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「340日」が示す香川真司の苦悩と葛藤…好調のカギはオーバメヤンとの関係性か

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340日ぶりのゴールを奪ったMF香川真司

 まさに完全復活――。香川真司の近況を表す上で、これ以上に相応しい言葉は他に見つかりそうにない。

 昨シーズンから今シーズン前半にかけて、日本が誇るテクニシャンは苦しい時期を過ごしていた。長らくゴールから遠ざかり、何でもないボールをトラップミスで失うような、らしくないシーンも少なくなかった。実際、トーマス・トゥヘル監督はなかなか香川をスタメンで起用しようとしなかったことからもそれはうかがえる。ブンデスリーガにおける先発出場が8試合にとどまっているという事実が、“かつての立ち位置”を示していると言っていい。

 そう、状況は変わった。“かつて”の基準では測れないほど、香川の“今”は充実している。

 公式戦5試合連続先発出場を果たし、ドルトムントの攻撃陣をけん引する存在に戻ったのだ。間には日本代表の試合もはさみつつ、ワールドカップ予選のタイ戦では先制点を決めた。直後に行われたシャルケとのルール・ダービーでは絶妙のトラップから優しいラストパスでピエール・エメリク・オーバメヤンのゴールをお膳立てした。

 ダービーマッチからわずか3日後のハンブルガーSV戦でも香川はスタメンに名を連ねた。ここ最近のドルトムントを見ている者なら、指揮官が「Shinji Kagawa」の名前を先発メンバーのシートに書き込んだことに疑問を持つ者はいないはずだ。実際、香川はドルトムントが繰り出した攻撃のほとんどで起点となり、3ゴールすべてに絡んだ。

 『Opta』によれば、香川のブンデスリーガにおける得点は340日ぶりだという。ここ最近のパフォーマンスからすれば驚くべき日数だが、それだけ長い期間、苦しんでいたことを示す数字だとも解釈できる。

 香川がかつての輝きを取り戻している背景には、オーバメヤンとの関係性がある。

 シャルケ戦でエースの得点をアシストしたシーンは、香川自身もGKと1対1の局面を迎えていた。自分でゴールを狙っても、高い確率でゴールネットを揺さぶっていたはずだ。しかし、香川はそうしなかった。ラストパスをエースに送ることを選択し、ゴールの喜びを二人で共有する道を選んだのだ。

 HSV戦でも再三、オーバメヤンにチャンスを供給し続けた。すると81分、快足FWはお返しのように香川が触るだけでネットを揺らすことのできるプレゼントを贈った。そして香川は香川でさらなるお返しを忘れることはなく、アディショナルタイムに左足で見事なラストパスを送ったのだった。

 エースとの“蜜月の関係”が続いていけば、今後も香川がゴールを重ねていくことは十分に考えられる。少なくとも「340日」という長過ぎる空白の期間が生まれることはないはずだ。

 欧州のサッカーカレンダーはそろそろ師走に入りつつある。過密日程と重要な試合が続くシーズン終盤に、頼れる23番が数年ぶりに帰ってきたことは、ドルトムントにとって喜ばしい出来事であるに違いない。

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