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レスターが見せた“戦う気持ち”…おとぎ話を終わらせないために必要なこと

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セビージャ戦で価値あるアウェーゴールを挙げたレスター

「今こそ戦うときだ」

 過去12か月間にレスター・シティの指揮官、クラウディオ・ラニエリが記者会見で繰り返し発してきた一種のキャッチフレーズだ。プレミアリーグ優勝のためであれ、降格回避のためであれ、“勇敢さ”や“戦う気持ち”を見せることはラニエリがチームに対して最低限求めるものである。しかし、昨季と比べて、今季のレスターに欠けているものが一つあるとすれば、それはその“戦う気持ち”であろう。選手たちはプレミアリーグを戦う上でのハードワークが欠けていることを繰り返し非難されていて、それこそ彼らが降格争いでもがいていなければならない理由である。

 しかしながら、ことチャンピオンズリーグではプレミアリーグ王者たる所以のようなものを見せてきた。グループリーグでは6戦で4勝を挙げ、首位通過を成し遂げた。そして迎えた決勝トーナメント1回戦のセビージャ戦でも“ミラクル・レスター”の片鱗を垣間見ることができた。

 途中までは「やっぱり」と言ってしまいたくなる展開だった。先制点を奪われ、後半開始早々にはホアキン・コレアにゴールを許し、2点のビハインドを負ったのだから。今季、このような展開になったとき、レスターの選手たちはほとんどのケースで諦め、下を向いてしまっている。ただただ試合終了のホイッスルが鳴るのを待つだけの時間が続いていくのだ。

 しかし、今回はそうではなかった。ジェイミー・バーディがアウェーゴールを決めて、第2戦へ望みをつなげたのだ。

 単に運が良かった側面があった感も否めないが、特にカスパー・シュマイケルは素晴らしいパフォーマンスを見せた。このデンマーク人守護神は低調なレスターにおいてスター級の活躍を見せている。グループリーグを振り返っても、コペンハーゲンとの2試合は彼の活躍によって救われたものだったといえる。

 この日は試合早々に迎えたPKのピンチを凌ぎ、幾度となく好セーブを披露した。結果として先制点を奪われることになったが、シュマイケルでなければもっと早く失点していてもおかしくなかった。もし失点を重ねていればイングランドからはるばる訪れたファンは試合への興味を失っていたことだろう。

 この試合の前までシュマイケルはCLにおいて4試合連続無失点を続けていた。残念ながら記録は途切れたものの、彼が見せたパフォーマンスはシーズンオフに新しいGKの獲得を模索するクラブの判断に疑問を投げかけるものであった。

 バーディのゴールはシュマイケルの見せた最高のパフォーマンスに報いたようなものだった。また後半のパフォーマンスが実を結んだものでもあった。

 それでもレスターは第2戦を迎えるにあたり、依然として修正するべき大きな問題を抱えている。エンゴロ・カンテを失ったことで、ウェズ・モーガン、ロベルト・フート、クリスティアン・フクスはすっかり安定感とは無縁の選手となってしまった。ラニエリは代わりとなる選手がいないことにも頭を悩ませている。彼らがホルヘ・サンパオリ率いるプロフェッショナル集団を追い詰め続けることは非常に難しいことだろう。

 ガーナ代表として出場したアフリカ・ネーションズ杯でセンターバックとして素晴らしいプレーを見せたダニエル・アマーティは解決策の一つとなりうるかもしれないが、保守的なラニエリは優勝に貢献した選手たちを代えることにあまり積極的ではない。そうした状況で、レスターのおとぎ話がエンディングを迎えないためには、シュマイケルがまたしても最高のパフォーマンスを見せてくれることに加え、少しばかりの運が必要だろう。

 おとぎ話が今尚途切れることなく続いていることはある意味、奇跡的なことである。バーディのアウェーゴールによりレスターはまだ夢を見続けていられることになった。

 CLで希望の火を灯し続けることがプレミアリーグにいい影響を与えるかどうかはわからない。ただし、レスターにまだ“戦う気持ち”が残っていることを示したことは間違いない。

 これから続く茨の道で必要なのは、棘に刺されても、道を閉ざされても突き進もうとする強い意志である。

 それを見られたことが何よりの収穫だったと言っても、決して言い過ぎではないはずだ。


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