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[MOM433]筑波大MF長澤皓祐(3年)_涙の「日本一悔しい日本一」を乗り越えて

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決勝点を決めた筑波大・長澤

[4.15 関東大学1部リーグ第1節 筑波大1-0日本体育大 味フィ西]

 厳しい先発争いを勝ち抜いてピッチへ立つ。筑波大のMF長澤皓祐(3年=FC東京U-18)は関東大学リーグ開幕戦・日本体育大戦に先発すると、決勝点を記録。チームへ勝利をもたらした。これまでは自分自身が得点を挙げることに大きなこだわりはなく、「チームの勝利に貢献できれば」と感じていたが、「今年は絶対に点を取る」という思いで臨むと結果を残した。

 昨季の全日本大学選手権(インカレ)で日本一に輝いた筑波大。しかし長澤は決勝のピッチに立てなかった。準決勝までは先発していたが、決勝はまさかのベンチスタート。「途中から出てヒーローになろう」と準備するも、最後まで名前は呼ばれず。長澤に代わって先発したFW北川柊斗(4年=名古屋U18)のハットトリックなどでチームは8発快勝。日本一になったが長澤の心境は複雑なものだった。

「みんなすごく喜んでいたし、一人だけシュンとしていてもと思って……とりあえず喜びました。でも本当にすごく辛くて、僕的には日本一悔しい日本一でした。家に帰ってからも悔しくて涙が止まらないくらいでした」

 それでも、この経験を無駄にしなかった。「ネガティブな経験ですけど、あれがあったからゴールへの意識の大切さや、自分の立ち位置を知れました。決勝でスタメンで出られずに、自分は絶対的じゃないと立ち位置を知って、だからこそ今年は絶対に点を取るぞと思っています」と言う通りだ。今季は得点を取ることにこだわりを持って日々取り組むと、リーグ開幕に先立って行われた天皇杯茨城県予選からしっかりと結果を出した。そして、この日の開幕戦で先発の座をつかんだ。

 4-2-3-1の2列目右へ入っては果敢に仕掛けた。後半24分には決勝点も記録。味方が左サイドから崩しに掛かったとみるや右サイドをスピードに乗って駆け上がった。声を張り上げてFW中野誠也(4年=磐田U-18)の名を呼んでボールを要求。パスを受けるとPA右から右足を一閃。ゴールネットへ突き刺した。

「相手の頭には切り返しがあったと思ったのと、相手が二枚いたので止めたら不利な状況になるかなと、そのまま思い切り蹴ったら入って良かったです。勢いよくボールに向かっていったので打ってみようかなと思ったら入っちゃいました」。これが決勝点。筑波大は日本体育大に1-0で勝利し、開幕白星を飾った。

 先発争いをものにするためにも、のどから手が出るほどに欲しかったゴール。長澤は「スタメン争いが激しいので、得点という結果が試合に出る近道になると思う」と言い、少しばかりホッとした表情も浮かべる。

「小井土さんは相手によって選手を変えるのですが、どんな相手にとっても嫌な選手だったら絶対に使うと思いますし、毎試合、点を取っているような選手は脅威。そういう選手を使わないはずはないので」。ここから貪欲に目に見える結果を求めていく。

「高校3年のユースのときも“点を取る”と言っていたんですけど、口だけだったので。今年は違うぞというところをみせていきたい。いつも自分は口だけなので具体的なことを言うとあれなので……有言実行ではなく不言実行でいきたいと思います」

 チーム内で繰り広げられている熾烈な争い。この状況を小井土正亮監督は「結果を出せないと筑波では試合に出られない状況になっている。まずは筑波で試合に出るためには本当に毎日頑張らないといけない。それがレベルアップにつながると思うし、いいライバル関係になっている」と見ている。

 そんななかで結果を出した長澤を称えた指揮官は「口で言うのは簡単ですが、パフォーマンスを出すというので彼は覚悟を決めてやってくれている。彼も信頼していますし、サブに入る選手も信頼しています。だから僕も迷いなくどんな展開になっても疲れている選手がいたら(交代カードを)切れるので」と語った。

 同ポジションを巡っては北川やMF西澤健太(3年=清水ユース)、MF三笘薫(2年=川崎F U-18)らと争っていくことになる。開幕戦でベンチスタートだった西澤は「チーム内で競争できているのは大歓迎です……と言いつつも、根は相当へこんでいますけどね」と苦笑い。「彼(長澤)の調子がいいので、僕もしっかり頑張らないといけない」と気を引き締めなおしていた。ここに筑波大の強さの源があるのだろう。

 まずは開幕戦で決勝点を決め、アピールを果たした。長澤は「筑波は層が厚すぎるので、相手よりもチーム内の競争がある。一日一日の練習も大事なアピールの場。今回は点を取りましたけど、次に外れることも考えられるので、ピッチ外の部分から過ごし方を意識して、いいパフォーマンスができるようにしたいです」と誓っていた。

(取材・文 片岡涼)

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