイスキエルド氏が紐解く。

 冬の移籍市場が閉まるまであと1週間、ラス・パルマスはチームの競争力を引き上げるため、補強に動き続けている。クラブの方針はストライカー及び中盤の攻撃的選手を獲得することにあり、カレンダーが2月となるまでに少なくとも3選手が到着する予定だ。そしてその獲得候補の中にはご存知のように、鹿島アントラーズに所属する日本代表MF柴崎岳も含まれている。

 ラス・パルマスが、柴崎に興味を持っているのは事実だ。獲得の可能性が生まれたのは代理人から売り込まれたためだが、その逆オファーを受けた欧州のクラブの中で、ひときわ強い興味と関心を掻き立てられたのがラス・パルマスだった。

 ラス・パルマスが柴崎に興味を抱いた最たる理由は、彼が現在求めているタイプの選手であるためだ。クラブはこの冬、戦力に数えられないとの理由でMFタイロンをテネリフェにレンタルで放出し、またMFアスドルバル・パドロンとの契約を解消。その代わりにチームの競争力を上げられる中盤の攻撃的選手を探しているが、柴崎はその条件を満たす選手の一人だった。

 またもう一つの理由にあげられるのは、柴崎がアジア市場を開拓するきっかけとなれる存在であるため。しかし、ただの金目当てと勘違いしてはいけない。ラス・パルマスは以前からほかの大陸で名を売ることを目指していたが、そのためであればどんなアジア人選手でも構わない、というわけではなかった。例えば昨季には、広州恒大との契約を解除した中国代表FW董学昇の売り込みがあったが、求める水準の能力を有していなかったために契約を結ぶことはなかったのだから。

 ラス・パルマスにとってアジアでの知名度獲得は重要なことだが、ただ金のためだけに柴崎獲得を検討しているわけではない。クラブが求めるのは、エイバルのMF乾貴士のように、ピッチ上でも成果を挙げられるアジア人選手であり、柴崎にはその能力があると見込んだのである。

■柴崎の“優先順位”と獲得候補者たち

 さて、ラス・パルマスが柴崎に興味を持っているのは事実だが、彼以上にプライオリティーを置く獲得候補も存在する。26日にはハンブルガーSVで出場機会を失っていたMFアレン・ハリロビッチのレンタルでの加入が決まったが、クラブはウエスト・ハムFWジョナタン・カジェリの獲得にも躍起となっている。カジェリを引き入れるためには同じ人物が代理人を務めるフィオレンティーナのMFエルナン・トレドもセットで獲得する必要に迫られているわけだが。また実現の可能性は限りなく低いが、カナリア諸島出身のパリSGのFWヘセ・ロドリゲス獲得もあきらめていない。

 もしラス・パルマスが柴崎を獲得するとして、問題となるのは三つしかないEU圏外枠となるだろう。クラブはアルゼンチン人FWセルヒオ・アラウホをAEKアテネに移籍させたが、それによって空いた一枠はその同胞トレドのために使う予定となっている(カジェリもアルゼンチン人だが、こちらはイタリア国籍も保持)。柴崎が加入するのであれば、EU圏外枠のもう一枠を占めるアルゼンチン人、MFマテオ・ガルシアの去就次第となるだろう。

 サイドを主戦場とするマテオはラス・パルマスで満足な出場機会を得ておらず、チームを率いるキケ・セティエン監督も「彼にとって最善であるのは、退団かレンタル移籍で成長を続けることだろう」と公言する。つまり焦点は、マテオとラス・パルマス双方の意思となる。マテオが去るために柴崎を獲得するか、それとも柴崎を獲得するためにマテオが去るか、だ。

 冬の市場閉鎖まであとわずかだが、ラス・パルマスはこの差し迫った状況にも、実際に柴崎を獲得するかどうかを“焦らず”検討していく方針のようだ。日本人選手がリーガへの適応に苦労する、時間がかかるというのは、ここスペインで定説となっている。だからこそハリロビッチ、カジェリ、ヘセのように即座に獲得すべき選手とは扱われていない。ラス・パルマスにとって柴崎が歓迎すべき存在であることは間違いない。だが、現時点においては、獲得の優先順位で他を下回っている。

 しかし、それでもラス・パルマスは柴崎の実力を評価している。少なくともチームの競争力を上げられる選手と考えていることは、紛れもない事実だ。ここから市場が閉まるまでの間、ラス・パルマスがどのような動きを見せていくのかを予想するのは難しい。けれども2月を迎えて、黄色いユニフォームに袖を通した柴崎の姿を目にする可能性は、決して低くはない。

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