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[プレミアリーグWEST]“サンフレシフト”駆使して守った阪南大高、プレミア初陣で王者・広島ユースから勝ち点1奪取

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後半45分、阪南大高CB吉田岳晴が同点ヘッド

[4.9 高円宮杯プレミアリーグWEST第1節 阪南大高 1-1 広島ユース ヤンマー]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2017 プレミアリーグWEST第1節2日目が9日に行われ、2連覇を目指すサンフレッチェ広島ユース(広島)とプレミアリーグ初参戦の阪南大高(大阪)との一戦は1-1で引き分けた。

 いずれも昨年のプレミアリーグチャンピオンシップを経験したU-20日本代表GK大迫敬介(3年)、MF川村拓夢(3年)、MF川井歩(3年)、MF仙波大志(3年)、DF里岡龍斗(3年)らを残し、優勝争いの有力候補の挙げられる広島から、昇格組の阪南大高が“サンフレシフト”を駆使した戦いで勝ち点1を奪い取った。

 明け方まで強い雨が降っていたこともあり、阪南大高はスリッピーなピッチでDFラインを押し上げた戦いを想定していたというが、雨が止んだことでピッチは乾き、試合は全面良芝の中で開催された。結果、阪南大高はスペースを消して引いて守る戦いを選択。「絶対に3バックのワイドを前に行かすなと、そこ(のパス)を後ろに下げさせろと」(阪南大高・濱田豪監督)。両SHもDFラインの位置にまで入って守備を徹底したことによって、相手のワイドの選手が前を向いて仕掛けるスペースは消したものの、中盤でのプレッシャーがかからず、広島に圧倒的にボールを握られることになった。

 阪南大高には明らかな狙いがあった。濱田監督が「(春のフェスティバル等で広島は)恐らくベタ引きされた試合はないんじゃないか。春の試合やったら、どこも力試しをしたいからサンフレッチェシフトを敷いて来るチームはまずないはず。だから一発目で面食らうかなと。頭をビックリさせるのはそこ(初戦)やった」というように、なかなか経験したことのないような相手の守備的布陣を広島は簡単にこじ開けることができない。

 それでも広島は左サイドからカットインしたMF村山勘治(3年)が右足シュートを放ち、川井の右クロスにFW明比友宏主将(3年)が飛び込む。また、川村が相手選手たちを驚かすほどの精度あるパスを通すなど、広島は相手にほとんど攻撃機会を与えることなく攻め続ける。阪南大高は主将のCB吉田伸弘(3年)が「(広島対策は)2週間くらい。ここにボール入った時は誰が行ってというところを細かく教えてもらっていた。やってきたことが。多少出たので良かった」と手応えを口にした戦いで前半を0-0で折り返したが、それでも、沢田謙太郎監督が「後半は空いてくるかなと。続けると空くかなというところはありました」と振り返ったように、焦れずに攻め続けた広島が先制点を奪う。

 後半12分、広島は右サイドでのパス交換から川井がアーリークロス。これを阪南大高GKが十分にクリアすることができず。こぼれ球に反応した川村が豪快な左足シュートをゴールへ突き刺して1-0とした。

 追う展開となった阪南大高はパワフルなドリブルからゴールを目指していたFW福羅光希(3年)がわずかに可能性を示していたが、世代を代表するGK大迫を脅かすことはできない。それでも阪南大高は30分、MF中村成龍(2年)が右中間から放った右足FKがゴール左を捉える。これは大迫のファインセーブによって阻止されたが、阪南大高ベンチは31分にFW瀧川海斗(3年)とFW和田育(2年)を同時投入し、さらに39分にもFWの島田龍之介(2年)を送り出して「行け」のメッセージ。専守防衛から、前へチャンレンジする姿勢が増えだすと、我慢強く守っていたことが最終盤に活きる。45分、阪南大高は中村の右CKからニアサイドへ飛び込んだCB吉田岳晴(3年)が劇的な同点ヘッド。広島はすぐに2点目を奪い返そうとするが、ボールを放り込む一方でセカンドボールを拾えない悪循環などが出て勝ち点3を逃した。

 今シーズンは各チームが立ち向かって来ることが予想される中、王者・広島は悔しいドロー発進。今後も厳しい試合が続くだろうが、それでも、沢田監督は「難しいから楽しいんじゃないのと言ってありますからね。簡単なことを楽しむよりも難しい方がいい。だからこそやりがいがあっていいんじゃない、と」と歓迎した。そして追いつかれた後の戦い方や、セットプレーでの失点など、真剣勝負の場で出た課題について「こういう部分が出たことで(各プレーの)重みが増す」と語り、選手たちの成長に繋げる考えだ。

 一方、阪南大高は“プライドを捨てて”75分間守り倒し、セットプレーからゴールを破って引き分け。強敵相手のドローにホッとしたのか、試合後、応援に駆けつけた同級生たちに手を振って応える選手たちもいたようだが、それを濱田監督は厳しく指摘した。「75分間プライド捨てたのに何浮かれているんや、と怒りました」。吉田伸も「勝った訳じゃないんで。僕達も全然やりたいことできていないですし、終始相手のペースで何とか追いついただけなんで。全然僕達自身力は無いですし、もっともっとやらないとダメだということで締めてもらったんだと思います」。昨年までのプリンスリーグとは一段階レベルの違うプレミアリーグの戦い。昇格組の阪南大高にとって厳しいシーズンになることは理解している。それでも、目標の「残留」を果たすため、今後も強敵たちに必死に食らいついて、勝ち点をもぎ取る。

(取材・文 吉田太郎)

●2017プレミアリーグWEST

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