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GK廣末陸が日本高校選抜にも求める、妥協なきプロの姿勢

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日本高校選抜注目の守護神、FC東京GK廣末陸

 全国高校サッカー選手権で頂点に立ち、仲間達と歓喜を爆発させたのはわずか3か月前のこと。今、GK廣末陸(青森山田高→FC東京)が見ている世界は日本高校選抜のチームメートたちと異なっていた。
 
 それは、廣末自身も感じたことだった。日本高校選抜欧州遠征直前合宿初日、11対11のトレーニングで廣末のサイドチェンジを味方選手がコントロールミス。廣末は「今の段階でああいうミスはないな」と厳しい口調で指摘したが、他の選手たちにとっては試合の中にあるミスの中の一つという感覚だった。

「ミスはしょうがないというスタンスで来たんですけど、こっち(プロ)は結果の世界なので一本の成功を求めていかないといけない」。この日、高校選抜のトレーニングに参加した廣末にとって気になったことは、大学1年生や高校生3年生が中心のチームメートたちのイージーミスや、ミドルサードで簡単なボールの失い方などだった。

 高校サッカーではそれが致命傷にはならなかったのかもしれない。だが、プロの世界ではそのミス、一つのプレーでサッカー人生が左右されることもある。「求められているところは、大学生よりはプロの方が求められているものは多いですし、職業なんでこっちは。勝つのが仕事なんで。そういう意味では責任感の感じ方とかが違う」。

 日本高校選抜の選手たちは間違いなく将来プロや日本代表に絡んでくる選手たち。だからこそ、廣末は「自分が一生懸命やることによってチームというものがよくなって行くと思う。一人ひとりの意識を変えていければいい」。今回の欧州遠征でもU-18オランダ代表戦勝利やデュッセルドルフ国際ユース大会(ドイツ)で優勝を目指して戦う以上、必ず必要になってくる一つひとつのプレーに対する責任感。本人はまず自分自身が一生懸命努力することに集中することを口にしていたが、この日感じた意識のズレは約2週間の活動の中でプレー、声でできる限り改善していく。

 この日、トレーニング開始前にはピッチ上で黒田剛監督(青森山田高)と談笑。「山田、どうですか」と後輩たちのことを気にかけた。いざ、ピッチに入ると同じくJリーガーのGK山ノ井拓己(静岡学園高→福岡)、湯田哲生GKコーチ(千葉U-18)と集中したトレーニング。11対11では正確なフィードを蹴り込み、罰ゲームをかけたオフェンス・ディフェンスの攻防ではラストプレーでMF金子大毅(市立船橋高→神奈川大)の決定的なシュートをワンハンドでストップしてのけるなど、トレーニングでも簡単にはゴールを許さなかった。

 さすがの存在感を放った注目GKはデュッセルドルフ国際ユース大会へ向けて「久しぶりの国際試合ですし、代表にも呼ばれていない状況が続いている」ことから結果にこだわることを宣言。プロ入り3か月、意識面から日本高校選抜を変え始めている廣末が、妥協なきプロのプレーで勝利を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
●日本高校選抜欧州遠征特設ページ

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