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筑波大MF鈴木徳真「このままでは選手として偽者…」、やってきた変化のとき

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DAHでトレーニングに取り組む鈴木徳真

 変化のときがやってきた。筑波大のMF鈴木徳真(3年=前橋育英高)は言う。「いろいろな部分で自分にとって変化のときだと思った」と。足元の技術があり、ゴール前で仕事も出来るMFと評価されてきたが“上手い選手”から脱皮しようとしている。

 昨季は腰の負傷により総理大臣杯を欠場したほか、U-19日本代表から落選するなど悔しさやもどかしさを味わった。年末の全日本大学選手権(インカレ)では優勝したものの、満足する気持ちはなく、選手として次の段階へ進むため、何をすべきかを考え続けていた。

 ルーキーイヤーから変わることなく鈴木徳真の視線の先にあるのは自分自身が“世界で戦う姿”と“日の丸を背負う姿”。そこへ行き着くためにやるべきことは……? 足元の技術に誰よりも誇りとこだわりを持ってやってきたMFが新たな角度から自身の強化に取り組み始めている。

―本格的にフィジカルトレーニングを始めようと思ったきっかけは?
「昨夏に腰を怪我してしまい、怪我をしないために他の筋肉の部分をトレーニングしないと再発すると思ったのがきっかけです。あとは、特に自分のパフォーマンスを出す上でとうしたらいいか迷っていたとき、技術だけでなく今まで見てこなかった部分に目線を移してみようと思いました」

―最近の徳真選手は、プレースタイルに変化があるように感じます。技術頼みではなく、泥臭く戦う選手に……と見えますが、その変化に応じて、必要な部分も変わってきたということでしょうか?
「そうですね。いろいろな部分で自分の変化の時だと思ったので、いい機会だと思って始めました。自分が思い描いている理想、いきたいと思っている場所から逆算したときと今の自分では、明らかなギャップがあることに、今までも気がついていたけれど、さらに気がついたので。自分の短所というか欠点であるフィジカル、身長がない分はどうにか身体的な部分で補う必要があると考え、こういうトレーニングをしようと思いました」

―理想とのギャップは具体的にどこにありますか?
「もう少し、自分の身体がこう動かせたら、こんなプレーができるのになっていう感覚が自分のなかにあって、頭と身体が一致してない部分があったんです。頭のなかでこういうプレーをしてとイメージできているんですけど、身体が追いついてこないというのが現状。そういうなかでタイミングよくこういう話をいただいたので、自分としても変わるときだったかなと思います」

―筋トレを始めると身体が重くなると敬遠する選手が多いですが、徳真選手の場合はどうでしたか?
「それしか思っていなかったです!まったくその通りですね(苦笑) 筋トレをすると身体が動かなくなる、動きづらくなる……動かしにくくなると言ったほうがいいのかな。だけど(筑波大の)小井土監督から“筋トレをして動かせなくなる、重くなるのではなくて、筋トレをして神経伝達がしにくくなるから、動かしにくくなる”というのを聞いて、なるほど!と思ったんです」

「今動かしている筋肉はついたばかりで、そこに神経が通っていなかったら動かせないんだと、やっと気がついて。筋トレをやったことで身体が重くなるというネガティブな考えではなく、やったことで組織が壊れて、また新しいものが作られているから動かしにくくなるというのを、論理的に知ったとき、筋トレは不必要ではなく、必ず必要なんだなと思いました。サッカー選手は、みんな履き違えてしまうところかと思いますけど、論理的に知ったら、また違ってくるんじゃないかな」

―DAHに来館した際のトレーニングでも発見がありましたか?
「トレーニングだったり、自分が知らない身体の動かし方を教えてもらえるので、『あっ、俺こういう動き方ってできないんだ』と驚きました。すごく簡単そうに見えるのに、実際には動かせられないというトレーニングには、たくさんの気づきがありますね」

―実際にフィジカルトレーニングを始めたことでプレーに変化は?
「自分が思い描いているプレーが少しずつ出るようにはなりましたけど、まだなりきれない。頭の中で描いている画と動いている自分が全く動きが違うので。動かし方が下手くそなので、そういうところをより突き詰めていきたいですね」

―試合などでは球際で身体から奪いにいくシーンが増えたように見えますが?
「はい、球際に足先でいっていたのが身体でいけるようになってきました。身体で当たっていく自信がないから当たれなかったけれど、自信がついてきているから、自分から当たって弾くことができる。いいポイントができたと思います」

「やっぱりサッカーは点を取るところもそうですけど、球際や技術が一番の見せ所。そういう意味ではサッカー選手として、今までの自分は本物じゃないと思っていて。足先の上手さが偽物というか…A代表の選手たちですら、ああやって戦っているのに、自分は偽物だと思うときがあって……」

―ポジティブに技術を武器にしようと思う一方で、そこばかり頼りにしているのはサッカー選手として偽物と感じたと。いつ頃からですか?
「それはずっと思っていました。大学に入ってから、ずっと。でも気がついてたけど、気がついていないふりをしていたんだなと思います。“ゴール前まで技術でどうにかして、ゴール前からはアイディア”だと思っていた自分が、今では“フィジカルで戦いながら、あとは技術が差を生む”と思っていて。考え方は時が経つのにつれて、また変わると思うんですけど、今は自分の範囲を広げる、幅を広げるということが必要になってきたなと感じています」

―今まではフィジカルを鍛えることに対して、否定的な考え方があったんですね。
「まず筋トレをするという概念がなかったのでやりませんでした。自分の欠点である身長がない部分をネガティブに捉えない。逆に自分の技術がどこまで出来て、逆に技術をどこまで伸ばせられるのか、勝負しようと思っていたんです」

「でもやっぱり技術だけだと上にはいけても、自分の描いているイメージまではいけない。パフォーマンスに関して、“普通の大学生とはまったく違うよね”というところに基準を置いて、プロでも当たり前のようにスタメンに出てやれること、それが自分のなかで描いているイメージなので。そこから逆算したら、技術だけではいけない。気がつくのが遅かったですけど、感じたことがあったので、そこからやるようにしました」

―では身体の内側からの“トレーニング”という意味では、普段の食事や栄養で気遣っている部分はありますか?
「普段は一人暮らしをしているので自炊か外に食べにいきます。食事は比較的、気を使っているつもりですが、やっぱり限界がありますね。五大栄養素という知識、疲労回復のものがどういうものなのかは、大学の授業で受けたので、知識としてはあります。でもやっぱり摂りきれない部分もあるので、そういうところに関しては疎かになっているのが正直なところです」

―サプリメントの摂取はしていますか?
「サプリメントに関しては摂りきれない部分をDAHで相談して、連携しているDNSのスタッフにどういうものがいいか、何を摂っていこうと教えていただきました。今までもプロテインは摂るようにしていたんですが、摂らないといけないと思って摂っていただけで、実際にどういう成分なのか、どういう意味があるかわかっていなかったので、最近になってようやく理解しました」

―DAHへ来るまではサプリメントなどに関する知識がなかった?
「そうですね、全くなかったです。ただ摂ればいいと思っていたので、タイミングなどは気にしたこともありませんでした。色々と教えてもらい、自分の知っていると思っていた知識が知りきれていなかったんだと、とても感じました。やっていることの五割くらいはあっていたんですが、残りの五割があっていませんでしたし。摂るタイミングや必要なものを教えてもらえたり、来てよかったです」

―今季は大学3年目のシーズン。プロ入りを見据えるなかでは重要な1年が始まります。
「今年は結果を残したいと思っていますし、個人として一番フォーカスしているのは点を取るということ、個人としても結果を残すこと。よくいろいろな海外の選手とかのインタビューを聞いていると、『チームのために勝ちたいと思ったときに結果がついていくる』と話しているように、どっちも求めていきたいです」

「今まではチームのために、自分のためにと偏ってきたんですけど、両方を求めてやっていきたい。勝っていく中で自分の存在があればいいなと。自分がチームを勝たせる存在になりたいですし、時には黒子でも。そうなりたいではなく、そうなると思っています」

―大学3年目ということでJクラブの練習参加も増えてくるのでは?
「行かせていただけるのであれば、どんどん行きたいです。自分がどこのレベルにいるのか。自分が将来、海外でサッカーをしたいのならば、今はどのようなギャップがあるのか。今の日本のレベルとは、どのくらいのギャップ、課題があるのかというのは知っておくべきで、必要だと思っていますし、自分が成長するためにはどんどんいく必要があると思っています」

―海外でサッカーをしたいという明確な目標があるなか、大卒ですぐに海外にいくという選択肢も?
「海外のスカウトがどこで見ているかもわからないので、すごく難しいことだと思います。一番わかりやすいのは海外の大会にいって、そこで結果を残すこと。自分にとっては、今年ユニバとU-20W杯があるなかで、本当にどちらかに参加できなかったら、大学卒で直接海外というのは難しいかなと思っています。本当に自分の夢や目標を叶えるためには、そこに行かないといけないと思って、いつも練習をしているので」

「甘くないとはわかっていますけど、自分が将来A代表に入って、日の丸を背負っていくことも考えているので。そういう部分で日々突き詰めていきたい。そこにいきたいと強く思う自分がいます」

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