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日本代表メンバー発表、ハリルホジッチ監督会見要旨

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UAE戦、タイ戦に臨む日本代表メンバーを発表したバヒド・ハリルホジッチ監督

 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督は16日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、23日のW杯アジア最終予選・UAE戦(アルアイン)、28日の同タイ戦(埼玉)に臨む日本代表メンバー25人を発表した。

以下、ハリルホジッチ監督の会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「我々はW杯に向かう最終直線に入った。非常に困難な道のりだが、それは我々にとってだけ難しい直線ではなく、相手チームにとっても難しい。非常に重要なゲームが待っている。W杯に進む同じような可能性を秘めたチームが4つある。最終予選は困難な立ち上がりだったが、今は良いところにつけている。まず我々が今、やらないといけないのはアウェーゲームで勝利を持ち帰ることだ。我々も困難を抱えているが、他のチームも抱えているはず。そういう意味で私はポジティブに捉えている。勝利に向けて準備を進めている。

 この2連戦は特に1試合目が簡単ではない。UAE戦はアブダビではなく、アルアインに会場が変わっている。少し小さめなスタジアムで、独特な雰囲気の中で大きなプレッシャーを感じながらプレーする試合になる。1か月から1か月半、この試合に向けた準備を進めている。欧州にいたときもそうだった。欧州にいるほぼすべての選手に会って話をしてきた。W杯に向かうためのゲームというのは、3日、4日では準備できない。W杯の数年前から準備しないといけないということで選手個々に要求してきている。代表のことを考えてほしいということ。この試合に向けた準備をすること。大胆に、決断力を持って挑むこと。そのようにすべての試合に向かって勝利を目指さないといけない。

 このチームはUAEに勝っていない。どんな形でも勝利をおさめることを考えないといけない。選手たちはだれも(UAEに敗れた)第1戦を忘れていないと思う。我々にとってリベンジの機会でもある。勝利を目指して、予選突破を目指していかないといけない。W杯の出場権はだれもプレゼントしてくれない。苦しみも受け入れながら戦わないといけない。もしかしたら暴力的なことや挑発もあるかもしれない。フィジカル的な戦いも必ずある。そのような中でもスポーツマンシップ、ルールにのっとって戦うことができればと思っている。適正なレフェリングを期待している。日本代表としては自分たちの特徴を見せ、決断力を持って勝利を目指さないといけない。

 W杯に出場することはスポーツの面だけでなく、選手たちにとっても大きな出来事になる。なぜなら前回のW杯で傷を負っているからだ。そういうこともあるので特にモチベーションが上がっていると思う。前回のW杯の悪い思い出を消すためには、今回のW杯にまず出場することだ。日本のサッカー界のことを考えても重要な時期に差し掛かってきている。代表はその国のサッカーを反映するもの。それを見せる意味でも代表には責任がある。

 スタッフとともに長い時間、この試合に向けて準備を進めてきている。戦略面でもしっかり準備している。コーチングスタッフだけでなく、メディカルスタッフとも常に一緒に仕事をしてきている。私の頭の中では準備ができている。これからの2、3日でそれを選手に伝えていく。まずは決断力と意欲を持って1試合目に向かわないといけない。次のゲームがどういう特徴になるのかを考えると、新しい選手が今回入っている。なぜこの選手を選択したかを説明しながら紹介していきたい。

 GKは3人。西川、川島、林。今回、東口を呼べなかったことは私にとって悲しい出来事だった。彼は素晴らしいコンディションで今季、プレーしていた。今回、ケガをしてしまったが、それまでは次の試合にスタメンで行ける状態の選手だった。西川はトップコンディションに持っていくのはこれからだと感じている。林はFC東京に加入して、いいゲームをしているし、良くなってきている。(川島)永嗣とは常にコンタクトを取っている。彼は自分のチームのリザーブチームでプレーしている。そしてトレーニングをしっかり積んでいる。代表でプレーする意欲も持っている。それを感じたので、今回のグループに入った。

 DFに多くの変更点はない。(酒井)宏樹、(酒井)高徳、(長友)佑都、槙野。佑都のところが唯一心配だ。あまりゲームに出ていない。私はミラノに行って彼と本田に会ったが、佑都は素晴らしいプロフェッショナルだと思う。クラブの中で非常に激しいポジション争いをしていて、試合に出なかったときは個別でトレーニングして補おうとしている。代表でプレーする大きな意欲も持っている。その野心もあって、今回のリストに入った。他の選手は試合に出ている。槙野の場合はフィジカル面で少し心配な点もあったが、よくなってきているし、ゲーム内容も向上している。

 センターバックは(吉田)麻也、森重、昌子、植田。経験を積んだ選手と若手の融合だ。麻也はたくさんの試合に出ているので、レベルが上がってきている。森重もパフォーマンスが上がってきている。最近、昌子の試合も見たが、満足できる内容だった。植田は能力、ポテンシャルを秘めた選手なので、合宿に参加するたびに成長してくれると期待している。

 中盤は少し新しく入ってきた選手もいて、変更点がある。まず今野。なぜ彼がリストに入っているか。まずコンディションが良さそうに見えたからだ。プラス、経験値が高い選手。代表でもすでにプレーしている選手であり、次の試合は経験が必要な試合になる。だから今野が入ってきたことは驚きではない。最近の試合では何人か若い選手も呼んだが、そこで感じたことは、もしかしたらまだ精神面、メンタル面で準備ができていないかもしれないということ。フィジカル的な戦いもゲームの中にはあるが、今野のようなタイプはそこで有用な選手かもしれない。

 守備的なMFが3人だ。長谷部はご存知のとおり、(フランクフルトの試合で)守っているときにポストに当たって裂傷というケガを負ったが、もうすでにトレーニングを始めている。非常に強い我々のキャプテンだ。彼なしのチームは現在考えられない。

 攻撃的なMFには新しい選手が何人かいる。香川と清武。(香川)真司は最近、試合に出ている。清武はケガもあってトップコンディションではないが、彼の質と経験値も考慮し、今回のリストに載せた。我々にとって有益な選手だと思う。

 そして新しい選手。まず高萩。去年、FCソウルにいたときから追跡している選手だ。昨年はどちらかというとJリーグの若い選手を選んできた。今の彼のFC東京でのポジションを見ると、良いパフォーマンスで、興味深いものを見せてくれている。国際的な経験もある選手。(身長が)183cmあるので体格にも恵まれている。彼を呼んだから必ず使うということではないが、手元で彼の状態、メンタル的な部分も見てみたいと思う。

 倉田は今、新しい役割をこなしている。彼も興味深い選手。第2ラインでプレーしている。ボールリカバリーをしながら、後ろからプレーを加速させる役割をこなしている。戦術的な変更の中で、非常に興味深い状況にある。彼は右へ行ったり、左へ行ったり、真ん中へ行ったり、さまざまなところに動くが、ボールを持っているとき、あるいはボールを持ってない状況でも加速させることができる。チームに何かをもたらすことができる選手だと思う。ポジショニングでいろんなところに行ってしまうので、そこを修正すればいろいろできると思う。大島、井手口、小林祐希、あるいは柴崎岳ではなく、高萩と倉田を選んだのはそういう理由だ。今回は経験値の高い選手を選んだ。

 本田、浅野、原口、宇佐美。本田と宇佐美の今回のリストへの記載については疑問、質問があるかもしれないが、試合に出ていなくても、今の代表は本田を必要としている。20試合、我々は一緒に戦ってきたが、常に彼の存在はそこにあった。我々のトップスコアラーでもある。もちろんミランでより多くの試合に出てもらいたいというのが私の望みだが、今のところ激しいポジション争いの中で使われていないという状況だ。だが、彼の代表でプレーする意欲は常に高い。プラスアルファのトレーニングをしていることも分かっている。この代表は彼の存在を必要としている。彼が試合に出るのか、何分出るのかはまた別問題だが、彼の存在が我々にとって重要だ。

 宇佐美とは欧州にいたときに話をした。彼の質の高さ、能力を信じている。ボールを受けて自分で違いを生む、珍しいタイプの選手。1戦目ではまだ難しいかもしれないが、2戦目のタイ戦で良いジョーカーになってくれると思っている。もちろん他の選択肢もあったが、ジョーカーとして彼が最適かなという判断でリストに入れた。

 3人のFW。大迫、岡崎、久保。彼らはより多くの試合に出ている。あまり点を取っていないのも事実だが、その中で久保は点を取っているので興味深く見ている。たくさんの試合で彼は点を取っている。彼を見に行くこともした。他の選手と比較しても勇気や思い切りの良さを持った選手だ。岡崎はまたレギュラーとして最近試合に出ている。代表とは違った役割でプレーしているが。大迫もどんどん成長してきている選手だと思っている。

 25人の選手をリストに入れた。中盤に一人多く、FWに一人多く呼んだ。病気やケガもあるし、違う戦略で2試合を戦うこともあり、少し多めの選手を招集した。1試合目の前に2、3回のトレーニングがあるが、そこでたくさんの情報を得て、どの選手を使うのか決めていく。若手と経験を積んだ選手の融合も進めて、形は変わってきているが、目標は変わっていない。それはUAEに渡り、向こうで成功をおさめて帰ってくること。我々自身が大きな野心を持って準備を進めていく。

 その試合が終われば、次はタイ戦だ。同じく決断力を持って準備を進めないといけない。日々、タイは成長している。他のチームとの対戦を見ても非常にプレーしにくいチームになっている。タイ戦が楽な試合、歩きながら勝てる試合にはまったくならない。他のチームとの難しさを比較すると、そこまで難しいとは言えない試合に結果的になるかもしれないが、楽な試合ではない」

―ベテランの選手を数多く呼んだが、すでに彼らと十分なコミュニケーションを取っていたのか?
「選手とは良いコミュニケーションを取っている。欧州でも選手と直接話してきた。選手それぞれに個人的に修正点も伝えてきているし、選手のさまざまな意見も聞いている。本当の対話ができたと思う。国内組で新たにリストに入れた選手では、今野は私が来た当初から知っているし、倉田は東アジア杯で一員だった。ただ、今とは違った役割のプレーをしていた。高萩とはまだ面識がない。過去に代表に招集されたことがあるのは知っているが、私にとっては初めての招集だ。彼の性格も含めて、これから知りたいと思っている。呼んだから試合に出られるわけではない。私の頭の中には戦略ができている。私の中でオプション1、オプション2、ケガ人が出ればオプション3というふうにさまざまなオプションを想定している。そういったことも読みながらリストをつくっている。

 特に経験を積んだ選手とはたくさん話している。彼らにとってはもしかしたら最後のW杯予選かもしれない。W杯、アジア杯のあとに私が来た。その少し落ち込んでいた状態より、大きな野心、決断力を持って戦ってもらいたいと思っている。選手は全員がW杯に行きたいという意欲を持っている。もちろん、不運なことに我々だけでW杯に行けるわけではなく、他のチームと戦わないといけない。試合に出る選手は大きな喜びを感じながらプレーして、試合に出なければその喜びも小さくなるが、それはどのチームでも同じ。私がベストだと思うチームを常に使っているので、入らなければ自分より良い状態の選手がいたということになる。私はチームをつくるのに現在、ベストだと思える選択をしている。今回リストに入らなかったからといって次も入らないわけではない。今、いい状態の選手たちを選んだということ。もしかしたら次の試合では別の選手が必要になるかもしれない。日本人選手であれば、Jリーグでプレーしていも、海外でプレーしていても、全員が代表候補だ」

―「試合に出ていなければ呼ばない」と常々言ってきたが、本田や長友を呼んだのは他に選手がいないからか?
「本田は我々のトップストライカー。一番点を取っている。こないだの試合は先発で出なかったが、後半から出て、いいゲームをしたと思っている。本田の代わりができる選手がいるのかということも考えないといけない。私は若い選手も使ってきたが、精神面、メンタル面を準備する中で、若手をプッシュして使ったとき、『できるか』と聞くと、『はい』という答えが毎回返ってくるが、相手に少し敬意を払い過ぎている、少し恐れている姿を感じることもあった。そういった意味でも本田のような選手はこれからも必要だと思う。

 本田、長友の2人はイタリア、欧州でもビッグクラブでプレーしている。そこでトレーニングするだけでもちょっと違いがあると思う。そういう意味でも信頼できる選手。彼らの代表に対する意欲も感じた。彼らを選び続けたのは私だけではない。より良い選手がある日、現れたら彼らを呼ばないかもしれない。他の選手が彼ら以上のものを見せないといけない。ここ10年ぐらい彼らが代表に入っている。プレーだけでなく、存在が非常に重要だと思っている。選手によってはこのような特質の試合に初めて臨む選手もいる。たくさんのプレッシャーがあり、自分たちに悪意が向くような状態で試合をすることもある。そこで私は経験を必要とする。特にUAE戦に向けてはその経験値が重要になる。繰り返すが、彼らより良いパフォーマンスを見せる選手がいれば、彼らのポジションも脅かされていく。ポジションが確保されている選手はいない。(長友)佑都、(本田)圭佑については、彼らの気質も分かっていて信頼できる。だからといってプレーするとは限らない。合流してから状態を見てみたいと思う」

―どんな決断力が必要と考えているのか。
「選手たちの知識がより深まってきている。選手とたくさんのことを話してきた。彼らのフィードバックを私は必要としている。彼らのメンタル的なところに働きかけるためにはフィードバックが必要だ。オーストラリアに対して日本はまだ勝ったことがないという話も聞いていたが、そういった状況でも『過去に勝ったことがなくても勝てるんだ』ということをまず納得させないといけない。初戦(UAE戦)を思い出すと、熱が39度ぐらいまでにあがるので思い出したくないが、内容は悪くない試合だった。一昨日と昨日も見返したが、いい試合だった。守備でも攻撃でも興味深い点があった。少し細かいミスがあったし、レフェリーのところが影響してしまった。少し受け入れがたい要素もあった試合だが、だからこそリベンジしたいと選手たちは感じている。自信を持って決断力を持ってそれを果たすことができれば快いものになる。

 難しい試合だが、勝てない試合ではない。相手の挑発に乗ってはいけない。さまざまなデュエルを仕掛けてくると思うが、それに持ちこたえないといけない。FKやPKも誘ってくる。そこで自分に自信を持ち、チームに自信を持ち、チームとして戦わないといけない。そういうふうに勝利を目指したい。相手チームに良い選手がいるのも事実。しかし、このチームにも良い選手がいる。

 今までのスタッツ、データを見てきたが、敗戦が一度あったからといって、それで全体が悪くなるわけではない。W杯予選を13試合戦って、失点は5つ。4つがセットプレー。流れの中から1失点している。それがサウジアラビア戦の終盤だった。つまり、13試合でいい守備の仕事ができている。攻撃の面を見ると、決定力の部分で足りないところもあるかもしれないが、チャンスメイクの部分では1試合に12回、13回決定機をつくっている。つまりいいゲームができるということ。もちろん、いくつかの修正点はあるが、そこを修正し、向かっていかないといけない。“できない”という考えを持ってはいけない。できるし、やらないといけない。勝利をつかむんだと考えないといけない。W杯に出れば、さまざまな大きなドアが開く。私は自分たちのゲームも分析し、良いところも悪いところも分かっている。オーストラリア戦、UAE戦でPKが2つなかったことも思い出すが、修整はできる。PKが2つあれば、状況はまったく違ったと思うが。

 私はこのチームを信頼している。私は後ろから彼らを後押ししている。うまくいかなければ私の責任だ。しかし、我々は打ちのめされるまでは戦わないといけない。我々の持っているマックスを出さないといけない。パニックに陥らないで恐れずに戦わないといけない。相手チームの日本に対するコメントも聞くが、『日本はタックルすれば彼らは恐れる』と。そういうことが絶対に起こらないようにしないといけない。怖い選手がいれば、試合では使わない。そういうメンタルの面が違いを生むかもしれない。我々は平均で1試合3点決めている。それも数値として悪くない。たくさんのチャンスで外してしまっていても点を取れているということ。そこをポジティブに捉え、選手たちも自信を持って戦ってもらいたいと思っている。そして厳正な判定を期待している」

―サウジアラビア戦以降、日本代表にとってポジティブなことはあったか?
「ポジティブなことはたくさんある。我々は重要な、勝利しないといけない試合に向かっていた。その準備の中でトップコンディションでない選手が何人かいた。だからその試合のメンバーを見たときに驚いた人もいたが、それは私が練習を見て決めた結果だ。そこで良いゲームをした。勝利に値する戦いだった。グループもしっかり出来上がっている。長年、代表にいるが、ケガをしていたりコンディションが落ちていたりしても、その代わりに出て戦える選手がいた。サウジアラビアはトップフォームで戦った試合だった。我々の内容が悪ければ、負けていた試合だったかもしれない。そうなっていれば、W杯に向けた道のりは困難になっていた。負けていればサウジアラビアのW杯出場の可能性が大きく膨れ上がっていたと思う。その試合に勝つことで我々は力を得ることができた。メンタル的に良い状況が生まれた。今は全員がスタメンになろうと戦ってほしい」

―高萩は攻撃的MFに入っていたが、クラブではボランチでプレーしているが。
「たくさんの試合を見たが、FC東京でプレーし始めてすぐに彼を呼びたいと思った。そのときはより深いポジションでプレーしていたが、彼からのボールで攻撃が始まるという質の高いプレーを見せていた。ゲームの読みも良いと感じた。すごくスピードがあるタイプではないが、組み立ての中で違いを見せることができる。FKも蹴れる。守備の面を見ると、(山口)蛍、今野、長谷部のようにボールリカバリーがそこまでできるわけではないが、そういった選手と補完し合いながらプレーできると思う。チームをつくるときは、特に自分の隣にいる選手と補い合うことができる。彼は183cmある。我々のディフェンスに向かってくるボールを考えたときも、彼は有用な選手になると思う。我々とは初めてのコンタクトになる。彼を呼んだからといって確実に使うわけではないが、我々のトレーニング、戦術の中で彼を見たい。その中で彼の行動がどうなのか。

 倉田はより瞬発力がある選手。少しボールを持ちすぎることもあるが、深いポジションからボールを持って、切り込んでいくことができる。そそういったタイプの選手はそれほど多くない。それができるテクニックを持っている。そういった意味で原口を使うこともある。長谷部とは違ったタイプのコンビとして、さまざまな選手を試している。柏木、大島……多くの選手を彼とのコンビで使ったが、ベストな選択肢がどれなのかを探している」

(取材・文 西山紘平)

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