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「無失点は奇跡に近い」完封にダメ押しヘッドも“キャプテン麻也”に笑顔なし

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後半38分にダメ押しゴールを決め、ガッツポーズのDF吉田麻也

[3.28 W杯アジア最終予選 日本4-0タイ 埼玉]

 チームの勝利にも、自身のゴールにも笑顔は見せなかった。試合後、ミックスゾーンに姿を見せた日本代表DF吉田麻也(サウサンプトン)は「結果は評価できるけど、内容は全然。課題がたくさんあって、無失点で終われたのは奇跡に近い」と口を開いた。

 スコアは4-0も、シュート数は12本対14本とタイが上回った。ビルドアップでミスが目立ち、悪い形でボールを失うと、タイにチャンスをつくられ、試合終盤にはPKのピンチもあった。日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「内容的には4-4でもおかしくない試合だった。バタバタしていたのは認めざるを得ない」と指摘。2試合連続でゲームキャプテンを務めた吉田も「勝ったときこそ、足元を見つめて、どう改善していけばいいかを考えないといけない」と言った。

「選手の距離感、ボールの失い方も悪かった。こういうことも起こり得ると想定はしているけど、こういうパフォーマンスは飲み込みづらい」。MF長谷部誠、MF今野泰幸の負傷離脱に伴い、中盤の底でコンビを組んだのはMF山口蛍とDF酒井高徳だった。所属クラブではボランチもこなしている酒井高だが、代表では初めて。中盤の連動性を欠いたのも致し方ない部分はある。

 ボランチの選手が替わったことが要因か。報道陣の質問に吉田は「それもあると思うけど、それだけでもない。『選手が違うから』と言ったら、それで終わってしまう」と言い訳にはせず、「僕がもう少しコントロールできたと思うし、引き締めないといけないところもあった。自分も悪い流れに引き込まれてしまった」と、ゲームキャプテンとして自ら責任を負った。

 苦しみながらも結果は4-0。「4点取れたのは大きいし、悪いときも勝ち点を積み上げることが予選では大事」。ダメ押しの4点目を決めたのが吉田だった。後半38分、MF清武弘嗣の左CKにフリーで合わせ、ヘディングシュート。「イギリスではあんなフリーになることはない」と苦笑いを浮かべながらも、「キヨ(清武)のボールはいつもいい。信頼して飛び込んでいるし、久しく取ってなかったので気持ちは良かった」と、ようやく笑みをこぼした。

 昨年6月3日のキリン杯・ブルガリア戦(7-2)以来、約10か月ぶりとなる国際Aマッチ通算10得点目。今回の最終予選では初ゴールとなり、テレビ映像ではスタンドで観戦する長谷部の笑顔が映し出された。「逆に喜んでなかったら非国民でしょ」。キャプテンという重圧を引き継ぎ、敵地でのUAE戦(2-0)に続く2試合連続の完封勝利に導いた背番号22は「ここからは一つひとつが勝負。勝ち点を積み上げるしかない。次、アウェーでしっかりイラクに勝てるように」と、すぐに気持ちを切り替えた。

(取材・文 西山紘平)

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