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エイバル乾貴士は日本代表に相応しいか?突然の一時帰国前に示した最高の結果

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一時帰国前にゴールを決めたMF乾貴士

 スペイン国王の来日にともなう安倍晋三首相との会食に出席するため、突然の一時帰国。エイバルのMF乾貴士は、シーズン中に2試合の欠場を強いられることになった。この事態に対し、さまざまな声が上がったが、クラブのために招待を受諾したという乾は、ビジャレアル戦でチームを勝利に導く今季初ゴールを決め、チームでの重要性を印象付けた。

 30日間で乾は4試合で3試合に先発、1試合は途中出場。チームは1勝2分け1敗だった。サイドで攻守にハードワークを見せ、鋭い仕掛けで存在感を放つ乾だが、ゴールという結果がなかなか出なかった。今季の第29節、乾自身は20試合目にして初ゴールとなったが、終盤に向け、さらなる活躍に期待は高まる。4試合のパフォーマンスを振り返り、今後を展望する。

▽3月4日(土)リーガ・エスパニョーラ レアル・マドリー戦

試合結果:1-4(負け)
4分(途中出場)
評価:なし

 “白い巨人”を相手に3試合ぶりにスタメンを外れた乾。すでに3点差を付けられて終盤の登場ということで、試合も緩む状況。目立ったプレーのないままタイムアップの笛を聞くことに。「5分だとボールに触る回数も少ないし、難しい」と振り返るなど、消化不良の試合となった。

▽3月13日(月)リーガ・エスパニョーラ オサスナ戦

試合結果:1-1(引き分け)
63分(途中交代)
評価:6.5

 乾は左サイドでスタメン出場。決定力の課題が指摘される乾だが、この日は3つのシュートが枠を捉えながら、相手の攻守に阻まれるという惜しい結果で得点に絡めないまま、無念の途中交代。チームは最下位を相手に手痛いドローとなった。

 献身的に守備をしながら、味方の攻撃に転じれば左サイドから積極的に切り込み、出場63分間で4本のシュートを記録した乾。前半の24分と28分に得意の切り込む形から鋭いミドルシュートを放ったが、相手GKのサルバトーレ・シリグに反応され、はじかれてしまった。

 後半にはセカンドボールに反応して右足のハーフボレーで捉えたが、ゴールラインのギリギリでDFにクリアされた。存在感はエイバルの攻撃陣でも一番目立っていただけに、乾にもチームにも、もどかしさの残るゲームだった。

▽3月18日(土)リーガ・エスパニョーラ エスパニョール戦

試合結果:1-1(引き分け)
81分(途中交代)
評価:6.0

 スタメン出場で終盤までプレーした乾のパフォーマンスはかなり良かったが、またしても肝心のフィニッシュで精度を欠き、惜しくもゴールはならなかった。35分には得意のドリブルからDFの股を抜き、シュートに持ち込めればという場面でカバーにきた相手に阻止された。59分には味方が仕掛けて倒されたこぼれ球を右足で狙ったがシュートが枠を外れてしまった。サイドから危険な存在にはなれていただけに、最後の詰めの甘さが悔やまれる試合だった。

▽4月1日(土)リーガ・エスパニョーラ ビジャレアル戦

試合結果:3-2(勝ち)
90分(フル出場)
評価:7.5

 一時帰国前の試合となった強豪とのアウェー戦で、チームに5試合ぶりの勝利をもたらす今季初ゴール。終盤の78分、相手DFがボールコントロールに手間取ったところを逃さず、果敢なプレッシングでボールを奪うと、そのままドリブルでペナルティエリア内に侵入し、右足シュートをゴール左に決めるという乾らしい形だった。

 開始10分には3人の合間をかいくぐり惜しいミドルシュートに持ち込み、あと一歩でアシストというクロスもあった。セットプレーの流れで犯したファウルにより通算5枚目のイエローをもらい、どちらにしても次節は出場停止となったが、守勢に立たされる時間が長い中でもアグレッシブな姿勢を見せ続けたことが待望のゴールとして実った。

■今後の課題

 加入当初はあまりに指揮官の指示を忠実に守り過ぎ、勝負所で消極的になりがちなことが指摘されたが、そこはかなり解消されている様子だ。ここ10試合でスタメンは7試合。厳しい競争は続くが、ホセ・ルイス・メンディリバル監督の信頼は着実に高まっている様子だ。

 それだけにスペイン国王の来日にともなう一時帰国は乾にとってもある意味で水を差した感もあるが、直前の試合でゴールを決めたというのは置かれた状況の中で最高の結果だった。狭いスペースで正確なボールをコントロールし、縦と横に鋭く仕掛けてクロスやシュートに持ち込む形はエイバルの強力な武器になりつつある。唯一足りなかったゴールもビジャレアル戦で結果が出た。

 3月の2戦で乾は日本代表に招集されなかったが、代表にふさわしいパフォーマンスを見せていることは確か。予備登録メンバーに入っているとはいえ、乾を招集しないことに疑問の声があるのも理解できる話だ。ただ、アジア最終予選の難しいタイミングということもあり、新戦力のバランスを考える必要もある。6月のイラク戦に向けては欧州組のオフにあたる5月末に事前合宿があり、さらに親善試合のシリア戦も控えているため、引き続き攻守にハードワークをしながら結果を出し続けていれば、招集される可能性はある。

 また、バヒド・ハリルホジッチ監督はアルジェリア代表時代、予選を突破してから多くの新戦力を組み込んで本大会の躍進につなげた実績もある。チームのベースを固めたところから、もう1つチームをレベルアップさせ、オプションを加える選手が必要となる。乾の場合はすでに代表経験もあり、タイミングさえ合えば、その候補として呼ばれるはずだ。

 堅守速攻をベースとするエイバルではフランクフルト時代より守備のハードワークや球際の厳しさは上がっており、高い位置で味方からボールを受ける回数も増えた。限られたスペースを飛び出しやドリブルで突破する意識が高まっている様だ。チームメイトとの連係はある程度固まってきており、タイミングよくスペースに動き出せばMFのアンデル・カパやダニ・ガルシアからパスを受けられる様になった。最大の課題はゴール前での精度であり、メンディリバル監督も乾の大きな課題として挙げる部分だが、遅ればせながらゴールという結果が出たことは大きい。


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