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「何を日本に持ち帰るか、ここで何を残すか」。欧州での戦いに懸けるGK廣末は悪ピッチに対応して完封勝利

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日本高校選抜GK廣末陸は完封発進。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[4.13 デュッセルドルフ国際ユース大会予選リーグ 日本高校選抜 2-0 フォルトゥナ・デュッセルドルフ]

「きょうもミスはありましたけど、勝つことが一番だと思うんで、課題を持ちながら勝利できたことは良かった」。

 今回の日本高校選抜で最注目のGK廣末陸(青森山田高→FC東京)はセットプレーや押し込まれるシーンでも堂々としたプレー。フィールドプレーヤーたち同様にピッチに悩まされた部分もあったが、無失点で切り抜け、勝利したことをまず喜んだ。

 その中で本人が課題として指摘していたのはDFラインを上げるタイミングを共有、改善することができなかったことだ。相手FWにキープ力がある中で、その相手がいい形でボールを持った時だけでなく、後ろを向かせているような状況でも意思を統一してDFラインを上げることができなかった。

「その本当にちょっとしたタイミングなんですけど課題かなと。(11日のU-18)オランダ戦も結構収められて守備と話したんですけど、なかなかきょうもできなかった。自分がもっと裏へ出れる準備をして、自分がここまで出れるんだという守備範囲をチームに示せれば、怖がらずにラインを上げて行けるのかなというのはあったかなと思います」。急増チームだからこそ、よりお互いのプレーや意見を知り、次の試合で改善する。

 得意のキックが制限されるようなピッチ状況。本人も油断したことを認めていたが、一本目のキックでいきなりダフってしまい、その後も世界で十分に通用すると思われたキックは安定しなかった。ピッチがデコボコでゴールに近くなればなるほどにそれが酷くなる悪コンディション。いきなりボールが跳ね上がることがあったことから神経質になった廣末は、バックパスを受けた際にそれも考慮して切り返したところを相手FWに引っ掛けられるような場面もあった。

 味方の選手たちも奪った後の一本目のパスが思うように繋がらない状況だった。それでも「なかなかしっかりと当たらない。それならば高い位置のスローインでもいい」とFWの抜け出しに繋げるようなピンポイントのロングキックを狙うのではなく、多少アバウトでも大きく蹴り出すことを徹底した。ボールはタッチラインを割ることが多かったが、リードしている中ではそれは十分のプレー。守護神が、上手く切り替えることができたことでチームも後半のシュートは立ち上がりに打たれた1本のみで終えることができた。

 今回の大会に対する思いは人一倍強い。廣末は16年度のプレミアリーグチャンピオンシップではチームを初優勝へ導いてMVPを獲得し、同じく初優勝した全国高校サッカー選手権では近年のGKではなかったほどその活躍、選手としての実力をクローズアップされた。プロの選手としてクラブで成長し、活躍したいと言う思いは当然あるが、注目GKと言えども現在の出番はFC東京のU-23チームでもまだまだ少ない状況。だからこそ、日本を代表して国際舞台に立つことへの重要性も口にするGKは将来プロ入りへアピールを目指すたち以上に、デュッセルドルフ国際ユース大会に懸けている。

「こうして国際大会に日本の代表として出られることは自分にとってプラスになると思いますし、ここで何を日本に持ち帰るか、ここで何を、どういう結果を残すか、というのはこれからの自分にとっても大事だと思っているんで勝負にこだわってやっていきたい」

 日の丸を背負って臨む国際舞台で何を残すか。プロでの活動同様にミスの許されない重圧の中で自分により高いレベルを求めて、それを実行する力を身につける。

(取材・文 吉田太郎)
●日本高校選抜欧州遠征特設ページ

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