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攻撃陣不発、そして4試合目で初の失点が重い1点に…日本高校選抜は4強届かず

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勝利して大喜びするノアシュランの隣で日本高校選抜の選手たちは肩を落とした。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[4.16 デュッセルドルフ国際ユース大会予選リーグ 日本高校選抜 0-1 ノアシュラン]

 日本高校選抜は4強入りならず……。第95回全国高校サッカー選手権の優秀選手を中心に構成された日本高校選抜は16日、第55回デュッセルドルフ国際ユース大会予選リーグ最終戦でノアシュラン(デンマーク)と対戦し、0-1で敗れた。2勝1分1敗となった日本高校選抜はGROUP 1の首位から陥落。ノアシュランと勝ち点、得失点差で並んだが、総得点で下回って3位となり、予選リーグ敗退(2位以上が準決勝進出)となった。日本高校選抜は、17日の5位決定戦でGROUP 2の3位・クルゼイロ(ブラジル)と戦う。

 引き分け以上で自力での決勝トーナメント進出が決まる日本高校選抜だったが、攻撃陣が不発。そして今大会4試合目で初めて喫した失点が敗退の引き金となってしまった。25分ハーフの短期決戦ということもあって失点しないことを最大のテーマに作られてきたチームだが、1つのプレー、1つの判断ミス、そして1点の重さを知る結果となった。

 主将のMF住永翔(青森山田高→明治大)は「最少失点の1でも決勝トーナメントに上がれないということを考えると、失点1の大きさを感じたのも一つだし、点を獲れないと上がれないということも同時に感じました。どれだけ後ろが頑張っても前が点取れないと上がっていけない。たとえ事故で1点取られても、それ以上の点を取れるチームでなければならないと言われてそう思いましたし、ここに来て時間稼ぎとか、日本ではないようなことが平気で起こるのでそこは驚きというか、当たり前のように勝ちにこだわる姿勢というのは日本と違って凄いなと感じています」。ここまで2勝1分。その3試合では失点に繋がりそうなミスも、チャンスをミスで逸するシーンも大きな問題にはならなかったが、選手たちは大事な場面でその一つひとつがどれほど重要であるかを思い知った。

 日本高校選抜は1-0でマインツ(ドイツ)に勝利した予選リーグ第2戦と同じ先発イレブン。4-4-2システムのGKが廣末陸(青森山田高→FC東京)で、4バックは右SB三国スティビアエブス(青森山田高→順天堂大)、CB橋本恭輔(青森山田高→新潟医療福祉大)、CB阿部海大(東福岡高3年)、左SB杉山弾斗(市立船橋高3年)。中盤は金子大毅(市立船橋高→神奈川大)と住永主将とのダブルボランチで、右MF鳥海芳樹(桐光学園高→桐蔭横浜大)、左MF松本泰志(昌平高→広島)。そして前線は安藤瑞季(長崎総科大附高3年)と伊藤龍生(米子北高→鹿屋体育大)が2トップを組んだ。

 立ち上がりから日本高校選抜が圧倒的に攻め込んだ。1分に安藤がアクロバティックなシュートを打ち込むと、4分には松本との連係からPAへ切れ込んだ左SB杉山の左足シュートが相手DFをかすめてポストを叩く。住永と金子のダブルボランチが非常に良くボールに絡んで良いテンポで動かす日本高校選抜は、幅を使った攻撃から右の三国と鳥海、左の杉山、松本が縦に仕掛けてクロスへ持ち込むなどノアシュランを攻め立てた。

 立ち上がりに関しては今大会ベストともに言えるようなパフォーマンス。だが、住永が「クロスまでの形は良かったけれどそこから先がなかった。相手のDF陣の身長やヘディングの強さを考えると、クロスで終わってしまうと日本人はなかなか点を取れない。そこをもうひと工夫して、クロスを出すフリしてポストの近くまでドリブルで侵入したり、ワンツー使って中に行くとか、そういうところがなかった」と語ったように、単調なクロスが増えてしまい、ゴール前で長身選手たちが構えるノアシュランに競り負けて跳ね返されてしまう。

 そして、序盤は拾って連続攻撃に結びつけていたセカンドボールを制圧できなくなってくると、日本攻勢の時間は少なくなっていった。とは言え、主導権を握っていたのは日本高校選抜の方。PAへのスルーパスを狙われてはいたが、危険なシーンは無かった。黒田剛監督(青森山田高)も「あの一本以外は悪くなかった」という内容だったが、前半終了間際に喫したその「一本」が日本高校選抜にとって悔やまれる1点となってしまう。

 24分、日本高校選抜は、左サイド側から抜け出して来た選手に対してオフサイドを取りに行ったところでDFラインが揃わずに失敗。加えてDFがセルフジャッジしてしまい、一瞬足を止めてしまったことから、FWフレデリクセンの左足シュートに間に合わず、先制点を奪われてしまった。

 後半、黒田監督の猛檄を受けてピッチに入った日本高校選抜だったが、守って大きく蹴り出すことに専念する相手の前にリズム良く攻めることができない。日本高校選抜は早い段階から廣末のロングキックを多用し、前線での競り合いを増やす攻撃にシフト。伊藤が競り勝つシーンもあったが、跳ね返されたり、セカンドボールを拾われたりするシーンが多く、また前線の動きの質も上がらず、ゴール前の攻防を増やすことができない。

 10分には敵陣でボールを拾った住永から中央の安藤を経由して伊藤が左足シュート。だが、これはDFに当たってGKの腕の中に収まった。13分には橋本に代えてCB 佐藤瑶大(駒澤大高→明治大)を投入。17分には伊藤に代えてFW町野修斗(履正社高3年)をピッチへと送り出す。だが、細かなパスやボールコントロールの精度を欠いた日本は攻撃のスピードが上がらず。そして相手の時間を稼ぐような行為に苛立ちは増した。

 日本高校選抜は20分頃からCB佐藤を前線へ上げてパワープレー。23分には松本に代えて左MFに渡邊泰基(前橋育英高3年)を投入した。終盤はFK、CKからゴールへ迫ったが、後半のシュートはわずか1本のみ。アディショナルタイムは1分も取られることなく、早々に主審の笛が吹かれて0-1で敗れた。その後組まれていたマインツ対ザルツブルクのGROUP 1最終戦で、マインツが引き分け以上の結果を残せば日本高校選抜は2位で決勝トーナメント進出が決まる状況だったが、ザルツブルクが4-2で勝利。日本高校選抜の選手たちは宿舎で敗退の瞬間を迎えた。

 黒田監督は「たった一回、一瞬だけど、一瞬の怖さが分かっていない。とことん勝負にこだわれ、と言ったって最後までしたたかな集中力というのかな、絶対に事故が起きないようなセーフティーさだったり、プレーを止めなかったり、そういうことをきちっとやりきれないと。そういうところが日本人の甘さかな。1本のシュートでやられちゃうんだから」と厳しく指摘。指揮官から繰り返し注意されていたことが最後結果として出てしまった。

 住永は「言われたことに対してどれだけ認識してプレーできているか。現実として起きているので、もっと人の話だったりというのを聞かなければダメだと思うし、言われたことがどれだけ重いことかというのも感じなければいけないと思います。一人ひとりが感じていない訳ではないと思いますけれども、それがプレー、結果として出ちゃう。日本とは違う、一本のピンチ、一本のシュートで試合が終わるというのも感じることができました」。優勝、「大会の記憶に残るようなJAPANに」という目標を達成することはできなかった。また良いプレーを見せる一方で、それを安定して発揮できなかった選手も多かった。そしてサッカーの怖さを目の当たりにした才能たちは学んだことを忘れず、目の前の5位決定戦や今後のサッカー人生に活かす。

(取材・文 吉田太郎)
●日本高校選抜欧州遠征特設ページ

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