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レスターはリーズから学べるか?24年前にも優勝直後に降格争いに巻き込まれたチームがあった

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レスター・シティはリーズから学べるか

 日曜日のプレミアリーグでマンチェスター・ユナイテッド相手に0-3で完敗を喫したレスター・シティに昨シーズンの王者の面影はなかった。ここ4週間だけで昨シーズン丸々1年間で喫した以上の敗戦を喫し、現在順位表では降格圏からわずか1ポイントの位置につけている。焦りを見せるクラブは、クラウディオ・ラニエリ監督への全面的な支持を発表する声明をだし、チームの団結力を保とうとしているようだ。

 昨シーズンの今ごろは、レスターは難敵マンチェスター・シティを相手に要塞エティハド・スタジアムで3-1の勝利を挙げ、優勝へさらに加速していった。しかし、そういった昨シーズンの記憶は今では今シーズンの凋落ぶりを一層際立たせるだけになってしまった。

 古くからのプレミアリーグファンならば、このレスターの浮沈劇を見て思い出すチームがあるはずだ。それは1990年代初頭のリーズだろう。レスターのように、長く過ごした下部リーグから昇格してわずか2シーズン目にしてリーグ優勝を果たしたものの、翌シーズンは順位表を滑り落ちるように降格争いに巻き込まれていった。レスターと同じく、翌シーズンの戦いは全シーズンの優勝がいかに奇跡的なものであったか証明するようなものになってしまった。

 今シーズンのレスターにとって唯一の救いとなるのは、このときのリーズが2ポイント差で降格を免れているということだ。「私は、ここまで人々が当時のリーズの話を引き合いに出してこなかったことに驚いているよ」。そう語るのは、レスターからリーズへ移籍し、リーグ優勝からの降格争いという現在のレスターが直面している状況と全く同じ状況をリーズの一員として経験したギャリ―・マカリスターだ。「今でも当時のことは鮮明に思い出せるが、それはひどいタイトル防衛の戦いだったね」と、マカリスターは当時の状況を振り返る。

 ハワード・ウィルキンソン監督の下、キャプテンのゴードン・ストラカンを中心に戦ったリーズは、アレックス・ファーガソン監督率いるマンチェスター・ユナイテッドに最終的には4ポイント差をつけ、リーグを制した。シーズン途中にフランスのニームから補強したエリック・カントナが当たり、最後まで首位を守る原動力となったシーズンで、マカリスターは全42試合に出場している。

 最終節を前にしたシェフィールド・ユナイテッド戦で3-2の勝利を収めたことで優勝を決めたリーズ。しかし、その試合のわずか数週間後に始まった新しいシーズンでは、徐々にチームの歯車が狂っていった。11月の初めまでに、15試合を戦って4勝しかできず、その数週間後には加入以来チームの得点源となっていたエリック・カントナがマンチェスター・ユナイテッドへ移籍していった。

「リーグを優勝するまでの過程を振り返ってみれば、勝つことがもはや習慣のようになっていっていたことは驚きだよ。でもその逆も確かで、負けることも同じように習慣化してしまう。勝ちと違って負けはどこかでその流れを断ち切らなければならないんだ」。現在、リヴァプールのアンバサダーを務めるマカリスターはそう語る。

 実際、今のレスターができていないことは、まさにマカリスターの言う、負けの習慣を断ち切ることだ。エンゴロ・カンテを失ったことはチームに大きなダメージをもたらしたし、去年タイトル獲得に貢献した多くの選手が今シーズンは本領を発揮できていないことも確かだ。レスターがもし降格の憂き目に遭えば、「大惨事」としか言いようがないと話すマカリスターは、現在のレスターが低迷する原因に自信の喪失を挙げている。

 それでは、レスターにとって降格という最悪の事態を免れるために必要なこととはなんであろうか?

 リーズは残留に成功したが、それは奇跡でもなんでもなかった。彼らは最後の13試合のうち3試合でしか負けず、着実にポイントを積み上げたのだ。マカリスターは当時を振り返り、ある決心がきっかけとなり残留を果たすことができたと話す。

「ハワード(監督)は様々なことを試していて、それは我々選手も感じていた。でも結局は戦う男の集団として団結して、『やってやろうぜ、おれたちは危機から自分たちを守らなければならないんだ』と、言い合ったんだ。タイトル防衛の戦いは散々な結果に終わることは濃厚になっていたことで、逆に目標が明確になった」

 さらに当時のリーズには強い個性を持った選手や豊富な経験を持った選手がいた。「ハワードは我々を信頼して、チームの再建を任せてくれた。チームにはキャプテンシーに優れた選手やリーダーシップの強い選手が何人かいたんだ。彼らがチームにいたことは、我々にとって大きな助けとなった。それが最後まで我々をチームとして団結させた要因だ」と、マカリスターは当時のチーム内の状況を明かした。

「思えば、リーグ優勝を争って戦っていたときは驚くほどチーム内に落ち着きがあった。次のシーズンに降格争いに巻き込まれていたときも同じように、チーム内の雰囲気は落ち着いていた。団結して、頭の中は冷静に保つこと、そして戦う姿勢を見せたことが、危機を乗り越えられた要因だと思う」

 当時のリーズの豹変ぶりは、今のレスターの低迷ほど注目されていなかった。注目されることで降格を免れるという任務の遂行は難しくなる。しかし、マカリスターはチームとして団結することが最も重要だと話す。

「昨シーズンうまくいっていたこと、リーグ優勝に向かって進んでいた昨シーズンの一体感、レスターが今取り戻さなければならないのはこういったことだ。彼らはまず監督を信頼しなくてはならない。まさに我々がハワード・ウィルキンソンを信頼したようにね」

「大事なことは、団結して戦い続けることだ。私はきっと彼ら(レスター)は大丈夫だと思う。ひどい話になってしまう可能性もあるけど、レスターには残留する力があると私は見ている。昨シーズンの彼らの優勝は、近年の優勝の中でも最も素晴らしいと言えるものだった。その当時は今こうなっているとはだれも思っていなかったがね」

 今のレスターにとって、昨シーズンのおとぎ話は遠い昔の記憶のように感じられるだろう。しかし、マカリスターは、レスターの周囲は今年も盛り上がりを見せるかもしれないと言う。彼がリーズで優勝した後のシーズンを戦った際、残留を達成した際の満足感は1年前にトロフィーを掲げたときと大差ないものだったと振り返った。

「優勝したシーズンの前のシーズンは、リーズが9年間遠ざかっていたトップリーグに復帰した年だった。昇格のためにハードワークを続けて、ようやくつかんだトップリーグで戦う機会だった。次に与えられていた任務はチームを降格させないことだったんだ」

 マカリスターがリーズの一員として波乱の2シーズンを過ごしてから24年。今は岡崎慎司の所属するレスターが、当時のリーズと同じミッションを科せられている。

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