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[MOM]「裏街道」さく裂、聖和学園高出身の土田が最多18度V貢献

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後半終了間際、「裏街道」の突破から決勝点を演出

[自衛隊サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.29 全国自衛隊大会決勝 海自厚木マーカス 2-1 空自3補 西が丘]

 自衛隊最強チームで若きドリブラーが躍動した。全国の基地、駐屯地で活動する自衛隊のサッカーチームが日本一を競う「第51回全国自衛隊サッカー大会」の最終日が29日に行われ、海上自衛隊厚木基地マーカスが最多18度目の優勝を飾った。優勝の原動力となったのは、1週間で5試合を行う過酷な連戦を物ともせず、終始、スピードとキレのあるドリブルで攻撃をけん引したMF土田洸人(士長・流通経済大出身)だった。

 航空自衛隊第3補給処サッカー部との決勝戦は接戦だったが、1-1の同点で迎えたアディショナルタイムに決勝点のおぜん立てをした。右サイドへ展開されたパスを受けると、ファーストタッチで前へ持ち出して前進。カバーに戻ってきた相手のキーマンであるMF齊藤雄太(士長・平成国際大出身)の右側へボールを通し、自身は左側を走り抜ける「裏街道」で突破。エンドライン際でボールに追いつくと、マイナスのクロスを供給。須田浩章(3曹・神奈川大出身)のシュートはブロックされたが、こぼれ球を池永亮介(3曹・松陰大出身)が詰めて決勝点を挙げた。

 前半を1点のビハインドで折り返した海自厚木マーカスは、後半からシステムを変更。4バックから3バックに変え、土田は右のワイドに張り出すウイングのポジションを担った。相手もサイド突破の狙いを感じて対応して来たが、山崎裕貴監督は「やり続けろ」と指示。個人技に特化したサッカーで「ドリブラーパラダイス」の異名を取る宮城県・聖和学園高で育ち、持ち味はドリブルと自負する土田は「どうにかしてえぐってやろうと、それだけを考えていた」と話したとおり、突破を仕掛け続けた。連戦の最後まで切れ味のあるドリブルは、疲弊した相手に止められるものではなかった。土田は、決勝点の場面を「時間がなかったし、もう前に味方がいた。ファーストタッチでスピードに乗れたので、フェイントでスピードを落とさずに『裏街道』を選んだ。思ったよりもボールが前に出てしまって間に合うかなと思ったけど、最後の最後まで力を振り絞れた。ゴール前に2人いるのは分かっていたので、あとはパスを出すだけだった」と振り返った。

 土田は、昨春に流経大を卒業。在学中から勧められていた、自衛隊に入隊してサッカーを続ける道を選んだ。常に体を動かす環境にある今が、最も体の動きにキレがあるという。ただし、当初はマーカスのスタイルに馴染むことができず、ボールを触れずに苦しんだ。決勝戦の後半に用いたWMシステムは、特異だ。それでも「聖和みたいなスタイルは、ほかにはないので、どこに行っても苦労する(笑)。大学のときよりマーカスの方が合わせるのが大変だったけど、先輩たちに教えてもらって不安要素がなくなっていった」と徐々に課題を克服。全国自衛隊大会は初参戦だったが、マーカスにとって譲れない自衛隊最強の座を3年ぶりに取り戻す原動力となった。マーカスは、昨年まで関東リーグ2部に所属した社会人の強豪チームで、今季は神奈川県リーグを戦っている。土田は、関東1部まで昇格して流経大FCとの対戦で元気な姿を見せることを目標に、またマーカスでの新たな戦いに挑む。

(取材・文 平野貴也)

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