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東京五輪世代の絶対的エース、FW小川航基は磐田での活躍へ全力。「とにかく『一回』結果を残したい」

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東京五輪世代のエース、ジュビロ磐田FW小川航基

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 今年は年代別日本代表、そして「磐田で必ず輝く」――。ジュビロ磐田のFW小川航基は97年生まれ以降の選手達で構成されるU-20日本代表のエースストライカー。20年東京五輪の主力を担う世代の代表チームでは絶対的な存在として数々のゴールを挙げ、AFC U-19選手権バーレーン2016初優勝などの勝利をもたらしてきたが、昨年、磐田でのルーキーシーズンはJ1のピッチに立つことができなかった(ルヴァン杯は2試合、天皇杯は1試合に出場)。本人も公言する「勝負のプロ2年目」。東京五輪世代最注目のFWは磐田で何を目指しているのか、そして5月に韓国で行われるU-20W杯の目標は? 19歳が思いを語った。(取材日:3月9日)

―昨年12月のU-19日本代表のアルゼンチン遠征時に来年は「勝負の年になる」と話していた。今年、キャンプから現在までを一言で振り返ると、どのような2か月間だった?
「誰が見ても分かるように、出足は躓いたと感じています。『勝負の年』であることは間違いないですが、メンバーにも入ることができていないですし、出だしとしては悪いと思っています。ここから長いので盛り返せると考えるのか、もう2節終わっちゃったと考えるかは大きな差。すぐにでも試合に出てという考え方でやっていかないと、サッカー選手の寿命は決して長くないですし、すぐに時間が来てしまうと思いますね」

―“躓いてしまった”原因の答えは明確に出ている?
「自分としては悪くはないというか、実力的にも上に上がりつつあると思っています。でも、メンバーに入れていないという結果がある以上、まだまだだなと思います。キャンプ、その後のトレーニングは充実したものになっていると思っているので、自分が後退している状況だとは思っていないですね」

―昨年、ジュビロで1年間かけて技術、フィジカル、判断と多岐に渡って肉付けしてきた。それが代表チームでは結果に繋がったが。
「代表での活躍ももちろんですが、自分は『ジュビロで活躍したい』という思いが本当に強いですし、『本当にジュビロで結果を出したい』。(柏の中山)雄太クン達のように、U-20と、クラブとどちらも活躍しているという選手が理想ですね」

―現在は名波監督やコーチ陣に求められているものに達することができていないと感じている?
「メンバーに入ることができていないという現状があるということは、監督だったり、コーチから見て達していないという考えかもしれないですし、自分自身、前線からの守備というところが全然できていないと感じているので、そこをもっともっと向上していきたいと思っています」

―具体的にどのような点が課題に?
「高校の時は前線からの守備って考えることがありませんでした。前からダーッと相手にプレッシャーをかけて行くだけでした。でも、後ろを振り返ってボランチを消す作業だったり、細かい一歩のところにこだわったり、頭を働かせてやる守備がどれだけチームを助けるか学びましたし、前線の守備は大切だと感じました」

―それが高校サッカーとの大きな違いに?
「守備、あと考えるところですね」

―練習参加した時も気づいてはいたかもしれないけれど、それが実際にプロ入りして、日々トレーニングをすると、大きな差だと感じる。
「高校とプロとではサッカーが違いますし、プロではベテラン選手もいる中で全部が全部前から追っていたら組織が成り立たないと思います。頭を使うことを自分もプロに入って考えるようになった。一番考えていることは前線からの守備ですね」

―他にも差を感じる部分がある。
「やっぱり高校とプロとでは違うものは違う。体つきはまだまだ足りないと思いますね。(筋力、フィジカル)トレーニングは意識してやっているつもりなんですが、あんまり筋肉が付いて来ない。最低でも2日に1回、一時間くらいはするようにはしているのですが、なかなか付いて来ないですね。体質的なものかもしれないですけれども、それでもやり続けるしかありません」

―メンバーに入って試合に出場するため、何か変えようと必死の状況。
「(頷きながら)そうです。そうです。そうです。成長していかないと使ってもらえないですから。他の同世代で出ている選手がいるので多少の焦りはありますし、自分がこの世代の中心選手になっていかないといけないと感じているので、試合に出れていないならば、出れていないなりの努力をしていかないといけないと思っています」

―自身の成長も感じているのでは?
「例えば、身体の使い方という点ではジュビロ内でも監督やコーチに『去年より良くなった』と言われますし、紅白戦で実際に対戦するCBの選手達にも「上手くなったな」という感じで言ってもらえている」

―突き抜けるかどうかのギリギリのところにいる印象だが?
「そうですね。(改めて言葉に力を加えながら)FWなので『一回』。『一回』、どこかで使ってもらって、『一回』結果を残したいですね。やっぱり、FWって点取ったりするとホッとして、その後のプレーが凄く良くなったり、勢いついたりというのがあるので、とにかく『一回』結果を残したいですね」

―高校時代にも何度か会っていると思うが、今年は桐光学園の先輩でもある中村俊輔選手が加入した。
「影響はデカイですよ。若手にとっては、これまでにないくらいの経験、財産を落とし込んでもらえるので。今までの経験や、こういう選手を見てきたとか、こうなって欲しくないとか、経験されているので一つ一つの言葉の重みが全然違う。納得できるようなことばかり言ってもらっています。一緒にプレーしていて、プレーの面でも本当に大きいですし、それ以外のコミュニケーションのところでも自分の中では凄く大きな存在だと感じています」

―昨年までは大先輩で、それが現在はチームメートにもなった。
「これまでちゃんと喋ったことは無かったです。桐光の時、選手権の前にグラウンドまで来てくれたんですよ。その時にみんなの前で言葉をもらって、自分はキャプテンだったので『今日はありがとうございます』とみんなの前で喋ったのが初めて。実際にちゃんと喋ったのはここ(ジュビロ磐田)に来てからが初めてだった」

―特に印象に残っている言葉は?
「(中村選手は)サッカーの話ばかりしているんですよ。めっちゃサッカー好きだと思うんですよね。キャンプのお風呂などへ行った時も俊さんの周りに何人もいて、いっつもサッカーの話ばかりしていて、自分も声をかけてもらっている。サッカー以外のところに目を向けている選手は長続きしないという話や、リフレッシュも大事だけれど、サッカーを一番に考えて優先順位をサッカーに置いているヤツがやっぱり上まで行っていると言ってくれましたし、そこを見習いたいですね」

―現在はストライカー、センターフォワード(CF)だが、元々はセカンドトップの選手だった。今後はどうなっていきたい?
「自分は中学校の時はストライカーだとは思っていなかったので、高校からですね。高校に入ってから、『オマエはストライカーだ』と言って頂いて、ストライカーとして育てて頂いて、自分もストライカーとしての自覚が出た」

―元々自分がこうなろうというよりも、周囲に期待される中でストライカーになっていった。
「そうですね。元々、点決めるのが好きですし、点決めるのがサッカーの醍醐味なので、今後もストライカーで有り続けたいですね」

―CFや、ストライカーという括りはあまり好きじゃないかなと思っていたけれど、自分としてはストライカーになりたい?
「ストライカーになりたいですね」

―ストライカーになると、自分を突き動かしているものは何?
「やっぱりゴールを取りまくって、得点王を獲りたいですし、『また、コイツ点取っているよ』という声、そういうものが欲しいですね」

―U-20世代の代表チームでは最初からエースではなかった。その中で結果を残し続けながら這い上がってきた。
「代表呼んでもらうまで無名だったと思います。呼んで頂いて、ちょっと結果を残すことができて、それで呼ばれ続けているので、運ってあるな、と思っている。自分は実力というよりも、運で階段を登ってきたと思う。『運も実力の内』と言いますが、自分は運が無かったらここまで来ていなかったと思います」

―代表チームでも、桐光学園でも何故こんなに結果(ゴール)が出るのかと思っていたが。
「それは、(周囲に対する)要求が一番だと思いますね。『うるせえな、コイツ』とみんな思っていると思います。試合前のアップの時も、試合中もそうですが、同じ選手に『縦突破してクロスイメージしてよ』とか試合前に3回くらい言っています。みんな『分かった』と言ってくれているんですけれど、心の中では『また言っているよ』『うるせえな』と思っていると思いますけどね(微笑)。でも、その結果がああやって自分を見てくれて、パスを出してくれることに繋がっていると思う」

―ジュビロでも相当を要求している。
「要求しないとパスが出てこないです。でも、(パスの出し手に対して)『ヘイ、ヘイ、ヘイ』という要求になりがちなんですよ。声に出してしまうとCBも反応しますし、何も言わずに意思疎通して要求できるくらいのことができればいいんですけれども、まだ若さが出てしまって、『ヘイ、ヘイ、ヘイ』と言ってしまう。まだまだです。でも、オフ・ザ・ボールの動きは本当に大事だと思います」

―小川選手にとってFWとはどのようなポジション?
「まずは『点取ることが1番』。2番目が起点。『2つできる選手がいいFW』かなと思います」

―そのイメージに近い存在の選手はいる?
「(バルセロナのルイス・)スアレスが一番じゃないですかね。あの得点力、あの裏への抜け出し、あのキープ力……彼は間違いなく全部持っていますね」

―ルイス・スアレスが理想に近いFW。小川クンはルイス・スアレス同様高さもある。
「自分は背もあるので前線の競り合いでは負けたくない。(U-20代表では高さのある選手が少ないが)前線で起点となれるターゲットが必要。『コイツ、2人でマークしろ』というくらいの存在になりたいですね」

―警戒されるのは嬉しい?
「(今年、磐田のある練習試合で)前半、自分なりにいい起点を作れていて、相手の監督がボランチとCBで『挟め』と言ったんですよ。あの時のように、『ケアしろ』となれたら、自分も危険な存在になれているのかなと。(練習試合とは)レベルが違うと思いますけれど、上に行ったとしても“危険人物”になりたい」

―アジアの戦いではヘディングの強さが際立っていた。
「勢いつけてのヘディングは感覚が掴めてきた。でも、それはクロスを上げる選手が見てくれているからという点も大きいです」

―桐光学園の時は入学直後にデビューしていた。これまで壁に当たった経験は?
「小学校の時くらいですね。中学校の時、東急レイエスという、行きたいクラブがあって受けたんですけど、チームで6人受けてオレだけ1次で落とされて……。一番上手かったはずなんですけど、落ちてしまった経験があります。(そのようなこともあって)大豆戸(FC)へ行くしかなかった」

―高校はすぐに桐光学園進学が決まっていた?
「桐光からお話が来ると思っていなくて、最初は公立の(横浜市立)東に行くつもりでした。兄も東だったので(兄は県4強メンバー)」

―中高で努力して認められてきて、現在、磐田に来たからこそまた成長できている実感がある。
「名波さんも、(ヘッドコーチの)鈴木秀人さんも練習後に毎日付きっきりでやってくれるんですけど、それってあまりないことだと思うんですよ。毎日ですよ! 毎日、シュート練習一緒にやってくれて、そんな環境はないと思う」

―その日々は自身にとって間違いなく大きい。
「大きいですね。やっていたシュート練習の形が試合で出て決められたら嬉しいですね」

―J1でゴールを決めたら真っ先に名波監督の下へ。
「行きたいですね。理想ですね。試合に出て、(名波監督や磐田の関係者に)恩返ししたいです」

―U-20W杯が2か月後に迫っています。具体的な目標は?
「行けるところまで行きたいと思います。今までの最高は小野伸二選手の代が準優勝(99年)。今まで(自分達の世代は)アルゼンチンやフランス、あと自分はいなかったですけれどもイングランドと世界の強豪とやってきて、彼らは確かに強い。でも、みんなで意思疎通して、共通意識を持ってやれば、例えボールを持たれても勝てるチャンスはあると思うんですよ。どんな形でもいいから、20本打たれてこっちはシュート2本でもいいから、それでも勝ち上がって行く可能性はあると思うので、優勝を狙っていきたいですね」

―アジア予選前、日本が優勝するとは思われていなかったかもしれない。それでも優勝。この世代の強さを肌で感じる部分がある?
「無失点ですし、自分達の力がついてああいう結果になったのか、それともあの時のアジアのレベルが下がっていて、たまたま行けたかは分からないですけれども、優勝したというのは自信になりますし、サウジアラビアやイランという強豪と当たって、特にサウジアラビアは手強かったけれど優勝できたのは自信になっている」

―チームのまとまりは凄かったと聞くけれども。
「あの時の一体感は凄かったです。あのU-19選手権はみんなまとまっていましたね。試合に出れていない選手の力が大事だと思っていて、出れていない選手がどういう行動や態度を取るのか、それが大事だと思いますし、自分達はその点が良かったと思います」

―小川クンの考える東京五輪世代イチ押し選手は?
「(柏のCB中山)雄太君じゃないですか? 頼もしいです。安定しています。FWからしてもしっかりボールが出てくるので。強いだけじゃなくて、安定しているだけじゃなくて、ロングボールもビルドアップもパスがしっかりと出てくる。冨安(健洋、福岡)とあの2人のCBは安心できますね」

―U-20W杯では東京五輪世代のエースとしても注目される。個人的にはどこを見てもらいたい?
「ゴールですね。グループリーグ3試合どの試合もオレが点取って勝ち上がっている。正直なところ、オレの点だけで勝つくらいな感じが理想ですね」

―ノルマが2点だから2-0、2-0……
「2-0、2-0、2-0、全部オレのゴール! が理想ですね(笑)」

―FWらしい話だけれど、自分のことをエゴイストだと思う?
「試合中、口に出せないようなことを思っていたりしますね(微笑)。(他の選手がゴールを決めることについて)もちろん、チームが勝つのは嬉しいですけれども、個人としてはあまり……。去年までジュビロにいたジェイもそうだったんですよ。FWはみんなそう(エゴイスト)だと思いますね。自分のゴールで勝ち上がっていくほど、良いことはないです」

―U-20W杯で活躍できるイメージがあるのでは?
「あのレベルで通用しないとダメですね。でも、(フランスやアルゼンチンは)強かったですね。足も長いのでここでボールを止めて大丈夫だなと思っても、突っつかれてしまったりしていた」

―3月15日は組み合わせ抽選会。対戦したい国はある?
「イングランドはやってみたいですね。(U-20世代は2年前のイングランド遠征で対戦して1-5で敗戦したが、自身はケガで)行けなくて後悔している」

―東京五輪世代というネーミングがついたり、東京五輪世代だから注目されてきた部分もある。
「そこはデカイですね。自分はリオ・オリンピックも帯同させてもらいましたし、その雰囲気というのも分かっている。それが東京となれば、どれだけ楽しみなことか。『東京オリンピックに出て活躍したい』ですね」

―リオ五輪の代表チームに帯同して雰囲気を感じることができたのは数人だけ。
「東京五輪のことをイメージして一緒にトレーニングなどをしていたので、自分達の代は、もっともっと雰囲気よくやって行きたいです」

―東京五輪は3年後。A代表のFWとして、五輪に臨むこと。
「先にA代表に入ってから出場することが理想です。(リオ五輪の代表監督だった)手倉森(誠)さんが話されていたのが、今はオリンピックに出てからA代表へステップアップするというのが流れになっている、と。植田直通選手(鹿島)や大島僚太選手(川崎F)もそうでした。でも、ワールドユースで活躍してA代表になって行かなければいけない」

―同じ世代のプレーは気になっている?
「(自分だけでなく)みんな結果は気になっていますね。この間、(広島のMF森島)司が凄いドリブルしたじゃないですか。『あれ? こういうタイプだったっけ』と。あまりドリブルせずにパス捌いてというイメージでしたけれど、J1で成長しているんだなと思ったし、同世代の活躍は悔しかったですし、とにかく自分も試合に出たいですね」

―最後に、小川クンが感じているJリーグの魅力について教えてください。
「スタジアムの雰囲気が僕は好きですね。あの雰囲気で点取ってワーッとなるじゃないですか。プレミアリーグだったり、ヨーロッパもそうだと思いますけれども、あの雰囲気が醍醐味だと思います」

(取材・文 吉田太郎)


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