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「サッカーに感謝している」満員の三ツ沢で開幕スタメン…50歳カズの飽くなき情熱

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50歳の誕生日に開幕戦を迎えたFW三浦知良は試合後、ピンクのスーツ姿で現れ、報道陣からケーキとバラの花束をプレゼントされた

[2.26 J2第1節 横浜FC1-0松本 ニッパツ]

 試合だけに集中していた。それでも、試合前の光景に思わず感極まった。50歳の誕生日に迎えたJ2開幕戦。横浜FCのFW三浦知良は2年ぶりの開幕スタメンに名を連ね、後半20分まで2トップの一角でプレーした。後半12分には右足でミドルシュートを狙ったが、ミートしきれず、GKがキャッチ。ピッチを退く際は1万3244人の観衆で埋まったスタンドから惜しみない拍手が送られた。

「グラウンドに来ればテンションはどんどん上がる。自分のプレー、試合だけに集中することを心がけた」。運命のめぐり合わせだった。50歳のバースデー当日に迎える開幕戦。日々過熱する報道をよそにカズは自然体だった。

「試合の日がたまたま誕生日だったというだけ。試合をずっとイメージして、試合でどうするかを考えていた。誕生日だから勝ちたいということではなく、2月26日の試合に勝ちたいとしか思っていなかった。誕生日ということはあまり考えていなかった」

 50歳の誕生日であることはスタジアムの雰囲気で自然と実感することができた。「スタジアムに入ったときにたくさんの人から『おめでとうございます』という声をかけてもらった。たくさんのフラッグや横断幕も出ていた。『一生現役』というフラッグもあって、試合前だけど涙が出るような、少し泣きそうになった」と、柔和な笑みをこぼした。

「18歳になったとき、50歳で現役をやっているとは思ってなかったし、それは30歳のときも40歳のときもそう。みなさんがこうやって盛り上げてくれて、周りの人に助けられてここまで来ることができた」

 周囲への感謝を繰り返し口にしたキングは今後の夢を聞かれ、「先のことはあまり考えられなくて。明日の練習を一生懸命やって、そういう毎日毎日の積み重ねしかない。次の試合に出られるように準備をする。目の前の試合に出て、ゴールを決める。1分でも長くピッチに立つ。それが目標です」と白い歯をこぼした。

 日々の積み重ね。簡単なようで難しい地道な努力を32年目を迎えたプロ生活で絶えず続けてきた。その秘訣はどこにあるのか。カズの答えは単純明快だった。

「サッカーが好きだということに尽きる。子供のころからこれしか知らないし、サッカーしかやってこなかった。サッカーに感謝しているし、自分の体と情熱が続く限り、やりたいと思う」。サッカーへの飽くなき情熱。サッカーへの不変の愛。そしてサッカーへの感謝。“永遠のサッカー小僧”は「50歳でピッチに立って、仲間と一緒に戦えるのは幸せなこと。あらためて60歳まで頑張りたいと思った」と、いたずらっぽく笑った。

(取材・文 西山紘平)

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